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2021年08月01日19:32

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125-1 詩・短編を書いてみた(第1965回)

121-1「少年と私」
【あらすじ】
1992年の夏
とある田舎の空は
どこまでも青く…。
どこまでも大きく…。
どこまでも綺麗で…。
どこまでも冷たかった。

―――――

初夏
この時期は多くの学生が部活に青春を感じ
勉強に自分の未来をかけたり
恋に心を揺さぶられたりする季節。

高校生というのはそう言うものだと思う。

でも私は…
私は何をしているのだろうか…。

そんな憂鬱を感じながら
学校からの帰り道を歩いていると。
車1台分の幅しかないこの道を
黒いワゴン車が猛スピードで通り過ぎた。

(危ないなぁ…。えっと。ナンバーは「○○な3542」か…)

私は気にしないでおこうかと思ったが
あの車が妙に気になった。
その理由は直感。
でも
私の直感は嫌なモノほど良く当たる。

私はあの車を追いかけた。
しかし当然
車はすぐに見失い。
残っていた轍を頼りに追いかけたが
それも途中で消えていて
道の途中で
追うことが出来なくなった。

何故か
少し悔しさが込み上げる。

(でも、私の勘違いだったから良かった)

その時
ガサゴソと音が鳴った。
道の脇に生えている深い茂みの中からだ。

(何かいるの…?)

私は恐る恐るその茂みを覗く。
すると
黒い袋があり
その中に入っていた何かが動いた。

(動物とか、かな…?)

私は袋を慎重に開ける。
そこに入っていたのは
気を失っている幼稚園児くらいの男の子だった。

『な、なんで…』

予想外の状況に動揺してしまう。

(と、とにかく保護しないと…)

私はその袋から子供を取り出し
腕に抱えて家へ帰った。

ガラガラ…。

スライド式のゆっくりとドアを開ける。

『今日も居ないよね…?』

物音は聞こえない。
それもそのはず。
私の両親は共働きで基本家に居らず
帰ってこないことも当たり前たがら。

誰も居ないことを確認した私は
子供を自分の部屋へ運び
自分のベッドにその子を寝かせた。

見たところ
呼吸はしているし
大きなケガはしていないようだし
気を失っているだけみたい。

『良かった。でも、これからどうしようか…』

人の為にと
子供を家に連れてきたが…。
この状況は明らかに異常だ。
最悪の場合
私が誘拐犯だと思われても仕方がない。

(とにかく、この子が目を覚ましたら警察に行こう)

私はそう決めた。

するとその時。
子供が目を覚ました。

私は『大丈夫?』『痛みとか無い?』と声を掛ける。
しかし
その子は私の顔を見た瞬間
私に強い拒否反応を示した。

それは「嫌だ」というよりも
「恐怖」という言葉が合っているかもしれない。

その子は『ごめんなさい』や『もっと頑張ります』と
頭を手で覆うようにして
許しを乞うように呟いていた。

(この子に一体何が…。とにかく落ち着かせよう)

『だ、大丈夫だよ。私は悪い人じゃないよぉ。アナタを助けたヒーローだよぉ』

しかし
彼は『ごめんなさい』と言うのを止めてくれない。
そりゃそうだ
「悪い人ではない」と言う人間は怪しい。
私もそう言われたら疑う。

(どうしたら…)

その時
お腹が鳴る音が聞こえた。

自分のかと思ったが
どうやら彼のお腹からみたい。

私は思わず『子供、なんだな』と思って笑ってしまった。

『ご飯、食べる?』

そう言うと
彼は一瞬止まる。

そして――

『…いらない』
『でも、お腹は鳴ったよ?』
『…僕じゃない』
『そうなの?』
『そう…』
『じゃあ、これから昼ごはんを食べようと思っていたけど…。いらないってことかな?』
『…いらない』

(強情だなぁ…)

『分かった。じゃあ、私一人で食べてくるね』
『……』

私は一人でキッチンへ向かう。
すると
そのキッチンの上に置き手紙が。


それは親からの手紙で
その手紙にはこう書かれていた。

「突然、なんだけど。私達、長期の仕事が入っちゃって、1週間ほど留守にするから家をお願いね。
お金を置いていくので。そこから出前などでご飯を食べてください。愛する母より」

私は手紙をテーブルに置き
ため息を吐いた。

それは「良かった」という安堵と
「またか」という落胆。

『まぁ、これで、しばらくはバレないわね』

私はそのお金を服のポケットに入れた後
棚からカップ麺を取り出し
それにお湯を注ぐ。

今日はいつもより大きめのタイプにした。

私はお湯を注いだそのカップ麺を持って
自分の部屋へ入る。

彼は体育座りをしながら震えていた。

私は床にカップ麺を置いて。
彼の側で食べ始め
麺をわざと大きくすすりながら
彼を横目で見る。

(あ、見てる…)

次第に彼と目が合う回数が増えていき
私は彼に『食べる?』と言うと
彼は
何度か戸惑いながらも黙ったまま
そのカップ麺を受け取り
余っていた麺とスープを
あっという間に食べ干した。

相当お腹が減っていたのだろう。

『美味しかった?』『…うん』
『それは良かった。で――』

私は本題を切り出す。

『君のことを教えてくれない?』

そう言うと
彼は若干警戒しながらだが
色々と話してくれた……。

彼の名前は「スズキダイチ」小学2年生。
幼稚園児かと思ったが違ったみたい。

『ダイチ君ね。他に何か分かることある?。例えば、住んでいた所とか…』

ダイチ君は首を横に振る。

全く思い出せないという。

(まだ子供だから仕方なくても。これじゃあ…)


『とにかく明日、交番行こうか』

そう言うと
ダイチ君は頷いた…。

翌日
私達は近くの交番に向かった。

『すみませ〜ん』

しかし
警察官の返答はなく。
テーブルに「緊急事態のため不在」と書かれた紙が置かれていた。

(まぁ、田舎だから、たいした用事でもないだろう)

私はしばらく待ってみることにした。
しかし
いつまで経っても警察官は帰ってこなかった。

ダイチ君が暇そうにしているのを見て私は
「待ってても仕方ないか…」と思い
一旦家へ帰ることにした。

自宅へ帰り
私は暇潰しにリビングでテレビの電源をつける。
すると
テレビニュースでは
都市部の地下鉄で科学薬物テロが起きて
現場は大変なことになっていると報道されていた。
人員も各所から集められているらしいく
この辺りも人員要請の対象らしい。

(あ、だから居なかったのか…)

私はダイチ君に視線を移す。
彼は食い入るようにその報道を見ていた。

『どうしたの?』

しかし
ダイチ君は何も言わない。

(刺激が強いから動揺しているのだろうか…?)

私はテレビを消そうとリモコンを持つ。

その時
ダイチ君は『ここ知っている』と言った。

『えっ…。知ってるの?』
『うん。お母さんと買い物に来たもん』
『そうなんだ…。(だったら、ここに行けば何か分かるかも…。でも――)』

状況は最悪だ。
今ここに行っても
警察官にはまともに相手にはされないだろう。

ただ
このまま家にいても
何も起きないだろう。
それどころか
私の親に見つかれば
もっと面倒なことになる予感がする。


私は悩んだ結果…

お金はそれなりにある事と
動かないと何も変わらない!という想いから
ダイチ君を連れて
行ってみることにした。

ダイチ君に行くかどうかを尋ねると
彼は『行く』と言ってくれた。

翌日
私達は日帰りするくらいの荷物をリュックに入れて背負い
電車を乗り継いで都市部へ向かった。

その道中。
ダイチ君を見ると
ほんの僅かに震えていた。
まだ彼の中で
取り除けない何かがあるのだろうか。

(必ず親のもとへ送り届けるからね)

私は心に決めたのだった…。

数時間後
都市部へ到着した私達は
街の状況に驚いた。

1日が経っても現場は慌ただしく動いていて
規制線が張られている。

いまだに状況が落ち着かないみたいだ。

私はダイチ君に尋ねる。

『ねぇ、ダイチ君。ここはテレビで見た場所だけど。何か思い出すことある?』
ダイチ君は少し見回して首を横に振る。

『そっか…』

(じゃあ、どうしようかな…。このまま、ここにいるわけにもいかないし…)

私は何か情報は得られないかと
彼と一緒に周辺を歩いてみることにした。

歩き始めて十数分後。
ダイチ君は
あるビルとビルの間の不気味な路地の前で足を止めた。

『どうしたの?』
『ここ知ってる…』
『知ってるって…。ただの路地だよ。ここ…』
『でも、通ったことある気がする』

私は路地の奥に視線を向ける。

(見るからに、人が通るような雰囲気ではないけど…)

私はもう一度ダイチ君を見る。
この路地を真っ直ぐに視線を向けているダイチ君を見て
勇気を出して進むことにした。

路地はジメジメとしていて湿気臭い。
ゴミも置いてあるし
ネズミくらいしか通らない道だろう。

私はダイチ君に注意を向けながら
さらに奥へと進む。
すると
私達の視線の先に建物の裏口のような
怪しげな鉄で出来たドアが現れた。

ダイチ君はそのドアを知っているという。

私はそのドアを音をたてないように慎重に開ける。

ドアの先は地下へと続く階段だった。

私は生唾を1回呑み込み
ダイチ君の手を握りながら足を前へ動かす。

一歩一歩前へ進み。
その度に足音が階段に響いた。

階段を降りると。
一直線の通路と
その通路に沿うように幾つかのドアがあった。
私は一番近かったドアを慎重に開けた。

その部屋には
まるで研究施設のような設備や資材があって
ここで何かを研究していたようだ。

(なんで、こんな所で…?。しかも、ダイチ君はどうして、ここを知っているの…)

幸いここには人がいないので
少し調べられるみたいだが…。

その時。
ダイチ君が『頭が痛い』と言って
私の袖を引っ張る。

ここには何かあると思っているだけど。
ダイチ君がこれだと
一度外に出た方がいいのかもしれない。
私は外に出ようと踵を返す。

しかしその時
私達が入ってきたドアが開く音が鳴った。

(誰かが来た!!)

私はすぐにダイチ君の手を掴み
通路の奥へと進む。

(どこかに隠れる場所は…)

私は通路の一番奥のドアを開ける。
その部屋は真っ暗だったが
ここしかないと思い
私はダイチ君と一緒に部屋に隠れた。

それから少しして
誰かが通路を歩く音が聞こえてきた。

ソイツはどこかの部屋に入り
大きな音をたてながら
何かをしている。

(物とかをを探しているのだろうか?。とにかく、物音はたてないようにしないと…)

数分後。
物音が止みソイツが部屋から出て
地上へ向かう階段を登り始めた。

(良かった…)

しかしその時
ダイチ君が頭痛の痛みで声が出てしまった。


続く―――

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