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2021年10月03日22:01

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129 詩・短編を書いてみた(第1971回)

新しい物語です
暇なときにでも、読んで頂けると幸いです
面白かったら「イイネ」や「コメント」等をして頂けるとありがたいです(^_^)

※ライトノベルのような文章が好きな方は、好みが合わないかもしれません
※雰囲気を感じていただければ面白いと思います


タイトル「僕の世界とは…?」

――
赤、黄、青…
この世界には多くの色があり、それを組み合わせた美しい景色が存在している
多くの人はそれに驚き、感動の声をあげている事だろう
僕もいつか、そんな世界をこの目に焼きつけてみたい
まぁ、今の僕には一生叶うことのない願いなのだけどね…
何故なら、僕は産まれた時から15年間、先天性の病気で盲目だからだ
だから、僕は世界を知らない
誰かが感じた綺麗を理解することもできない
でも、寂しいとも思ってはいないのだ
それが僕の当たり前なのだから…

そんな僕は今、目の定期検査の関係で病院に通っている
目の症状がどうなっているかを確認するためだ
検査は2日間に渡って行われる為、明日も病院に行かなくてはいけない
全く、何で同じ結果のために時間を使わないといけないのか…
そう考えながら眠りについた…

その日の真夜中
自宅の部屋で寝ていると頬に冷たい風を感じた
窓は閉まってるはずだから、風は入ってこないはずなのに…

身体を起こすと人の気配がする

『誰?』
『あ、バレた』

若い男性の声だ

『アナタは誰ですか?』
『初めまして。私は神の使いとしてきたエニノアと言います』
『神の使いのエニノアさん?』
『困ってるね。まぁ、当然か』
『な、何でしょうか…?』
『まぁ、怯えないで。君にとって良い話を持ってきたんだから』
『い、良い話…?』
『うん。君は、目が見えるようになりたいのかな?』
『えっ? も、もちろん…!』
『だったら、取引しないか?』
『取引…?』
『君の寿命は計算だとあと70年くらい残っているんだけど。それを1ヶ月にする代わりに世界を見させてあげる』
『世界を…?』
『どうする?』

その問い掛けは私に不思議な時間を与えてくれた
これは嘘なのか、本当なのか…
冗談なのか、真実なのか…

色々と思うことはあった
でも、質問の答えはハッキリと出ていた

『お願いします』
『分かった。もう一度、確認するけど。1ヶ月しか生きられなるけど、良いの?』
『はい。大丈夫です』

そう言うと、彼は『じゃあ、明日を楽しみにしていてね』と言って、窓の閉まる音がした後に気配が消えた
多分、いなくなったのだろう

それから、僕は寝るまで不思議な感覚だった
もしかしたら、ただの夢なのか?と…
本当に良くなってるのかな?と感じていたからだ


翌日
目を開けると、強い刺激を感じた
暗闇だった世界が白くに染まる

その刺激に慣れてくると、僕の世界に見たことの無い景色が広がっていた
壁やベットの白、床やタンスの茶色、観葉植物の緑…
僕の世界に色が写っている

見える…
見えている!

喜びが爆発しようとした時、誰かが部屋に入ってきた

『だ、誰?』
『誰って、お母さんよ。この声を忘れたの?』
『お母さん…?』

僕は初めて母の顔を知った

『どうしたのよ?』
『お母さん…。優しい顔をしてるんだね』
『えっ…!?』

驚き、そして戸惑う母

『も、もしかして見えてるの…?』
『うん』
『本当に…?』

母は何度も僕の頬や目の回りを擦る
自分でも、どうしたらいいか分からないのだろう

『お母さん。痛いよ』
『ご、ゴメンね…! どうしよう…どうしよう…。あっ!』

母は思い出したように慌てて、病院に行く準備を始めた

外に出ると、僕の世界に街の景色が映った
何とも言えない感情が、心の中に溢れてくる
嬉しかったり、不思議だったり、驚いたりと多くの感情が一度に

病院に到着すると、事前に電話で母の話を聞いた先生はすぐやって来た
しかし、その話を信じられないのか『またまた…』と言うような顔で僕の目を簡単な検査を始めた
すると、医者の表情が変わる

『ちゃんと検査をしましょう』

医者は側にいた看護師に指示して、僕は専用の機械で調べられた
すると、検査の結果は両方の視力が1.5
医学では説明できない現象が起きていた
当然、医者は驚いた
何故、このような現象が起きるのだろうかと…
しかし、当然、それが分かるわけもなく、医者は『奇跡が起きた…』という言葉で説明するしかなかった

その後、僕の健康状態が調べられた
もちろん、診断は健康とそのもの
ということで、医者とは定期的に診察を行うと約束して病院を後にすることになった

それから家に帰った僕は数日の間、目が見えるようになった事を聞いた親戚にたくさんの『良かったね』と言ってもらい、父は号泣をしながら喜んでいた
よほど嬉しかったのだろう
しかし、僕はその雰囲気を素直に喜べなかった
けして、それが嫌だったというわけではない
ただ、気持ちが違う方向に向いていただけ

エニノアとの約束では、僕はあと約1ヶ月しか生きられない
その時間は多いようで少ないはず
たがら、その時間を最大限に満喫したいと思っていたのだ

僕はまず何をするかを考えた
一番最初に思いついたのは、僕が通っている学校にやって来た研修生に会うことだった
その人は、福祉関係の大学から研修にやって来た女性で、僕の話し相手になってくれる優しい人なのだが…
何故、この方に会いたいのかというと
その理由は簡単
その女性の事が好きだからである
もちろん、その優しさは仕事だからだと分かってるし、これが叶わぬ恋も分かっている
でも、心に焼き付けておきたいのだ
好きになった人の顔を…

翌日
僕はすぐに行動を起こした
学校に行くとその女性がいた
初めて見たその人は、とても綺麗だった
まるで、優しさのベールを被ったような女性

僕は緊張しながら声を掛ける

『せ、先生』
『あ、ユウキ君じゃない』
『おはようございます』
『おはよう。って、あれ? 今日は病院じゃなかったの?』
『その予定だったんですけど、事情が変わったので』
『そうなんだ…』

先生は僕の顔を凝視する

『せ、先生…。どうしました?』
『う〜ん。何か違和感を感じるのだけど…』

あ、先生には言ってなかったんだ!

『先生。僕、目が見えるようになったんです』
『えっ?』

先生は、処理が追いつかなくなったパソコンみたいに固まった

『ど、どういうこと…?』
『目が見えるようになったんです!』
『見えるように…? でも、先天性だって言ってたじゃない…』
『はい、そうなんですが。僕も分からないんですけど、良くなったんです』
『そ、そうなんだ…』

先生は、やっぱり信じられないみたい
まぁ、親の反応から先生も戸惑うだろうとは思っていたから別に気にしてはいないのだけど

僕は素直な気持ちを伝えた

『先生』
『何?』
『先生って、お綺麗なんですね』
『えっ!?』
『じゃあ、すみません。目が見えるようになったんで、もう行きますね』
『えっ? あぁ…うん…。それじゃあね…』
『はい。…先生、ありがとうございました!』

僕はお辞儀をして感謝を伝えた
もう、こんな事は二度とないだろうから…

学校から離れた僕は達成感のような気持ちに浸りながら、次に何をするかを考えた
しかし、なかなか思い付かず家に帰った

数日後…
それは街を散歩していた時、掲示板に貼られていた夜の景色が載った1枚のポスターに目がいった
それは綺麗で僕の心を魅了した

この景色が見たい!

一瞬でそう感じさせるくらいに…

僕は急いで家に帰った
そして、親に事情を伝え、文字が読めない僕の代わりにそれを調べてもらうと、僕が見たポスターに載っていた景色は六甲山の展望台からの景色だと分かった

場所を見ると、意外と近くにあり電車とで行ける距離らしい

僕は母に1人で行きたいことを伝えた
もちろん、母は認めてくれるわけがない
でも、僕は粘り強く交渉した
目が見える今だからこそ、母に連れられて行くより、1人で行くことの方が意味のある事になると思ったから

しかし、母は言う
一人で行かすのは母として怖いと
そして、アナタも怖いでしょ?と…

もちろん、一人で行くことは怖い
怖くないという方がおかしい
知らない世界を1人で歩くことになるわけだから
でも…
それでも、行きたいんだ!

母は僕の想いに根負けしたのか、行くことを認めてくれた
父には母から説明してくれるという




もちろん、一人で行くことは怖い
怖くないという方がおかしい
知らない世界を1人で歩くことになるわけだから
でも…
それでも、行きたいんだ!

母は僕の想いに根負けしたのか、行くことを認めてくれた
父には母から説明してくれるという

僕は母にお礼を言って準備を始めた
しかし、何もかもが初めてだったから何を用意して良いか分からず、調べたり探したりで結局、全てを揃えるのに3日もかかり、出発前日になってしまった

その夜
予想以上に時間が掛かった事に少し落ち込む僕
しかし、すぐに気持ちを入れ換え、布団に横になりながら明日の事を考えた

恐らく、最初で最後になるだろう六甲山への旅
期待と不安が入り交じり、どうしても焦りが生まれてしまう
本当に上手くいくのか
それともいかないのか…

堂々巡りだ

だから、その疑問に答えなんかでない
出るわけがないけど考えてしまう

結局、眠りにつけたのは深夜1時だった

翌朝
僕は重いマブタを無理矢理上げて、親に「行ってきます」と言って、家を出た

道程は事前に調べてあるから知っている
僕は最寄り駅で電車の切符を買い、それに乗った
車掌の笛とベルの音の後に動き出す電車
流れ始める景色に心が踊った

その景色を見ながら電車の移動や乗り換えを繰り返し、時々、乗る電車を間違えながらも数時間

僕はようやく六甲山の麓に着いた

思ったよりも高い六甲山

よし!。

僕は気持ちを引き締めて、その1歩を踏み出した

整備された道やそうでない道
僕は登り始めて数分で登山を後悔した

やっぱり、運動なんかしてなかった人にとって、これは拷問に近い

でも、最初で最後なんだから…!

そう気持ちを引き締めて、息を荒げながら必死に登った

夕日が沈む頃
やっとの事で六甲山の山頂に到着すると、僕はそこから見える景色に心を奪われた
それをどんな言葉で表そうと思った
でも、言葉を知らない僕には、どう表せば良いのか分からない
とにかく美しいのだ…

僕はこの時ほど目が見える事に感謝したことはなかった
エニノアにはお礼を言わないとね

その後、僕は調べしておいた帰り道を使い、帰った
家に帰ると、親は僕を抱き締めて泣いていた
きっと、心配していたのだろう

ありがとう。お母さん…。こんな息子でゴメンね。お母さん……。

僕はそう思いながら、母の温もりを受け入れて1日を終えた

それから僕は、1日1日を大切に生きた
例えるなら、自分のキャンパスに色を塗るように…

その日々は後悔できないほど、楽しかった
楽しくて楽しくて、終わりが来るのが辛くなるなるほどに…

そして、その日がやって来た…
エニノアと約束した最後の日
今日は休日だが、特にやることがない僕は家にいることにした

朝日が射し込む時刻
いつもと変わらないリビングにお母さんが朝ごはんをテーブルに置いている

『ご飯よぉ〜。』

その母の声を合図に、家族がリビングに集まって食卓につく
美味しいご飯と楽しい会話

こんな当たり前が、こんなにも幸せを感じるなんて、普通だったら味わえない
変だと思う
今は目が見えなかったことに感謝しているのだから

時間が経ち、お昼になった
僕は散歩に出掛けた
理由は気分転換と、最後にある家に行って確認したい事があるためだ

僕はあえて時間を潰す為にゆっくりと歩き、その家の前の近くまで行った

すると、その家から女性が出てきた
その人は優しそうな雰囲気を醸し出している

やっぱり、素敵な人だ…。

そう思った時、その後から彼女と同世代の男性が出てきた
きっと彼氏だろう

でも僕はそれを見て、不思議と安心した
何故なら、好きになった人が幸せに暮らしているということが分かったから…

さて、時間もないし帰ろうかな…。

僕は、自分の笑みが消える前に家へ帰った

その日の夜
皆が寝静まった頃に僕は寝れなくて起きていた
テレビや電気をつけず、窓から差し込む月明かりだけが部屋を照らしている

その部屋で布団に横になりながら、その時がくるのを待っていた
すると、エニノアが隠れているのに気づいた

『何してるの?』

そう言うと、エニノアが出てきた

『あれ、気づいちゃった?』
『見えるからね』
『そうだったね』

エニノアと僕は互いに笑みを浮かべる

『そういえば、エニノアは何しに来たの?』
『何しにって…。まぁ、いいじゃん』
『そう…。あ、そうだ!』

僕はこれまでのエニノアの感謝を思い出し、それを伝えた

すると、急にエニノアは僕を見て笑い始めた
それはポジティブな意味でないというのはすぐに感じた…

『何で笑ってるの?』

そう言うと、エニノアは笑顔を堪えながら言う

『だって、お前はあと数時間しか生きられない。それなのに感謝だなんてするんだもん』
『どういうこと…?』
『いいよ。黙っておこうと思ったけど教えてあげる』

エニノアは話を始めた
笑っていた理由を…

そもそも、エニノアが僕の目を見えるようにしたのは理由がある
それは私に目を見させて、楽しい日々を過ごさせる事で、
死が近づくにつれて出てくる生への執着心を見たかったのだ
つまり、死ぬ間際の「もっと生きたい」という願望のような後悔する姿を見て楽しむために僕の目に光を見せたのだ

『そもそも、何のメリットも無しに、君みたいな人間に手を貸すわけないじゃない』

そう言って笑うエニノア
それを見ていた僕は、本当なら憎しみや怒りを表現しなくてはいけないと思うのだけど
不思議と僕はさっきと変わらない想いを抱いていた

だって、たった1ヶ月だったけど
心から渇望していた、この世界を見る事が出来たのだから
赤はこういう色なんだ
青はこういう色なんだと
その一つ一つの感動は他に変えられないモノだから…

『そういう事だったんだね…』
『そうだ。だから、お前が苦しむ姿を……』
『でも、ありがとうね』

僕の言葉にエニノアは驚いていた
恐らく、予想していた言葉ではなかったからだろう

『ありがとう、だと…。強がりでもいってるのか?』
『ううん。君が僕に力を与えたことで、僕は世界を知ることが出来たんだ。それは、僕が心の底から願っていたことだ。もし、君が現れてくれなかったら僕の世界は光の無い漆黒の世界だった。そんな世界で長く生きられても仕方がないんだ。だから、ありがとう』

僕の話を聞いていたエニノアは目を泳がせ、何が言えるのか戸惑っているかのよう

そして、唯一、絞り出せた言葉が『でも、俺は謝らないからな』という強がりだった
でも、僕は『構わないよ』と言う

すると、また黙るエニノア

僕はその顔を見ながら優しく微笑んだ

そして、月昇り、日付が変わる頃…

僕の心臓の鼓動が弱くなり始めた
終わりが近づいているようだ…

エニノアを見ると、その雰囲気を感じたのか明らかに動揺していた

僕の意識が遠退いていく
見ていた景色に暗闇が広がっていく
でも、不思議とその暗闇は怖くなかった
だって、それが闇という存在を分かっていたから……

『おやすみなさい』
それが僕が口にした最後の言葉にした

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