七年目のご挨拶

そういえば亀有駅前のマンションから現在の住まいに越してきて何年経つのかと思ってアシスタントのイゴールさんに聞くと「もう５年くらい経ちますか？」と言うので調べると平成26年・2014年からもう７年も経っているのでとても驚いた。

何故それを調べる気になったのかというと、お昼時に庭の草木に水をあげていたら裏のお宅の奥さんが僕の敷地に入り込んだ庭木の枝を切っているのに気付き「こちらのレンギョウの枝も伸びているので気にしないでいいですよ。」と挨拶すると枝葉の陰から誰かの声が聴こえたとみえてちょっと驚かれていたがすぐに僕が彼女の自宅の裏の人物だと分かってニコニコと笑顔になった。

そして枝を切っている植物に生る実が金柑の様に見えるけど少し大きめなので「これは金柑ではないのですか？」と聞くと「シークワーサーなんですよ。」と言うので「珍しいですね。」と応えた。

そして、家では使わないので良かったら好きなだけ採って下さいと言うので嬉しくなって「僕はジャムを作るのが趣味なのでこのシークワーサーでジャムやマーマレードを作りたいですね。」と言うと更に喜んでくれた。

早速自宅に戻り前日に作った梅ジャムと家にあった赤紫蘇の梅漬けを抱えて彼女の処に行くと「自家製のジャムを作られるなんて丁寧な暮らしをされててとっても憧れます。」と言うので趣味等の立ち話が弾んで「これから出かけるけど後で、育てている：〜メダカが増えてしまったのを其方に伺うのでもし良ければ貰って頂けますか？」と言うので「僕のとこもメダカを火鉢桶で飼っているので是非下さい。」と応えてお互いに笑いあった。

それから僕がジャムを入れてきたビニール袋に２人で沢山のシークワーサーを摘んでそれを有り難く頂いて自宅に帰ってきた。

早速、今頂いてきたシークワーサーのマーマレードを作りながら味見をすると酸味がとても爽やかな逸品になりそうなのでとても嬉しくなった。

暫くしたらピンポンが鳴ったのでアレッと思ったら早速先程の奥さんが玄関に来ていた。

外に出るとアルミのボールにメダカを入れて彼女が立っていたのでイゴールさんを呼んで家のメダカの鉢に移して貰った。

彼女に「今、シークワーサーのジャムが出来上がりそうなので家に入ってコーヒーでも飲んで待っていて下さい。」と言うと「もう作られたんですか」と驚かれた。

そしてチョット煮込んで出来上がったジャムを煮沸した瓶に移しながら彼女に皿に乗せたスライスしたパンとまだ温かなジャムとイゴールさんにコーヒーを淹れさせて味見をさせた。

「美味しい〜」と言い「実はあのシークワーサーの木は10年くらい前に亡くなった主人が植えたものだけど私はありがたくも何とも思わずちっとも面倒をみなくて今、こんなに美味しいものだと初めて知りました。」と言うので「良かったですね。」と応えた。

そして「さっき調べたら僕が亀有のマンションからここに越してきてもう７年も経つのに貴方と話すのは引越しの挨拶に伺った時以来で自分でも驚いています。」と言うと「もうそんなになりますか。」と彼女は感慨深げに頷いていた。

ラムちゃんの話になったので三階に行くとベッドの布団にカマクラの様に入り込んでいたのを引き出して抱っこして一階に降りて彼女に見せると「可愛い〜💕」と喜んだ。

暫く彼女と僕のお互いの趣味や近況等沢山の話しが弾み旦那さんが亡くなってから彼女はそのショックで引きこもりがちになってとても落ち込んだこともあったそうだが「帰ったら主人の仏壇にこのジャムを挙げ今日のお話しをするけど泣いちゃうと思う。」と言われた。

僕は本当にいいことをしたと思った。

そして夜にイゴールさんを玄関から送って外に出ると自宅の並びの３軒先の家の前で２匹の猫がリードを付けて遊んでいるのを見て思わず駆け寄ってそのご主人の女性２人に挨拶した。

彼女達は親子で僕の処のラムちゃんをよくベランダ越しに見ていて「大人しくて綺麗な猫ですね〜。」と言われ先程の裏の奥さんも僕の家のお風呂の窓に佇むラムちゃんを観て「綺麗で可愛い猫だなあって思っています。」と言うので今日はラムちゃんはモテモテだなあと思った

２匹の猫は人見知りなのだそうだが特に臆病な茶トラの子が僕のとこに寄ってきたので🤱抱っこすると素直にされたままゴロゴロ言うので２人は驚いていた。

僕はいつの間にか立派な猫使いになっていたのだ。

そして僕は「此処に越して来てもう７年も経ちますがお二人とこうして話すのは初めてですね。」と言うとお母様が「毎日のように顔を観ているのに、あら本当にそうですねえ。」と応えた。

夜、寝る時に「今日は此処に越して来て初めての出会いが二件も有ったなあ〜」と感慨深い気持ちになって台所に降りて飲み物を作りながら日めくりカレンダーを見ると『すべてのものは縁によって生滅する』とあったので思わず頷いたのだった。