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2021年11月17日23:19

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草笛光子・オンリーワン/映画『老後の資金がありません!』

■松重豊が天海祐希を撮影!? 『老後の資金がありません!』メイキング映像
(ORICON NEWS - 2021年11月13日 20:56)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=54&from=diary&id=6739534

■天海祐希、主演映画大ヒットに「感無量」 劇中の“歯が取れた”秘話明かす
(ORICON NEWS - 2021年11月10日 14:42)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=54&from=diary&id=6735104

■天海祐希、ハッピー!な出来事 満席の観客に感謝「世の中のみなさんのおかげ」
(ORICON NEWS - 2021年10月30日 14:05)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=54&from=diary&id=6722332

■映画『老後の資金がありません!』家庭のリアルなお金問題が満載! 年金問題、リストラなど、どう乗り越える?
(Pouch[ポーチ] - 2021年10月29日 17:21)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=114&from=diary&id=6721344

 タイトルのインパクトで言うなら、今年の邦画では随一と言っていいんじゃないかな。ともかく、天海祐希ならずとも、格差社会の日本にあって、国民の半分の貧困層が同じ絶叫を挙げても全然おかしくない。それくらい、我々の経済状況は逼迫、切迫、崖っぷちに追いやられている。老後の資金が2000万から4000万は必要とか、ふざけんなっての。うちには借金しかありません!
 自身がそういう境遇であると、つい、映画の中に何か救いのヒントがあるのではないかと藁をも掴みたくなる気持ちで鑑賞してしまうが、その点については最初に期待しちゃダメだよ、と言っておこう。何となれば、この映画は「喜劇」である。主人公たちが何かピンチに陥っても、運やら偶然やらが重なって、最後はめでたしめでたしで丸く収まってしまう、昔ながらの「人情喜劇」なのだ。
 現実の老後については、政治に期待するなり(望み薄)、各ご家庭で対策を練る以外に方法はないので、映画に答えを求めようなんて思わないこと。かえって一家で首吊る羽目になるよ。

 素直に「喜劇」を楽しむつもりで観れば、これは近年でも稀に見る快作である。少なくとも、かつて人情喜劇の雄と思われていた山田洋次の近作よりは、全然喜劇の王道を走っている。
 実を言うと、垣谷美羽の原作も、斉藤ひろしの脚本も、そんなに出来がいいというほどではない。主人公たちの身に降りかかる「資金難」の数々は、正直「作り込みすぎ」だ。
 順風満帆の生活を送っているように見えた後藤家だが、突然夫婦揃ってリストラされる、義父の葬儀に400万かかる、娘が結婚する、義母がオレオレ詐欺に引っかかる、と立て続けの何だこれ状態。まあ、どれも現実にあり得ない話ではないけれど、それらが全部一気に押し寄せる様子を描いても、切実さよりも嘘くささの方が先に立っちゃうんだけどね。
 なのに後藤家の実質大黒柱、妻の篤子(天海祐希)が眉間に皺を寄せるたびに、やっぱり笑いを堪えきれなくなる。負けん気の強い、向こう見ずかつ侠気溢れる偉丈夫(笑)を演じさせたら日本有数の俳優である天海さんだから、逆境などは屁でもない。事態の急変に振り回されながらも、頼りない夫・章(松重豊)を支えつつ、資金の流出を食い止めようと悪戦苦闘の日々を送るのである。
 叫んだり喚いたり嘆いたりの天海さんだけど、これが何とも可愛いのだ。映画の第一の功績が、彼女の「受けの芝居(が受けるだけに留まらない)」にあることは間違いない。

 そして、この映画の真の主役、姑の芳乃(草笛光子)の天衣無縫ぶりときたら、もう最高の一言! 高級志向で、カードからは無尽蔵にお金が出てくると思ってる天然系なもので、後藤家の家計を逼迫させることもお構いなし。家族に一人、草笛光子がいたら、その家がひと月でつぶれることはまず確実だ。
 これも喜劇の主人公の定番パターンではある。破天荒で、周囲をしっちゃかめっちゃかに引っかき回すトラブルメーカーなのに、なぜか最後は事態を丸く収めてしまう。初期の寅さんがまさしくそうだっんだよね。原作小説では、彼女が「年金詐欺」を繰り返すのがクライマックスになっているのだけれど、映画ではそれを一回こっきりに抑えた。いくら生活が逼迫してるからって、やっぱり主役が犯罪を繰り返すのはあまりいい印象を持てないから、この改変は正解。
 映画の本当のクライマックスは、さらに後半、オリジナルの展開が用意されることになる。
 これが実に感動的で、草笛さんをキャスティングしたのはこのためか、と大いに納得した。もうある程度ネタバレで言うしかないが、草笛さんと天海さんのデュエットが聴けるのだよ。SKD&宝塚トップスター同士の夢の共演がここに! 曲は『ラストダンスは私に』!
 「なぜここでこの曲を歌うのか」、映画を未見の方で、それが気になる方もいらっしゃるとは思うが、それについてはあえて説明を控えるので、ぜひ映画本編で確かめて頂きたいと思う。

 劇場から出てきたとき、親子連れらしい女性と中学生くらいの男の子が会話していて、「あのお婆ちゃん役の人、すごい上手だった!」「ベテランもベテランよお!」なんて言ってたんだが、確かに中学生くらいだと、草笛さんの出ている映画など知らなくてもおかしくはない。この映画で草笛さんを知ることが出来て、その子は人生で一つ、大きな得をしたと思う。

 天海さんと草笛さんのことばかり語ることになってしまったが、キャスティングされた一人一人の役者さんが、実に忠実に自分の役割をこなしていることもこの映画の特徴だと思う。コワモテの演技も多い松重豊さんが気弱な夫を演じるのも新鮮だし、篤子の親友・サツキ役の柴田理恵のいつものご近所おばさんぶりも見事だ。うるさいのに嫌みに見えないって、最高のコメディエンヌだってことなんだよ。
 そしてサツキの父・大泉健三役の毒蝮三太夫! なぜこの役に毒蝮さんを起用したかって、草笛さんを「ババア!」と呼ぶためなんだな。日本広しと言えども、高齢の女性をババアと呼んでも差別と言われないのは毒蝮さんをおいて他にはいまい(笑)。
 若手の俳優さんたちもきっちり役目を果たしている中で、区役所員役の三谷幸喜だけがあからさまな素人演技で、逆に印象に残ってしまう。これもわざとな演出なのかなあ。

 物語は案の定なご都合主義の予定調和で終わるけれども、あまり偽善的な匂いを感じずに済んだのは、役者陣の好演、熱演があってこそだろう。
 これで草笛さんがどこかの映画賞で助演女優賞を取れなかったとしたら、日本の映画人たちの観る目も地に落ちたってことになるぞと力拳で力説したい。
 ホント、『老後の資金がありません!』は、草笛さんの「勇姿」と「熱唱」を観る映画だった。そのことだけは断言しておきたいと思うのである。





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