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2021年08月25日10:32

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126-2 終 詩・短編を書いてみた(第1968回)

「親の代わり…」

【あらすじ】
その日は少し強めの雨が降っていた。

私は30歳になったばかりの独身でサラリーマンをしている。

そんな私はこの日。
急な休日出勤に苛立ちながら
出勤の準備を整えていると…。
突然
インターホンが鳴った。

『たく…。急いでるのに何だよ…!』

私は乱暴に玄関を開ける。

『どちら様ですか!』

そこにいたのは
リュックサックを背負う
中学生くらいの女の子だった…。

―――

『えっと…。君は、誰?』

そう言うと
女の子は恐る恐る1枚の手紙を渡してきた。
その手紙にはこう書かれていた。

「お久しぶりです。親戚のササキユウジと申します。覚えているだろうか?」

(ササキユウジ…。あぁ、確か。親戚に、会社を経営をしているササキと言う人がいるって、お母さんが言ってたな…)

「単刀直入で申し訳ないのだが…。娘のカオリの面倒を見てくれないだろうか?。実は会社の経営が上手くいかなくなり、一家離散と言うことになりました。必ず、必ず引き取りに行くので、それまではお願いします」

私はカオリという女の子に視線を移す。
カオリちゃんは何も言わない。

『……ゴメン。今、急いでて。他を当たってくれ…』

私はドアの鍵を閉めて
仕事へ向かった……。

それから数時間後。
仕事が終わり
ヘトヘトの身体で家へ帰ると。
私の家のドアの前で
体育座りをしているカオリちゃんがいた。

てっきり居なくなっていたと思っていたから私は驚いた。

『な、何やってるんだよ…!?。他を当たれって言ったろうが…』
『……ここに来る前に回りました。でも、皆、相手にしてくれなくて。お金もなくなって、どこにもいけないし…』

今にも泣きそうな彼女に私は――。

『あぁ、もう分かった。とにかく家に入れ』
『え、いいの…?』
『仕方ないし、腹も減ってるんだろ?』

カオリちゃんは頷く。

『ただ、部屋は汚いし、男飯だから期待するなよ』

私はドアを開けて
カオリを家の中へ入れた。

ドアを閉めると――。

(ん…?。何か臭いぞ…)

慌てて気づかなかったが
彼女が少し臭う。

『えっと…。カオリちゃん…だっけ?。お風呂は入ってるの?』

彼女は首を横に降る
どうやら1週間前から入ってはいないらしい。

(ご飯の前にお風呂だな…)

『じゃあ、まずお風呂に入りなさい』
『いいの…?』
『いいよ。女の子なんだから、綺麗にといた方が良いでしょ』
『うん…。ありがとうございます』

カオリちゃんは脱衣所へ。
私は彼女に脱衣所のカギやタオルのある場所など
お風呂場の使い方を簡単に説明してから
料理に取りかかった。

ただ料理を作るとは言っても
作れるのは簡単な男飯のような物だから
喜んでくれるかどうか…。

数十分後。
カオリちゃんがお風呂から出た音がした。

(あ、着替え…)

そう思った私は
脱衣所のドアに近づいてカオリに聞いた。

『そういえば、着替えはあるの?』
『えっ…あっ…!?。な、無いです…』
『リュックには入ってないの?』
『ありません…』
『じゃあ、申し訳ないけど…。俺のでもいい?』
『は、はい…』
『分かった。じゃあ、前に置いておくからね』

私は脱衣所の引き戸の前に
私が使っていたジャージを置いた。


それから少しして
ジャージを着たカオリちゃんが出てきた。

『お風呂、ありがとうございました』
『どういたしまして。さっぱりし――。あ、やっぱり服、大きかったね』
『あ、いえ…。全然、大丈夫です…』
『…じゃあ、ご飯は用意しているから、先に食べてて。俺、お風呂に入ってくるから』

俺はお風呂で身体と頭を洗い
湯船に浸かる。

『はぁ…』

(大変なことになったなぁ…。彼女の生活費はギリギリ工面できるけど。あんな思春期真っ盛りの女の子と同じワンルームか…。不安だなぁ…。まぁ、引き取りに来るまでの辛抱だ)

『よし!』

私はいつもより長めに風呂に入ったあと
自分の頬を両手で叩いて浴室を出た。

寝間着に着替え脱衣所を出ると
てっきり
ご飯を食べ終わっていると思っていたカオリちゃんが
ご飯を食べないで私を待っていた。

『た、食べてて良いのに…』
『いや、なんか…。申し訳ないなぁって…』
『そんなこと気にしなくていいのに…』
私は少し呆れながら席につき
カオリちゃんと一緒にご飯を食べ始めた。

カオリちゃんは
とてもお腹が空いていたようで
私の作ったご飯を飲み物のように口に運んでいく。

私が『落ち着いて』と言っても
数秒後にはまた同じ食べ方をしていた。

食事が終わり
少し落ち着いたようすのカオリちゃんを見て
私はあらためて
これまでの事を聞いてみた。

カオリちゃんは自分のペースで
これまでの事を話してくれた……。

今から数か月前。
親と妹とカオリちゃんな家族4人が
何不自由なく過ごしていたら
突然
親からこのように言われたという。

『今まで黙って頑張ってきたが、会社の経営が良くないんだ。これから辛い想いをさせると思う。すまん!』と…。

その時の彼女は
その意味を深く理解できていなかったが
翌日から生活が一変した。

ご飯は三食はあるものの
白米と味噌汁ぐらいの食べ物しかなく。

育ち盛りの二人には足りるわけがない。

家財も日を追うごとに減っていき
必要最低限の物以外は全て無くなった。
それでも
お母さん達と生きていけるのなら…と
思っていたのだが。
住んでいた家さえも失い
最後には一家離散ということになったのだという……。

私は辛そうに話すカオリちゃんの頭を撫でた。

彼女の気持ちの慰めになればと思って。

彼女は僕の慰めを受け入れてくれた…。

その後は雑談を交えながら時間を過ごし
寝る時間になった。

しかし問題が1つ。
恋人もいない
一人暮らしの男の部屋に
寝具が複数あるわけもなく。
ベットをどうするかという話になった。

もちろん私は
カオリちゃんに使ってもらい
自分は床で寝ることを提案した。
しかし
彼女は申し訳ないからと
私が床で寝ると言い出した。

しかし当然
女の子を床で寝させるわけにはいかない。
だから
私はダメだと言ったが
カオリちゃんも引くことはなく
お互いの想いやりがぶつかり
言い合いになった。
私が引けば良かったのだが
引くに引けず…。

その結果。
カオリちゃん折れて
彼女がベットで寝るという事で話がついた。

私は最低限の道徳を守れたと安心して眠りについた。

翌日
私が眠りから覚めると
隣から違和感を感じた。

『(なんだ…?)』

目を開けると
私の隣でカオリちゃんが眠っていた。

私は声を出さなかったが
眠気が吹き飛ぶくらい驚き
彼女から自分の身体をゆっくり離した。

『(安心してくれているのは嬉しいけど。これはこれで困るよ…)』

私は彼女を起こさないように立ち上がり
朝ごはんの準備に入った。

調理を始めて少しすると
カオリちゃんが目を覚ました。

『おはようございます…』

彼女は眠気にまだ負けているようだ。

『おはよう。もう少しでご飯できるから、座って待ってて』
『はい…』

カオリちゃんは「ポケ〜」という擬音が似合う雰囲気のまま座った。

完成した料理を机に並べ
テレビを見ながら静かにご飯を食べ始める私達。

ご飯粒を綺麗に食べる彼女に少し感動しつつ。
私はご飯を食べ終えてたあと
仕事のために家を出た。

『(一人にするのは心配だけど。昼ごはんも作ってあるし、注意事項は言ったし、大丈夫だろう)』

そう思っていたのだが
ダメだったのは私な方だったようで…。

普段と変わらない内容の仕事をしているのだが
それが全く手につかない。

結局最後まで落ち着かず
その事を同僚には心配されたが
理由は言えば
ややこしいことになると思ったので
寝不足と言って
その心配を受け流した。

そんなこんなで
どうにか仕事を終えて
家へ帰ってくると…。

何故か
部屋は真っ暗だった。

『(あれ…?。まさか…!?)』

私は嫌な予感がした。
もしかしたら何処かへ行ってしまったのではないかと…。

しかし
よく耳を澄ませると
誰かが眠っているような寝息が聞こえてきた。

私は恐る恐る電気をつける。
すると
カオリちゃんが私のベットに寄りかかりながら眠っていた。

私は安堵のため息を吐く。

『(よかった…。って、あれ?)』

私は部屋が綺麗になっている事に気づいた。
そして
その明かりでカオリちゃんが目を覚ました。

『あ、お帰りなさい…』
『ただいま…。あれ、もしかして掃除してくれたの?』
『はい。何か私にも出来ることあるかなって思って…』

話を聞くと
向こうの家では掃除や洗濯など
一通りの家事を手伝っていたようで。
食べ物のお礼にと
部屋の掃除をしてくれたみたい。

『(良い子なんだなぁ…)』

私は思わず笑みがこぼれる。

『さて、ご飯食べるか!』

そう言うと
カオリちゃんは目を輝かせ『うん!』と頷いた。


それから月日が過ぎ。
私は時間があるときに
カオリちゃんがここに住むのに必要な行政手続きや
学校への編入手続きなどを行った。

学校への編入先は
カオリちゃんが通っていた学校と同じ偏差値の場所にした。
本人の能力よりも高かったり低かったりすると
環境に馴染めずに問題が起きる可能性があると思ったからだ。

私はカオリちゃんに
前に通っていた学校の名前を聞いた。
すると
彼女はこの辺りでも偏差値が高くて有名な学校へ通っていた事が分かった。

私は驚いたが
彼女の理解力を見ていたからか
すぐに納得できた。

その後
カオリちゃんは
私が選定した学校の中から学校を選び
編入試験を受けた。
結果は見事合格。
私は彼女の親のように嬉しかった。

私達の非日常は少しずつ
日常へと変わっていき
季節は春から冬に変わった。

(このまま穏やかに…)と思っていたのだが…
それは突然やってきた。

ピーンポン…。

私達がもう寝ようかと思っていた時に
インターホンが鳴った。

『(誰だろう。こんな時間に…)』

私は玄関の覗き穴からドア前を見る。
すると
そこには
スーツを着たガラの悪そうな人が2人立っていた………。


1人は兄貴のようなで
もう1人はその子分のような雰囲気…。
前回来た人達とは違う
ガラの悪そうな人が2人立っていた。

『(嫌な予感がする…)』

私はその男達にバレないよう
すぐにカオリちゃんに何処かへ隠れるように言った。

カオリちゃんは動揺しながらも
すぐにこの部屋のベランダに隠れ
私はカーテンを閉めた。

ピーンポン…。

『あ、はーい』

私は一呼吸置き
チェーンを掛けてからドアを開けた。

『はい…。どちら様でしょうか?』
『あ、突然すみません。お聞きしたいことがありまして。この子見たことありませんか?』

男の1人が写真を見せてきた。
それはカオリちゃんが写った写真。

『……この子が何か…?』
『あ、いえ。行方を探していましてね。知りませんか?』
『……記憶はないですね…』
『…そうですか。分かりました』

そう言って男達は去っていった。

私はカギを閉めて
カオリちゃんを部屋の中へ入れた。
彼女はカーテンの隙間から
私のやり取りを見ていたらしく
私に彼らが誰なのかをこう言った。

『あの人達は借金取りです…』
『借金取り?。何で、借金取りがカオリちゃんを探してるんだよ…?』
『多分…。お父さんとお母さんは逃げたからだと思う…』
『逃げた…?。待ってくれ。君の親は、借金を返すために頑張っているはずじゃ…?』

彼女は首を横に振って――。

『私、思い出したんです。借金取りの人に、私の名前が書いてある連帯保証人の書類を見せられたのを』
『連帯保証人…。じゃあ、まさか。自分の子供に借金を押しつけたって言うのか?』
『そこまでは分かりませんが。借金取りがここに来るということは…』
『……。(何となく予測はしていた。まだ学生の女の子を放り出す親のやることだから。しかし、これからどうしたらいいのか…。もしかしたら彼女に危害が及ぶかもしれないことを考えると…)』

悩む私にカオリちゃんが目に涙を浮かべて――。

『ごめんなさい。私がここに居るばかりに…。やっぱり、出ていった方が良いですよね…』
『そ、そんなこと気にしないで。君は、ここにいて良いんだから』
『い、良いんですか?』
『もちろん』
『あ、ありがとうございます…』

カオリちゃんが安堵の笑みが溢れた。
それを見て私も「良かった」と思えた。
しかし
物事はなかなか上手くいかないもので…。

この日から数週間後の休日。
再びあの借金取りが現れた。

私は『知りません』と言ったが
奴等は既にここにいることを突き止めていた。

奴等は強引に家の中へ入り
ベランダに隠れていたカオリちゃんを捕まえた。

『さぁ、行くぞ』

奴等はそう言って
抵抗するカオリちゃんに怯むことなく
彼女を家から連れ出そうとする。

私は
どうしたら良いのか分からないまま
思わず『ま、待て!』と言って
カオリちゃんの腕を掴んだ。

『つ、連れていくな…』
『俺達には、契約書がある。お前に止める権利があると思うか?』
『ある…』
『ほぉ…。では、どうするつもりだ?』
『私が払う!』
『…威勢は良いが、1000万円だぞ?』

――!?。

『い、1000万…。(そんな大金、あるわけがない…。それにこれからはもっとお金が必要になってくるだろう…。どうすれば…)』

『で、どうするんだ。代わりに払うのか?』

兄貴らしき人が私の決断を焦らせる。

私はグラグラに揺らぐ思考の中
カオリちゃんの顔を見た。
絶望の中で
私に唯一の望みを託しているような目を向けている。

その目を見て私は決めた。

『私が代わりに払う』

そう言うと
兄貴らしき人は静かに私を見つめ――。

『良いでしょう』
『あ、アニキ!?。良いんですか?』
『いい。コイツなら払うだろうさ』
『…兄貴がそう言うなら…』

私は兄貴らしき人から契約書に渡され
それに自分の名前を書いた。
その契約書を受け取った兄貴と言われる人は『頑張れよ』と言い残し
子分を連れて立ち去った。

玄関のドアが閉まり
緊張の糸が切れたように膝から崩れ落ちる私。

カオリちゃんが近寄ってくる。

『大丈夫ですか…!?』
『うん。ありがとう。でも、ゴメンね。こんな方法しか出来なくて…』
『何を言ってるんですか…!?。謝るのは私の方です…。関係のないのに巻き込んでしまって…』
『なに言ってんのさ。君みたいな頑張っている子見捨てられるわけないだろ?』

そう言うと
カオリちゃんは静かに涙を流したのだった……。


それからは本当に大変だった。

借金返済の為に
生活を切り詰めたり
時には副業を始めたりして
借金返済に力を注いだ。

カオリちゃんは高校生になると同時に
学業を疎かにならない程度にアルバイトを始めた。
一時は『高校に行かないで働く』と言われたが
私の必死の説得で学校へは行ってもらっている。

それらの努力もあってか
借金少しずつだが減っていった。

それからさらに時間が経ち。
カオリちゃんは高校を卒業した。

高校をカオリちゃんは当然のごとく
働く事を希望したが私は大学へ行くことを勧めた。

当然
カオリちゃんには『お金はどうするの?』と言われたが。
もちろん
我が家にはそのようなお金はないので
事前に調べていた。

私はカオリちゃんにある大学の資料を見せる。
それは有名大学の特待生制度の説明が書かれた資料。

この大学には
試験の結果によって特待生に選ばれ
その特待生には学費が免除される制度があるのだ。

もしカオリちゃんが
この制度を使うことが出来れば
借金が残る今の状況でも
大学で学ぶことは可能だ。


カオリちゃんにそのことを説明すると。
彼女はしばらく考えて『分かった』と呟いた。

それから
カオリちゃんは大学受験の勉強を始め
大学入試と特待生試験を受けた。

その結果。
彼女は大学に合格。
さらに特待生にも選ばれた。

これで
無償で大学へ通うことが出来る。

私は良かったと思う反面
正直驚きもした

自分から提案はしてみたものの…。
有名大学の合格どころか
特待生など簡単になれるものではない。
しかし
彼女はそのチケットを手に入れた。

きっと
もう彼女は自分の力で人生を歩むことが出来るし
私を簡単に越えていくのだろう。

私に子供はいないが。
そう思うと
まるで親のように彼女の将来に期待が膨らむ。

しかし
それから数年後の
カオリちゃんが4回生になった日…。

突然
家のインターホンが鳴った。

『(誰だ?。新聞の勧誘とかかな…?)』

私はカオリちゃんが出ようとするのを止めて
自分で玄関のドアを開ける。

そこに立っていたのは
50代くらいの男女2人だった。

『あの…。新聞のなら間に合ってますが…』

そう私が言うと
その男性がこう言った。

『こちらに"カオリ"という女の子は住んでいませんでしょうか?』
『カオリ…?。えっと…。どちら様ですか?』
『カオリの親です』
『親……』

それを聞いて
私はどこかに溜まっていた感情が
自分の頭の中を駆け巡り
怒りの声をあげそうになった。
でも
私はそれを理性で抑え――。

『カオリちゃんはいませんので、お引き取りを…』

そう言って
私はドアを閉めた。

『(今更なんだよ…。カオリちゃんにあんな想いをさせたくせに…)』

怒りを抑えながら部屋に戻ると
カオリちゃんが心配そうに私を見ていた。

私はカオリちゃんに『変な勧誘だったよ』と言って誤魔化した。

そもそも
あの人達が親という確証はないし
親だとしてもカオリちゃんには会わしたくない。

しかし
いつまでも隠し通せるわけもなく……。


それから数か月後の夜。
私が仕事から帰ってくると
カオリちゃんが机にもたれ掛かり
酷く悩んでいた。

私は『どうかしたの?』と声をかける。

カオリちゃんは身体を起こし
思い詰めながら口を開いた。

『実は…。さっき、お母さんが訪ねてきて…』
『えっ…!?。(どうして…。いないって言ったのに…)。それで、お母さんに何か言われた?』
『うん…。家に帰ってきてって言われた』
『そう…。……』

私はカオリちゃんのその答えを聞くのが嫌で話を流そうとした。

もし帰ると言われるのが怖くて…。
でもカオリちゃんは――。

『でも、断ろうと思う』
『えっ、本当に…?』
『うん。だって、私の家はここだもん』
そう言ったカオリちゃんの言葉と笑顔に
私の心は救われたように軽くなった。

『ありがとう…』
『ううん。私こそありがとうだよ。だから、これからも宜しくお願いします』
『もちろん!』

後日。
またカオリちゃんの親がやって来たが

彼女は『帰らない』と伝え
自分の親を拒否した。

彼女の親は苦虫を噛み潰したような顔で
何も言わずに去って言った…。


再び
私達に平穏な日々が訪れ
借金も確実に減らしていき
遂に借金返済の目処が見えてきた。

『(もう少しだ…)』

しかし
光が見えたのもつかの間。
再び彼女の親がやってきた。

彼女の親は
私が玄関のドアを開けるなり
ある紙を見せてきた。

その紙には
カオリちゃんの親権は彼女の親側にあると書かれていた。
裁判所の名前付きで。

『さぁ、娘を返してもらおうか?』

当然の権利かのように言う彼らに――。

『ふざけんなよ…。借金を押しつけておいて、無くなったとみるや娘を返せだと…。お前たちは、それでも親なのか!?』
『親だ。この紙が証明しているからな。さぁ、娘を返してもらおうか』

彼たちはドアを無理矢理に開けようとする。

私は阻止しようとしたが
人数では敵わずに開けられた。
家の中へ入った彼らは
カオリちゃんを無理矢理連れていこうとした。

その時
家のインターホンが鳴った。

一瞬の静寂と私を見るカオリちゃんの親たち。

私はドアを開ける。

インターホンを鳴らしたのは借金取りのあの兄貴の人だった。

私は彼を中に入れる。
彼はカオリちゃんの親たちを見て
『おや、この方々は?』と私に聞くので
私は彼に状況を説明した。

『なるほど。彼女の親ですか…。ちょっと失礼』

彼は書類をカオリちゃんの親から取り
中身を読み始めた。
すると――。

『この書類は…。偽物ですね』

その言葉に彼女の親は動揺する。

『書類の書式が違いますし、文章もバラバラですので』
『な、何をいっているんだ!?。デタラメな事を言うな!!?』
『デタラメ?。では――』

借金取りの人は
書類の疑問点をカオリちゃんの親に尋ねた。

詰問のように浴びせられた質問に
彼女の親は何も答えることは出来なかった。

しかし彼らは
『カオリは私達の娘だ』と言って
意地でも認めなようとしない。

その彼達に
借金取りの人が言う。

『あなた方の事情は知りませんが。あなた方が親だというのなら、当然、借金を払って頂けるのですよね?』
『えっ…』
『当然でしょう。本来は親である、あなた方の借金なのですから』

そう言われたカオリちゃんの親は
互いに顔を見合わせて――。

『いやぁ〜。どうやら勘違いだったみたいで』
『そうよね。私達に子供はいないものね』


そう言って退散していった…。

私は彼に『ありがとう』と言う。
彼は『いえ、私の親もあんなんでしたら、腹がたっただけですよ…』

そうポツリと呟いた。

『そういえば、今日はどんなご用で?』
『あ、そうでした…!』

彼は私に一枚の紙を渡してきた。

その紙には「借金返済」の文字が。

どういう事かというと…。
実は毎月の返済する金額を
多く取っていたらしく。
それに気づいた彼が
わざわざ言いに来てくれたという。

『それと、もしかしたらですが。あなた方が払った借金。返ってくるかもしれませんよ』
『ほ、本当ですか!?』
『ええ。借金返済のアテが見つかりましたからね』


それからして
私達が払ったお金が少しずつ返ってきた。
どうやら
カオリちゃんの元親から
借金を返済させているようだ



そのお金は貯めておこうと思う

いつかくるカオリちゃんの未来の為に………

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