mixiユーザー(id:31691303)

2021年07月12日12:32

50 view

123-1 詩・短編を書いてみた(第1962回)


118-14-1「満月を滴る涙」
【あらすじ】
ミカエルさんと城下町を歩いていた日。
道端で占いをしていた
ある魔術師から呼び止められ
こんな話を聞いた。

魔界が今の形になる前。
魔王城から離れた場所に
満月の意味の名を持つ「ミリアロット」と呼ばれた街があった。

その街は
豊かな資源や土地に恵まれ
当時はとても素敵な街として有名だった。
またその街には
王族の女王が治めており
女王には愛した鍛冶屋の婚約者もいて
民からも愛されていた。

しかし
街はある日を境に衰退していく。

これは噂だが。
王族が巨大な怪物を召喚し
満月の綺麗な日に
突如として街が消えたという。

何故そのようになったかは分からない。
記録にも残されてはおらず
現在は廃虚として
その街の姿を残すのみである。

その街の詳しい話は
ミカエルさんも知らないという。

その話を聞いた日の夜。
夜空には
話に聞いたような
綺麗な月が掛かっていた……。

―――――――

満月が綺麗な夜。
僕はなかなか寝付けないでいた。

『夜風に当たろうかな…』

僕は身体起こし
窓を開けて風に触れる。
ふと顔を上げると
綺麗な満月が夜空に張り付いていた。

綺麗な月に心を奪われてしまう。

その時だった。

『(この街の呪いを解いて…)』

突然聞こえてきた何者かの声。

僕は周りを見回す。

しかし
僕以外にいるわけもなく。
僕はその声が誰か分からないまま
急に襲われた睡魔によって
眠ってしまった…。

その眠りの中
僕は夢を見た。

憎悪に満ちた女性が
不気味な笑みを浮かべながら
魔方陣の真ん中で何かを唱えている。

そんな夢を…。


それから少しして。
僕は『兄ちゃん。兄ちゃん…』という
中年男性の声を聞いて目を覚ました。

『ん…?』
『兄ちゃん…。ここで寝るなんて危ないぞ。盗賊に襲われたらどうするんだ。気をつけな』
『あ、ありがとうございます…』
『いいよいいよ。じゃあな』

男性は去っていった…。

僕は周辺を見回す。
多分ここは
どこかの街の路地のようだ。

ただ…。
僕はこの街を知らない…。

もちろん
住んでいる魔界の街の全てを知っている訳ではないのだけど。
明らかに違うんだ。
建物や先程の男性の服装も
何もかもか古く。
まるで自分が時代を間違えているかのようで…。


とりあえず
僕は移動してみることにした。
何か手がかりがあるかもしれないから。
しかし
動いてみたのは良いものの。
迷路のような路地のせいで
自分がどこにいるか分からなくなってしまった。

どうにかなるだろうと
楽観視していた自分自身に呆れる。

(どうしよう…)

僕は『とにかく大通りには出た方がいいだろう』と判断して
また移動してみるが。
状況はさらに悪くなるばかりで…。

(野宿かなぁ…)

そう覚悟した時だった。

『離しなさいよ!』

どこかで女性の声が聞こえた

(たぶん近い…!)

僕はその声のする方へ向かう。

現場に到着して
建物の角からゆっくり覗くと
そこでは小学高学年ぐらいの女の子が
盗賊らしき二人組に襲われていた。

『あなた達!。離しなさいよ!』

その女の子の声を聞いて僕は
勝てる確率は少ないと思ったが。
『助けなきゃ!』と勇気を振り絞り
今いる場所から飛び出した。

すると
その女の子は――。

『離せと言っているだろうが!』

そう言って
一人の盗賊の足を思いっきり踏みつけ
ソイツが怯んだ隙に身体を上手く動かし
相手の背後をとって
体術で一人をボコボコに。
そして
もう一人はその女の子の動きにビビって逃げてしまった。

驚きのあまり呆然と立ち尽くす僕。

すると
彼女が僕に気づく。

『アナタも敵?』

彼女は戦う姿勢をとる。

僕は慌てて
自分が敵ではないことを訴えた。
すると
彼女は何かを確認するように
僕を足元から見て
『そういうこと…』と呟き
警戒を解いてくれた。

(良かった…)

しかし
僕が安堵したのも束の間。
近づいてきた彼女に
僕は魔術で眠らされてしまった…。


また夢を見た。
それは
人が何から逃げ惑うような夢。

僕は恐怖の感情を抱きながら目を覚ました。

『こ、ここは…?』

周りを確認すると
僕はベットに寝かされていて
ここはどこかの家の寝室のよう。

(ダメだ。意識がまとまらない。とにかく逃げよう…)

その時
誰かが部屋に入ってきた。
その人は
僕を眠らせたあの女の子だった。

僕はすぐに防衛体勢をとる。

『あぁ…。そうよね。私が眠らせたから警戒するわよね…』

彼女はゆっくりと僕に近づき
持ってきた食べ物を
小さなテーブルに置く。
そして
大人の雰囲気を漂わせながら話し始めた。

『手荒な真似してゴメンね。あの時は急いでいたし、まさか成功しているとは思わなかったからさ――』

(成功…?)

『あ、これ食べて。精力が付くから』

彼女はそう言って
器に入ったお粥のような食べ物を僕に渡した。

『これは…?』
『パティよ。栄養を取るのにはこれが一番なの』

僕は毒が入っていないかと警戒したが。
空腹に耐えられず1口食べてしまった。

『美味しい…』

僕はパティを
あっという間に平らげた。
それを見て彼女は――

『美味しかった?』
『はい…』
『それなら良かった』

彼女は満足げに食器を持って
部屋から出ていった。

(何だろうか…。彼女に警戒することが間違っているような…)

そう思っていると。
食器を片付けた彼女が戻ってきた。

『体調はどう?。落ち着いた?』
『はい…』
『良かった。あ、そうそう。私の名前は「サリー」。この街で魔術の研究をしている普通の魔術師よ。宜しくね』
『あ、はい…』

僕はサリーと握手をした。

『さて、軽く自己紹介も終わったところで…。単刀直入に聞くのだけど――』

彼女の表情が変わる。

『アナタ、この時代の人じゃないでしょ?』
『(…!?)。言っている意味が…分からないんですけど…』
『そのままの意味よ』

何かを知っているかのような彼女に私は――。

『どういうことか…。説明してくれますか?』

彼女は静かに話し始めた。

それは数ヵ月前のこと。
彼女がこの街の王様から
街を守る防御魔術の点検の仕事をしていると
突如
お城を中心にして
街全体に巨大な魔方陣が展開され
街の外との行き来が出来なくなってしまった。

さらに
理由は不明だが…。
魔方陣が展開された日から3日が過ぎると
3日前に時間が戻ってしまうという。
まるで
時間という牢獄に囚われているかのような
摩訶不思議な現象が起きているというのだ。

そして
彼女は僕にこう言った。

『君をこの時代に呼んだのは、私なの…』

僕は一瞬
彼女の言っている言葉が理解できなかった。

(僕を召喚した?。僕を呼んだ?。何の取り柄もない僕を?)

混乱する僕に彼女は
『理解できないわよね…』と言って
僕を地下工房に設置した魔方陣を見せてくれた。

細かいことは分からないが
丁寧に緻密に作られた事は分かる。

サリーが言うには
この魔方陣は召喚術式で。
"代償"さえ払えば
質量の大きな物を除けば
時間の障害も越えて
何かを召喚できるという。

それを聞いて僕は
代償に何を払ったのかを聞くと
彼女は真っ直ぐな目を僕に向けて『時間です』と言った。

彼女は
時間を戻されて子供の姿になるのと引き換えに、僕を召喚したのだという…。

しかし
僕は申し訳ないと思った。

何故なら
今の僕にはこの問題を解決できる力は
持ち合わせていないと思うからだ。

僕はその考えをマリーに伝える。
すると彼女は『それは想定済みです』と言った

どういうことかと言うと。
この魔方陣は最適者を呼ぶ為のツールで
対象者の選択は出来ないらしい。
なので
どんな人が来ても良いように
準備をしていたという。

『――ということで特訓をしましょう』『と、特訓?』
『魔術の特訓です。アナタを自分の身を守れるくらいには鍛えてあげます』
『で、でも…――』

僕は過去に「魔力がない」と
言われたことを話した。
するとマリーは――。

『だから何ですか?。少なくとも、アナタがここに喚ばれたということには、何かしらの意味があるはずです。私はそれに賭けることにしたんです』
『マリーさん…』

彼女の想いは本物だろう。

この世界が何なのかはまだ分からないが
今はとにかくやってみるしかない。

『分かりました。出来る限り頑張ります』
『ありがとう!!』

こうして
ここでの生活が始まった。

僕は毎日
魔術の特訓しながら
住民やマリーの仕事仲間から情報を集めた。
そして
3日後に時間が戻る経験を何度もした。

また
そのような時間を過ごしながら
住民達に聞き取りを行い
分かった事がある。

それは「時間が戻っている」と認識しているのは
僕とサリーだけということ。
僕達以外の人は
言葉に出来ない違和感は感じているようだが
時間が戻っているとは知らずに生活していた。
そして
その聞き取りの中で
皆が総じて言っていたのは
「お城が赤く光った」という目撃情報。

どうして赤く光っていたのかは分からなかったが。
この状況を作った何かしらの原因ではあると思う。
それに
マリーが言うには
仕事でお城を調査した際に
入ってはいけない地下室があったらしい。

その情報が確かなら間違いないだろう。

僕はマリーに『お城に入りたい』と言った。
しかし
それは難しいという。

彼女が言うには
いくら王様から仕事を与えられていても
お城に入るにはその度に許可が必要で
何か理由がなくては厳しいらしい。

(どうしたら…)

その時。
部屋の窓から赤い光が射し込み
部屋が赤く染まる。
サリーさんと共に外を見ると
お城が赤く輝いていて
街の人の動きも止まっていた。

明らかに
今までとは違う時間の流れが起きている。

するとマリーが――

『ねぇ、あれは何かしら…?』

彼女の指差した先を見ると…。
そこには
明らかに普通の存在でない城の兵士らしき人が
綺麗な列になり
止まっている住民をすり抜けながら
こちら側に向かって歩いている。

直感で危険を感じた僕は
『すぐに、ここから逃げよう』と言い
僕達は簡単に荷物をまとめて
裏口から脱出した。
それから少しして。
あの兵士らは
僕達がいた家へ入り込み襲撃を始めた。

僕達は少し離れた場所から
それを見て安堵のため息を吐いた。

(逃げて良かった…)
しかしもう戻れない。
このような攻撃を仕掛けてきたと言うことは
敵も僕達の事を見つけているということだろう。

(さて…)

僕とマリーは赤く染まるお城を見て
そこへ向かう覚悟を決めるのだった………



7 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する