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2021年08月23日21:32

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126-1 詩・短編を書いてみた(第1967回)

「親の代わり…」
【あらすじ】
その日は少し強めの雨が降っていた。

私は30歳になったばかりの独身でサラリーマンをしている。

そんな私はこの日。
急な休日出勤に苛立ちながら
出勤の準備を整えていると…。
突然
インターホンが鳴った。

『たく…。急いでるのに何だよ…!』

私は乱暴に玄関を開ける。

『どちら様ですか!』

そこにいたのは
リュックサックを背負う
中学生くらいの女の子だった…。

―――

『えっと…。君は、誰?』

そう言うと
女の子は恐る恐る1枚の手紙を渡してきた。
その手紙にはこう書かれていた。

「お久しぶりです。親戚のササキユウジと申します。覚えているだろうか?」

(ササキユウジ…。あぁ、確か。親戚に、会社を経営をしているササキと言う人がいるって、お母さんが言ってたな…)

「単刀直入で申し訳ないのだが…。娘のカオリの面倒を見てくれないだろうか?。実は会社の経営が上手くいかなくなり、一家離散と言うことになりました。必ず、必ず引き取りに行くので、それまではお願いします」

私はカオリという女の子に視線を移す。
カオリちゃんは何も言わない。

『……ゴメン。今、急いでて。他を当たってくれ…』

私はドアの鍵を閉めて
仕事へ向かった……。

それから数時間後。
仕事が終わり
ヘトヘトの身体で家へ帰ると。
私の家のドアの前で
体育座りをしているカオリちゃんがいた。

てっきり居なくなっていたと思っていたから私は驚いた。

『な、何やってるんだよ…!?。他を当たれって言ったろうが…』
『……ここに来る前に回りました。でも、皆、相手にしてくれなくて。お金もなくなって、どこにもいけないし…』

今にも泣きそうな彼女に私は――。

『あぁ、もう分かった。とにかく家に入れ』
『え、いいの…?』
『仕方ないし、腹も減ってるんだろ?』

カオリちゃんは頷く。

『ただ、部屋は汚いし、男飯だから期待するなよ』

私はドアを開けて
カオリを家の中へ入れた。

ドアを閉めると――。

(ん…?。何か臭いぞ…)

慌てて気づかなかったが
彼女が少し臭う。

『えっと…。カオリちゃん…だっけ?。お風呂は入ってるの?』

彼女は首を横に降る
どうやら1週間前から入ってはいないらしい。

(ご飯の前にお風呂だな…)

『じゃあ、まずお風呂に入りなさい』
『いいの…?』
『いいよ。女の子なんだから、綺麗にといた方が良いでしょ』
『うん…。ありがとうございます』

カオリちゃんは脱衣所へ。
私は彼女に脱衣所のカギやタオルのある場所など
お風呂場の使い方を簡単に説明してから
料理に取りかかった。

ただ料理を作るとは言っても
作れるのは簡単な男飯のような物だから
喜んでくれるかどうか…。

数十分後。
カオリちゃんがお風呂から出た音がした。

(あ、着替え…)

そう思った私は
脱衣所のドアに近づいてカオリに聞いた。

『そういえば、着替えはあるの?』
『えっ…あっ…!?。な、無いです…』
『リュックには入ってないの?』
『ありません…』
『じゃあ、申し訳ないけど…。俺のでもいい?』
『は、はい…』
『分かった。じゃあ、前に置いておくからね』

私は脱衣所の引き戸の前に
私が使っていたジャージを置いた。


それから少しして
ジャージを着たカオリちゃんが出てきた。

『お風呂、ありがとうございました』
『どういたしまして。さっぱりし――。あ、やっぱり服、大きかったね』
『あ、いえ…。全然、大丈夫です…』
『…じゃあ、ご飯は用意しているから、先に食べてて。俺、お風呂に入ってくるから』

俺はお風呂で身体と頭を洗い
湯船に浸かる。

『はぁ…』

(大変なことになったなぁ…。彼女の生活費はギリギリ工面できるけど。あんな思春期真っ盛りの女の子と同じワンルームか…。不安だなぁ…。まぁ、引き取りに来るまでの辛抱だ)

『よし!』

私はいつもより長めに風呂に入ったあと
自分の頬を両手で叩いて浴室を出た。

寝間着に着替え脱衣所を出ると
てっきり
ご飯を食べ終わっていると思っていたカオリちゃんが
ご飯を食べないで私を待っていた。

『た、食べてて良いのに…』
『いや、なんか…。申し訳ないなぁって…』
『そんなこと気にしなくていいのに…』
私は少し呆れながら席につき
カオリちゃんと一緒にご飯を食べ始めた。

カオリちゃんは
とてもお腹が空いていたようで
私の作ったご飯を飲み物のように口に運んでいく。

私が『落ち着いて』と言っても
数秒後にはまた同じ食べ方をしていた。

食事が終わり
少し落ち着いたようすのカオリちゃんを見て
私はあらためて
これまでの事を聞いてみた。

カオリちゃんは自分のペースで
これまでの事を話してくれた……。

今から数か月前。
親と妹とカオリちゃんな家族4人が
何不自由なく過ごしていたら
突然
親からこのように言われたという。

『今まで黙って頑張ってきたが、会社の経営が良くないんだ。これから辛い想いをさせると思う。すまん!』と…。

その時の彼女は
その意味を深く理解できていなかったが
翌日から生活が一変した。

ご飯は三食はあるものの
白米と味噌汁ぐらいの食べ物しかなく。

育ち盛りの二人には足りるわけがない。

家財も日を追うごとに減っていき
必要最低限の物以外は全て無くなった。
それでも
お母さん達と生きていけるのなら…と
思っていたのだが。
住んでいた家さえも失い
最後には一家離散ということになったのだという……。

私は辛そうに話すカオリちゃんの頭を撫でた。

彼女の気持ちの慰めになればと思って。

彼女は僕の慰めを受け入れてくれた…。

その後は雑談を交えながら時間を過ごし
寝る時間になった。

しかし問題が1つ。
恋人もいない
一人暮らしの男の部屋に
寝具が複数あるわけもなく。
ベットをどうするかという話になった。

もちろん私は
カオリちゃんに使ってもらい
自分は床で寝ることを提案した。
しかし
彼女は申し訳ないからと
私が床で寝ると言い出した。

しかし当然
女の子を床で寝させるわけにはいかない。
だから
私はダメだと言ったが
カオリちゃんも引くことはなく
お互いの想いやりがぶつかり
言い合いになった。
私が引けば良かったのだが
引くに引けず…。

その結果。
カオリちゃん折れて
彼女がベットで寝るという事で話がついた。

私は最低限の道徳を守れたと安心して眠りについた。

翌日
私が眠りから覚めると
隣から違和感を感じた。

『(なんだ…?)』

目を開けると
私の隣でカオリちゃんが眠っていた。

私は声を出さなかったが
眠気が吹き飛ぶくらい驚き
彼女から自分の身体をゆっくり離した。

『(安心してくれているのは嬉しいけど。これはこれで困るよ…)』

私は彼女を起こさないように立ち上がり
朝ごはんの準備に入った。

調理を始めて少しすると
カオリちゃんが目を覚ました。

『おはようございます…』

彼女は眠気にまだ負けているようだ。

『おはよう。もう少しでご飯できるから、座って待ってて』
『はい…』

カオリちゃんは「ポケ〜」という擬音が似合う雰囲気のまま座った。

完成した料理を机に並べ
テレビを見ながら静かにご飯を食べ始める私達。

ご飯粒を綺麗に食べる彼女に少し感動しつつ。
私はご飯を食べ終えてたあと
仕事のために家を出た。

『(一人にするのは心配だけど。昼ごはんも作ってあるし、注意事項は言ったし、大丈夫だろう)』

そう思っていたのだが
ダメだったのは私な方だったようで…。

普段と変わらない内容の仕事をしているのだが
それが全く手につかない。

結局最後まで落ち着かず
その事を同僚には心配されたが
理由は言えば
ややこしいことになると思ったので
寝不足と言って
その心配を受け流した。

そんなこんなで
どうにか仕事を終えて
家へ帰ってくると…。

何故か
部屋は真っ暗だった。

『(あれ…?。まさか…!?)』

私は嫌な予感がした。
もしかしたら何処かへ行ってしまったのではないかと…。

しかし
よく耳を澄ませると
誰かが眠っているような寝息が聞こえてきた。

私は恐る恐る電気をつける。
すると
カオリちゃんが私のベットに寄りかかりながら眠っていた。

私は安堵のため息を吐く。

『(よかった…。って、あれ?)』

私は部屋が綺麗になっている事に気づいた。
そして
その明かりでカオリちゃんが目を覚ました。

『あ、お帰りなさい…』
『ただいま…。あれ、もしかして掃除してくれたの?』
『はい。何か私にも出来ることあるかなって思って…』

話を聞くと
向こうの家では掃除や洗濯など
一通りの家事を手伝っていたようで。
食べ物のお礼にと
部屋の掃除をしてくれたみたい。

『(良い子なんだなぁ…)』

私は思わず笑みがこぼれる。

『さて、ご飯食べるか!』

そう言うと
カオリちゃんは目を輝かせ『うん!』と頷いた。


それから月日が過ぎ。
私は時間があるときに
カオリちゃんがここに住むのに必要な行政手続きや
学校への編入手続きなどを行った。

学校への編入先は
カオリちゃんが通っていた学校と同じ偏差値の場所にした。
本人の能力よりも高かったり低かったりすると
環境に馴染めずに問題が起きる可能性があると思ったからだ。

私はカオリちゃんに
前に通っていた学校の名前を聞いた。
すると
彼女はこの辺りでも偏差値が高くて有名な学校へ通っていた事が分かった。

私は驚いたが
彼女の理解力を見ていたからか
すぐに納得できた。

その後
カオリちゃんは
私が選定した学校の中から学校を選び
編入試験を受けた。
結果は見事合格。
私は彼女の親のように嬉しかった。

私達の非日常は少しずつ
日常へと変わっていき
季節は春から冬に変わった。

(このまま穏やかに…)と思っていたのだが…
それは突然やってきた。

ピーンポン…。

私達がもう寝ようかと思っていた時に
インターホンが鳴った。

『(誰だろう。こんな時間に…)』

私は玄関の覗き穴からドア前を見る。
すると
そこには
スーツを着たガラの悪そうな人が2人立っていた………。



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