昨日のAERAに掲載された下記の青木理氏の見解は参考になると思いました。
立憲の枝野代表の後任は小川淳也氏が有力「野党共闘は正しかった」
ジャーナリスト
青木理氏
AERA dot.2021年11月02日19時21分
立憲民主党の枝野幸男代表は11月2日、代表を辞任する意向を示した。衆院選で96議席
と公示前を13議席も下回った結果に責任を取るかたち。立憲はなぜ敗北したのか。野党共闘は“失敗”だったのか。そして、次の代表は誰がなるべきなのか。ジャーナリストの青
木理氏に聞いた。
* * *
早急に取り組むべき課題が山積し、敵失も多くあった中、野党にまったく風を吹かせら
れなかった枝野氏ら党執行部の責任が問われるのは当然です。
今回、野党共闘によって小選挙区の多くで候補者を一本化したのは英断でした。自民党
幹事長だった甘利明氏や石原伸晃氏らが落選に追い込まれたのはその成果でしょう。ただ
し、全体としては立憲も共産も議席減。特に野党第1党の立憲は比例での得票を伸ばせな
かったのが致命傷でした。
この間、政府の新型コロナ対応に多くの人びとは不満を募らせていました。また、甘利
氏に代表される「政治とカネ」の醜聞も絶えず、傲慢で乱暴な「一強」政権への反発のマ
グマは相当に蓄積されています。だからこそ自民党は選挙直前に“表紙”を掛け替え、岸
田文雄氏を新たな総裁に担ぎ、わずかでもご祝儀相場があるうちにと総選挙に突き進んだ
。
皮肉を込めていえば、そうした自民党のしたたかさにはある意味で感心しますが、決し
て磐石ではない与党を相手に議席減という敗北を喫した責任は重大です。政権交代どころ
か、政権への不満や不信の受け皿としても魅力がないという判断を突きつけられた。
前回2017年の衆院選時に希望の党の小池百合子代表(当時)がリベラルを「排除する」
と宣言し、そこから枝野氏がリベラル勢力を結集して立憲民主党を立ちあげた功績は、も
ちろん評価してしかるべきでしょう。ただ、それから4年が倣い経過し、野党第1党として
臨んだ大事な選挙でこうした結果に終わった。自民党に倣い、大胆に“表紙”を変える対
応が求められていると思います。
では、次の代表や執行部は誰か。ジェンダーの多様性も含めた次世代の登場が期待され
るのでしょう。政治記者ではない私に判断はつきかねますが、小川淳也氏などは有力候補
の1人ではないでしょうか。今回は香川1区で前デジタル担当大臣の平井氏を破り、堂々当
選した。平井氏は香川で圧倒的なシェアを誇る地元紙のオーナー一族ですが、それを正面
から打ちまかしたのは象徴的な実績で、ネット世代の支持も厚く、面白い。やはり京都3
区で勝ち抜いた党政調会長の泉健太氏らも候補に挙がるでしょう。
ただ、辻元清美氏が今回落選したのは痛恨事で、女性を含めた次世代の野党リーダーを
もっと育てていくことも重要です。それを旧来の野党幹部自身、自覚して行動すべきです
。
今回の選挙結果を受け、連合や一部メディアなどからは野党共闘が間違っていたかのよ
うな声が出ているようです。しかし、野党共闘の方向性は正しかったと私は見ています。
というより、現在の小選挙区制では、野党が一本化しなかったら、自民・公明と勝負にさ
えなりません。
むしろ、共産という「左側」の勢力を包み込みつつ、さらにはもっと「まん中」の層に
も広くウイングを伸ばし、幅広いリベラル勢力の塊を作らないと、現実的には巨大与党に
かなわない。多くの人びとには安定志向という名の現状追認の力が働きがちですし、自民
党は「まん中」から「右側」の勢力まで押さえています。したがって今回の敗北の原因を
「左側」だと捉え、それと手を切ればいい、などと総括するのは浅はかにすぎます。
確かにいまだ一部の層や勢力には“共産党アレルギー”があるようです。ただ、共産党
も変わっています。今回の野党共闘も、むしろ共産党が譲歩したからこそ実現した。田村
智子氏のような若い世代も出てきていて、志位委員長から次の世代へと指導部が移れば、
さらに変わっていくでしょう。
一方の自民党はどうかといえば、いまだに旧態依然たる“おっさん政治”です。安倍晋
三氏や麻生太郎氏が幅を利かせ、政権を裏で牛耳り、古色蒼然とした価値観を振りまいて
いる。
しかし、このままではこの国が衰退し、いずれ沈没しかねないことに多くの人は薄々気
づいているでしょう。ならば日々の生活や暮らし、貧困や格差の解消、ジェンダーや多様
性、気候変動や持続可能な社会づくり等々、次世代が関心を持つ課題に粘り強く取り組ん
でいけば、いずれ新たな政権の土台は築かれ、時代に求められる日はきます。そのために
新しい世代が先頭に立ち、粘り強く野党勢力の大きな塊をつくる努力を重ねるべきです。
(構成/AERA dot.編集部・吉崎洋夫)
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