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2021年06月05日14:32

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120 詩・短編を書いてみた(第1958回)

114「何でもない夜」
【あらすじ】

どうしてだろう…。
何故か今日は眠れない。
音楽を聞いたり
羊を数えたり
ネットで焚き火を見てもダメみたいだ。

寝られない理由を考えてみたけれど
思い当たる事は見つからない。

だったら
いっそのこと起きていようか…。

―――

僕はスマホやゲームなどで時間を潰すことにした。
でも
夜の時間は昼よりも長いみたいで
なかなか時間が経たない。

あと少しで夜が開けるみたいだけど
久々に外に出てみようか…。

こんな気持ちはいつぶりだろう。

僕は身支度を整え
玄関のドアを
音をたてないように慎重に開けて外に出た。

外は満点とは言わないが
綺麗な星が夜空を覆っていて
俯いていた気持ちが上を向いてくれる。

キラキラと光る星々には
1つ1つに命を感じさせる輝きがあって
どれも目を離したくはないし
全て心に焼きつけたくなる。

僕は夜空を見ながら歩き出す。

ふと
他の星よりも
綺麗に輝く星に目を奪われた。

あれは冬の大三角だろうか?

星の知識には疎いので
確かな事は言えないけど。
そうだったら良いのにと思う。
だって
あの輝きは
自分には無い輝きだったから。

あ、いけない…。
また自分と何かを比較してしまう
私の悪い癖が出てしまった。

どうして
いつも僕は誰かと比較してしまうのだろう…。
それは自分の荒さを露呈し
悲しい気持ちになるだけだと言うのに…。

止めよう止めよう。
そんな無駄なことは。

僕は歩き続ける。
思うまま気の向くまま。

すると――

あれは…?

見つけたのは駄菓子屋。
ここは
僕が子供の頃に通っていた場所で
店主のおばあちゃんには
良くしてもらっていた。
例えば
くじ引きでハズレを引いてしまっても
可哀想だからとクジの景品を渡してくれたり…。
駄菓子を買うときにも10円分多く渡してくれたり…。

(また行こうかぁ…)

ふと僕はシャッターに視線を移す。
そこには「閉店しました」と書かれた貼り紙があった。

そうか…。
もうそんなに時間が経ったんだ…。

もう一度会いたかったと
胸を締め付けられる想いがした。

また僕は宛もなく歩き出す。

すると
次に見えてきたのは中学校だった。

ここは僕が通っていた中学校なのだが
その外観は僕の知っているモノと
まるで変わっており
自分がどれだけ逃げてきたのかを認識させられる。

そう感じた時
ある事を思い出した。
昔に学校の敷地内へ侵入出来る抜け穴があったことを。

僕は記憶を頼りに探し
フェンスに空いた小さい穴を見つけた。
しかし
その穴は小さく入れるかどうか。

(……まぁ、いいか)

僕は身体をねじ込む。
ギリギリアウトだが通ることが出来た。

校庭を歩く僕。
夜空の月はだいぶ傾き
反対側の空は少し明るくなっていた。

もう終わろうとしているのか…。


僕は目を細めて夜空を見る。
まだ消えていない星が1つ見えた。
その星はまだ輝く事を止めていない。
最後の最後まで
生きようとしているみたいだった…。

学校の敷地を出た僕は
また目的もなく歩き出す。

建物と建物の間から
朝日が射し込む。

夜明けだ…。

いつもなら怖くてしかたがない朝日。
でも
不思議と
今はその朝日を向き合えている。

自分でも分からないが
前向きになれるような事が
あったのかもしれない…。


僕はまた歩き出す。
今度は目的がある。

最近出来たというビルを観に行きたいのだ。

僕は少し時間をかけて歩き
目的のビルにたどり着く。
そのビルはこの町で一番大きく
その圧巻さに思わず
『大きいなぁ…』と呟いた。

その瞬間
数羽のハトが飛び立び
僕はビルの高さにまで飛び上がるハトを
ずっと目で追いかけた。

どこまでも飛んでいけ。

そう想いながら……。

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