皇室の問題はデリケートであり、軽々に触れるのは好ましくないが、触れずにはいられなかった。個人的には女系天皇容認派には頭を冷やせと言いたい。
この有識者会合に出席した4人の憲法の専門家の内、百地章・国士舘大特任教授は女性天皇および女系天皇に反対の立場を取ったが、宍戸常寿・東大大学院教授、岡部喜代子・元最高裁判事、大石真・京大名誉教授の3名が女系天皇を容認する立場を取ったとされる。その理由は『皇位継承の安定性にかなう』との事だ。
皇位継承の安定性と言うなら、まずは旧宮家の復帰、あるいは旧宮家から男性を現宮家に養子に出すなど男系維持の方策を議論するのが先ではないか。
そもそも天皇の一族は男系で続いてきた。記録によれば2600年も続いているとの事だが、明治天皇の玄孫で有名な作家の竹田恒泰氏によれば、最低でも2000年以上は続いているらしい。まさに宗教的とも言える伝統、文化だ。
かつて、そこら辺の農民でさえ、御門様、天子様の存在も、その意義も理解していたように、この天皇という伝統、文化は日本国民に尊敬の念を持って脈々と現代まで受け継がれている。その重みは大変なものだと容易に理解できるが、それを現皇族が減少しているからという理由で、もう止めましょう、というのはあまりにも暴論だろう。
なぜなら減少の理由は、不運としか言い様がないのだから。大正天皇には昭和天皇、秩父宮殿下、高松宮殿下、三笠宮殿下の4人の男児が生まれたが、秩父宮殿下には戦争や親王妃勢津子様のご病気もあって子が生まれず、高松宮殿下も子に恵まれなかった。
一方、三笠宮殿下には�鄂凌堂ε族次�桂宮宜仁親王殿下、高円宮憲仁親王殿下の男児が生まれた。しかし、�鄂凌堂ε族爾砲禄�児が2人、桂宮宜仁親王殿下は心臓の病気で結婚せず、高円宮憲仁親王殿下には女児が3人と、一人くらい男児が居ても良さそうな印象はあるが残念ながら男児は生まれず、男系断絶となった。
そして残るは昭和天皇である。こちらも第一子から続けて4人の女児が生まれている。普通に考えたら頭を抱えるほどの確率だが、その後、第五子として現上皇陛下である継宮明仁親王殿下、第六子に義宮正仁親王殿下が誕生した。最終的に、昭和天皇陛下には7人の子をもうけたが、男子は2名のみであった。7人中2名でも少ないが、いとこも含めれば12人中男子は2人である。確率的には非常に低く、不運としか言い様がない。
その不運は次世代でも続き、義宮正仁親王殿下と正仁親王妃華子様の間にも子供は生まれなかった。辛うじて繋いだ男系は継宮明仁親王殿下（上皇陛下）の双肩にかかったが、現上皇后である美智子様と結婚した翌年に今上天皇である浩宮徳仁親王殿下が誕生し、その後、秋篠宮文仁親王殿下、黒田清子様が誕生した。ここでも辛うじて男系は繋がれた。
こうして見ると男児の確率も低いが、ご病気や子に恵まれないケースも多く、現在でも綱渡り状態である。今上天皇は女児が1人、秋篠宮文仁親王殿下には女児が2人、男児が1人（悠仁親王殿下）、黒田清子様は子に恵まれておらず、男系の維持は悠仁親王殿下に頼るしかない現状だ。
個人的には、佳子内親王殿下誕生後、浩宮徳仁親王殿下（今上天皇）に子が誕生していない事を理由とした秋篠宮文仁親王殿下、文仁親王妃紀子様に対するバッシングが許せない。男児が生まれる保証はないのにもかかわらず、まだ一人も生まれていないのだからそれに配慮しろと言い、その後、秋篠宮文仁親王殿下は子をもうけなかった。しかし、浩宮徳仁親王殿下（今上天皇）に男児が生まれず男系危機と分かるや、どうかお世継ぎをと懇願する。人間とはかくも勝手なものなのか。
このように現在の皇室は悠仁親王殿下によって本当に辛うじて紡がれているが、ハッキリ言って危機的状況どころの話ではない。末期状態にも等しいのである。ただ、歴史上、同様の事は何度も起こっており、何代も遡って男系を探し、天皇に即位してもらった事もあったという。ならば、まずは先人にならい、同じ様に対処するのが当然の考えではないか。
例えば、旧皇族の男系男児を現皇族が養子にもらい育ててもいいし、旧皇族に皇籍復帰してもらい、復帰後に生まれた男児を皇位継承者として育ててもいい。竹田氏によれば、現皇族とは違い、旧宮家の一族には男性が多いとの事。養子でも皇籍復帰でも男系を繋ぐ方法は十分にあると考える方が自然だろう。
もちろん、養子にする年齢は低い方がいいし、乳幼児だったら十分に皇位継承者として育てる事ができる。復帰にしても、昨日までサラリーマンだった者が今日から皇族です、皇位継承権がありますというのはさすがに問題だろうから、ある程度の年齢以上は皇籍復帰しても皇位継承権は与えず、次世代以降に皇位継承権を与えれば同じように皇位継承者として恥じない教育はできるだろう。
養子という選択に抵抗がある人もいるだろうが、世の中には星の数ほど養子縁組が行われているし、それでいて親子の縁が簡単に切れるわけでもない。何より2000年以上、連綿と受け継がれてきた男系天皇の維持は、それを容認するほど重いと考える。皇籍離脱した旧宮家は、今でも天皇の一族に恥じない行いを心掛けているという。ならば、その矜持を持って男系天皇の維持に協力できるのではないだろうか。
私は、こうした方策を一切検討する事なく、2000年以上続いてきた男系天皇という伝統と文化を終了する事には反対である。男系男子を続けるのは確率論から見ても難しく、統計学の高橋洋一氏いわく、このままならどんなに頑張ってもあと5代ほどしか続かないらしい。だからこそ、できる手は全て打つべきではないか。最後までできる限りの事をした上で、終わるならともかく、2000年以上続いた伝統と文化が終わる姿を、このまま黙って見届けろというのか。
私には考えられない。例えば、私の地元には建立2000年近い神社があるが、そこの宮司一族が居なくなるから神社潰しますと言われたら猛反対するだろう。宮司を引き受けてくれる人を探すなど、神社を存続させるあらゆる方法を試すと思う。
また、伊勢神宮や清水寺など誰もが知る神社仏閣を、宮大工が少なくて修繕するのは大変だから全部作り直す、エレベーターなどを付けて利便性を図ると言ったら、伝統と文化を何だと思っているんだと猛反発があるだろう。それなら宮大工の育成に力を入れて、有能な宮大工を継続的に確保できるような解決案は出せると思う。
こうした方策を尽くした上で、万策尽きてどうしようも無くなったら終わりを受け入れるしかないが、それもせずに終わりを待つより自分達の手で終わらせるという女系天皇容認論は、手段と目的が入れ替わるどころの話ではない。男系を紡ぐ皇室の皇位継承の安定という目的を、単に皇室を継続させるという目的に入れ替えているに過ぎず、マスメディアによる詐欺や欺瞞のように感じる人が居ても当然ではないだろうか。
現在の皇室については、まだできる事があるだろう。愛子内親王殿下を祖とする女系天皇を創設する前に、2000年以上続いた伝統と文化の重みを謙虚に受け止め、その伝統と文化を守るために十分な議論を重ね、それに必要な手段を余す事なく試す努力が重要だ。
最後に、私個人は先人にならえと言ったように、女性天皇は容認しても構わないと考える。男系危機の状況下である現在、愛子内親王殿下が天皇に即位し、その間、天皇の重圧から離れた悠仁親王殿下に世継ぎをお願いするとともに、旧宮家を皇籍復帰させ、幼い頃から皇室の伝統と文化を教え込んだ皇族を育てる事が最善の策だろう。もちろん、素人考えなのは理解している。ただ、女系天皇という皇室の名を借りた新たな伝統と文化を始めるのは解決策にならないと断言する。
どうもマスメディアやコメンテーターなどは愛子内親王殿下を天皇にしたいらしいが、それなら仮に女性天皇は認めるが、女系天皇は認めないと言ったらどうなるだろう。私は、今の女系天皇賛成派には女性天皇だけを容認する人も含まれていると思う。そこを曖昧にしたまま世論を形成し、議論をせずに皇室を変えようとする動きに見えてならない。
天皇陛下は日本国の象徴である。そこに手を付けるのであれば、まさに国民的な議論が必要であって、一部の有識者やマスコミの偏向報道に踊らされて雰囲気で進めていいわけがない。繰り返すが、天皇陛下は日本国の象徴である。軽く考えてもらっては困る。
■「愛子天皇」論は憲法無視＝皇位継承で百地氏主張
(時事通信社 - 05月10日 21:00)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=4&from=diary&id=6512847
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