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2021年06月19日22:32

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122 詩・短編を書いてみた(第1960回)

116-13-1「白の国」
【あらすじ】
ある日のこと。
とある国から式典参列に関する手紙が
魔王様宛で届いた。

その国の名前は「アビレル」
通称「白の国」と言われている。

何故この国が「白の国」と言われているのかというと。
この街は
昔から「白」が神聖な色とされ
街全体が白色に染められているからだという。

女王はもちろん
街に住む人の肌も白色が多く。
そうじゃない人は化粧をして
肌を白くしているという。

この伝統を守るために
この国の女王が
様々なルールを設けているというから驚きだ。

ちなみに
さっきから「国」と名乗っているが
魔王国から独立しているわけではなく。
特別自治制度を採用しているだけなので
正確に言えば「独立国」ではなく
「地方都市」のようなモノである。

話を戻そう。
その式典について
一通りの説明を受けた僕は
魔王様が来る前に
僕とミカエルさんの二人で
事前に「白の国」を治める女王へ
挨拶しておく事になった。

魔王様の跡継ぎの顔見せをしたいらしい。

こうして
僕達は身支度を整え「白の国」へ出発したのだった…。

――――


『ここが白の国か…』


話に聞いていた通り。
建物はもちろん
お城など全てが真っ白に染められていて
アビレルの歴史を強く認識させられる。

『では、王子。行きましょうか』
『うん』

僕はミカエルさんと一緒に
アビレルの女王がいる城の城門へ向かう。
到着した僕達は
アビレル城の警備兵に用件を伝え
少ししてから女王への謁見が許可された。
城内へ入ると
壁から床に至るまで内装も真っ白で。
早く慣れないと
自分の感覚が麻痺してしまいそうなほど
文化が徹底されていることに驚く。

僕は必死にその違和感に耐えながら王室へ向かう。
そして
王室の扉の前に立つ警備兵が
僕達の到着を大声で伝え
扉が開けられた。

僕はミカエルさんから教えてもらった通りに
謁見の手順を踏み
女王らを見ないようにしながら膝をついた。

『顔を上げよ』

女王の綺麗な声に促され
僕は顔を上げる。

女王の顔を見て
僕は思わず息を飲んだ。

何という美しさだろう…。
まるで白色の中に
人を魅了する違う色があるような…。

例えとして伝わらないかもだけど
そんな感じがした。

僕が女王の美しさに言葉を失っていると。
ミカエルさんが慣れた感じで
女王とそのお付きの人と会話を始める。

ミカエルさんは招いてくれた感謝を伝えた後
僕達の自己紹介をして。
女王からは労いの言葉と
魔王様が来る間は
城内にある客間の使用許可を頂いた。

僕達は再び感謝を伝え
王室を後にしたのだった。


僕達は城のメイド達の案内で
女王から与えられた部屋へ入り
移動の疲れを取ることにした。

豪華な設備に身体の疲れを取る僕達。

そのような時間を過ごしていた時だった。
僕は何気なく視線を窓の外に向けると
そこにはアビレルに住む子供達が遊んでいた。

子供達はとても無邪気で可愛い。
しかし
それと同時に彼らの顔を見て違和感を感じた。

その違和感は何故か女王にまで繋がった。
あの美しさに心を奪われてた事と
女王であることに疑問すら感じてはいなかったが
ここの住民と女王を比較すて思い返してみたら
彼女の肌は少しくすんでいた気がする。

(まさか…。女王の肌は…)

僕はミカエルさんに尋ねてみた。
ミカエルさんは『それは、ありえない』と言う。

何故なら
アビレルの女王は代々
白い肌で産まれてくることが当たり前で。
それ以外の肌を持った人は今まで存在しなかった。
仮に存在しても
王位継承者から外れた上に
王族としても外れ
一般市民として生きなければならない
というルールらしい。

『そんな、しきたりが…』

僕は驚いたが
だからと言って
女王への違和感が無くなったわけではない。

(調べた方が良いのかな…)

その時
ミカエルさんにこう釘を刺された。

『王子。気がつくことはよろしいですが、余計なことにまで首を突っ込むと、我々との問題にまで発展します。どうか我慢を…』

真剣な表情で言うミカエルさんに
僕は『分かりました』と頷くしかなかった。

それから僕達は
この部屋で過ごして時間を潰していたのだが。
その途中
僕はトイレがしたくなり
ミカエルさんにその場所を聞いて
部屋を出た。

『えっと…。トイレは――。ん?』

トイレを探して
廊下を歩いていると…。
女王がメイドを付けず
周りをキョロキョロとしながら
一人で歩いていた。

(明らかに怪しい…)

僕はミカエルさんの忠告を無視して
女王の後を追いかけた。

女王は廊下の角にある
メイドさんしか使わないような部屋へ入っていった。

(なんで、あの部屋に女王が?)

僕は気づかれないようにドアに近づき。
不用心に開いていたドアの隙間から
その中を覗いた。
すると
部屋の中では女王が服を着替えている所だった。

僕はすぐに目を背ける。
しかし
まさに芸術作品のように美しい女王の姿は
一瞬で僕の心に焼き付き
『また見たい』と言う衝動に駆られ
女王の着替えを見てしまう。

そんな僕だったが
あることに気づいた。
服を脱いだ女王の肌が
一部を除いて「褐色」だったのだ。

(女王の肌が褐色…。確か、ミカエルさんは『あり得ない』って…)

僕は直感で『この事は見なかったことにした方が良い』と思い
ここから離れようとした。
その瞬間――

『何をしていらっしゃるのです?』

驚き振り向くと
謁見した時に
女王の隣に立っていた人が僕の背後にいた。

『ここで何をしていらっしゃるのですか?と聞いているんです』

とんどもない威圧感だ…。
言葉が出ない。

すると女王が――

『リア、そこにいるの?。ちょっと手伝ってほしいの。背中のボタンに手が届かなくて――』

女王がドアを開ける。

『あ…』
『えっ…』

女王に見つかってしまったのだった。


『えっ。ど、どうしてアナタが…!?』
『王よ。ひとまず中へ』

リアさんは
女王と一緒に僕を部屋の中へ押し込み。そして
逃げないようにロープで僕を縛ったあと
女王とリアさんの二人が
何かを話し合ってい始めた。

恐らく
僕と今後の対応についてだろう。

僕はリアさんに言う。

『あの…。この事は誰にも話しませんから、ほどいて頂けませんか?』

それを聞いた
リアさんは僕を鋭い眼光で睨む。

『そんなの信じられるわけないでしょ』『でも、僕…。皆と同じ魔族だし…』
『皆と同じ…?。アナタ、我々の事を何も知らないのね』
『ど、どういうことですか…?』

リアさんは教えてくれた。

話は魔王国の統合統治前に遡る…。

かつて
アビレルは死の土地と言われ
作物は育たず
生き物が暮らしていくには
かなり過酷な土地で民は疲弊していったという。

当時の国王は
魔王様へ状況を報告をしたが
当時の魔王は全く動いてくれず
『もう終わりだ』と国王が覚悟した。
その時
突如
白い肌をした人が
アビレルにやってきた。
彼に関わることの記録は
ほとんど残されていないが。

彼は
魔術が使えるわけのないのに
まるで魔法を使っているような知恵と知識で
この荒れた土地を開拓し
生き物が住める土地に変えてしまったのだ。

その奇跡に国王は彼に多大なる感謝を伝え
彼を英雄として称えた。

しかし
その奇跡を聞いた魔王様は
そのアビレルの救世主を
危険人物と判断して処刑したという。

危険人物とした理由は分からない。

しかし
アビレルの人達が抱えた
その悲しみは相当なもので。
いつしか悲しみは魔王への復讐心に変わり
アビレルの人達と魔王軍との内戦が起きてしまった。

しかし
魔王軍との戦力差は圧倒的。
アビレルに勝ち目はない。

誰もがそう思ったのだが…。
アビレル市民の復讐心は想像するよりも大きく。
驚く事に
魔王城をあと一歩で落城させるぐらいにまで攻め込んだのだ。
魔王はこの結果を重く考え
アビレルへの謝罪と和平条約を結び。
今は「不可侵」や「特別な自治」という形で約束が残っている。

『――という歴史があるの』

僕はリアさんから
アビレルの歴史を知り
何も言えなかった。
(そのような過去があれば、僕を信じないのは当然だろう。
でも、このままだと大変なことに…)

その時だった。

『王子?。どこに行かれましたか?』

(ミカエルさんの声…!)

慌てる女王とリアさん。
僕は二人にある提案した。

僕が外に出て
ミカエルさんを遠ざけるから
縄をほどいてほしいと。
リアさんは当然
逃げる口実ではないかと疑ったが
僕は『今は、女王が見つからない事が先決です!』と言うと
リアさんは渋々その提案を受け入れてくれた。

縄を解かれた僕は
すぐにミカエルさんのもとへ向かい
心配していた彼に『後で部屋に戻る』と伝えて
あの部屋から離れさせた。

僕は息を吐いて部屋へと戻り
そのドアを開けると
女王は肌が見えない新しい服に着替えていた。

どうやら上手くいったみたい。

(良かった…)

安心した僕を見て
リアさんが僕に軽く頭を下げた。

『女王を助けてくださり、ありがとうございました。そして、先程の非礼を詫びさせ頂きます』
『あ、頭を上げてください…!。疑いを持たせてしまった私達が悪いんですから』

僕とリアさんはお互いに頭を下げ合う。
その光景を見て
女王が笑みを浮かべ
それにつられて
僕とリアさんも笑った。

和やかな雰囲気が生まれ
自分の緊張が緩んだのか。
僕は『聞いてはいけないかな?』と思いながら
あることを尋ねた。

何故
女王様が褐色の肌をなの?と…。

その質問に
女王とリアさんは顔を曇らせる。
しかし
「僕になら」と話してくれた。

王家の家系は元来
白い肌を持って誕生する。
彼女らの家系図を見ても
白い肌以外の人は生まれてきていないのだが。
女王は何故か突然変異により
褐色の肌の状態で
生まれてきてしまったのだ。

これは王家を揺るがす大問題。

そう思った彼女の母親は
褐色の肌が気づかれて
王家を出されないように
彼女を匿うことに決めた。
そして
その事実を信頼している
リアさんを含む
ごく一部の人にだけに伝え
母親は短い生涯を終えたという。

その後
残された女王とリアさん達は
この事実をひたすらに隠して今に至る。
様々な人の目に怯えながら…。


「知らなかった」。
そのような言葉で片付けてはいけない。
聞いてしまったからには
責任を持たなければと僕は思った。

その話を聞いた後
僕とリアさん達はそれぞれの場所へ戻りった
僕が部屋に戻ると
険しい顔をしたミカエルさんがいた。
僕はてっきり
出歩いたことに怒っていると思ったが
そうではないみたい。

『ミカエルさん。どうしたの?』
『実は先程、魔王様を狙う人達がいるとの連絡がありまして。これから調査を行おうかと思っていた所なんです』
『えっ。じゃあ、僕は何かした方が良いのかな?』
『いえ。王子はここで、大人しくして頂ければ助かります』
『分かった…。気を付けてね』
『ご心配ありがとうございます』

ミカエルさんはそう言って
調査に向かった。

何か胸騒ぎがする。

僕はそう思わずにはいられなかった…。

続く―――

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