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2021年09月30日16:52

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『浜の朝日の嘘つきどもと』

映画館を巡る映画として『キネマの神様』を観ましたが、先日福島県の南相馬の映画館を舞台にした『浜の朝日の嘘つきどもと』を観てきました。この作品は福島中央TV開局50周年記念映画です。

南相馬の老舗映画館朝日座の館主は閉館を決めて、不要なフィルムを焼却しています。そこに茂木莉子と名乗る若い女性がやってきて、閉館してはいけないと強引に営業を続けさせようとします。すでに土地の売却も決めているので、そう簡単にことは進みません。茂木莉子は高校時代の恩師に頼まれて、この映画館を建て直しにやってきたのでした。

タナダユキ監督のオリジナル脚本で、南相馬を含めた福島の現状が説明で語られます。震災の時の映像はなく、セリフや人のたたずまいなどで今が感じられました。
館主が震災は耐えたけどコロナ禍はダメだったというセリフを言います。震災を乗り越えるのにどれほど苦労したか、そしてコロナ禍がどれほどのダメージを与えたか、昨年の映画館の大変な状況を知っているのでよくわかります。と言っても、この映画館は館主の経営センスにも問題があるという設定になっています。

この個性的な館主を演じるのは落語家の柳家喬太郎、憎めないキャラクターを自然体で演じています。上映会の2本立ての作品の組み合わせのセンスには納得したり、それはないだろうと映画を観ながら突っ込んだりしました。
茂木莉子は高畑充希が演じ、明るい性格ながら暗い過去を抱える女性として印象深い存在です。
そしてなによりも恩師を演じる大久保佳代子が素晴らしいです。教師としては優れていますが、男にだらしない映画好きという絶妙な女性を実にリアルに演じています。最後いや最期まで笑わせてくれます。
ラストを含めては夢物語ですが、余韻は抜群です。

福島の映画館繋がりで、本宮にある本宮映画劇場についての田村優子「場末の場末のシネマパラダイス ――本宮映画劇場」を読みました。映写機を含めてお宝満載の劇場、こういう劇場がまだあるのですね。著者は3代目館主、情熱が伝わる本です。


写真左:『浜の朝日の嘘つきどもと』のチラシ
写真右:田村優子「場末の場末のシネマパラダイス ―本宮映画劇場」
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