[毎度のシリーズ]
ほぼ毎年再録していますが、今回は新作もあるのでチョイお楽しみに
小学四年生の時に母は私と弟を連れて家を出た。
その朝母は私に仮病を使って休むように指示した。 父が会社に出かけたタイミングで母と二人で玄関へ。
弟は母方の実家に預けてあり、後に合流した。
この玄関での光景は今でも忘れられない、祖母が母に向かって寂しそうに言った
「ねえちゃん(母)本当に行ぐのがい…」
父の度重なるDVに母はもう限界だった。
「おかあさんごめんない、もう我慢でぎね」
時は流れて中学三年生、逃げる様に家を出て長い別居生活、母子家庭の貧しい生活を送っていたが父が入院して昏睡状態になり面会に行き、父の退院後話し合って和解し、正式に離婚して私達は母と暮らしながら時折父や父方の親戚達とも交流をもっていた。
中三の秋の夜、我が家には母と仲の良い叔母(母の姉)が遊びに来ていて酒盛りをしていた。 私も話に加わり皆で楽しく過ごしていた。
私は盛り上がる話題を作ろうと母に
「お父ちゃんとお母ちゃんどっちが好きになったんだい?」
と馬鹿な事を聞いてみた、すると叔母さんが答えた
「お父さんはお母さんが好ぎになったってゆってだよ」
「な〜にゆってんだいっねぇ〜ちゃあ〜んっあっちが頭下げで来たんだ〜
」
と母はむきになって反論してまた皆で大笑いした。 私も調子に乗って
「お父ちゃんはカッコつげで叔母さんに嘘ついだんだばい」
と言うとまた皆で大笑い、と、その瞬間に玄関側のドアが開いて皆ドキッとした。
そこには叔父さん(母の弟)が青白い顔でうつ向いて立っていた。
そして一言、
「…〇〇おさん、し、死んだって」
滅多にしない父の話で盛り上がっている時に父の死を知った。
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