妻が来た(ペギラか)

　と言っても見舞いではない。コロナ禍で、入退院時以外の家族の見舞いは原則禁止されている。妻も同じ病院で抗癌剤治療を受けているので、診察に来たついでにちょっとだけ会うことにしたのだ。ボディソープを買うのを忘れていたので、持ってきてもらう目的もあった。
　待ち合いまで杖をついて歩いていくつもりだったが、立ち上がると目眩がしてフラフラする。元々起立神経障碍があって、血圧が低いのだが、透析を始めてからそれが常態化している。トイレに立つのにも目の前がチラチラしてふらつく始末だ。
　これではとても一人で待ち合いまではたどり着けないと、看護師さんに車椅子を用意してもらった。この分だと、退院時も車椅子で移動ということになりそうである。さて、透析に通うのはどうしたらいいものか。血圧を上げる薬もあるんだけど、心臓に負担が掛かるからと止められてるんだよね。

　ここの待ち合いは無駄にだだっ広く、眼もよく見えないから、果たして、妻を見つけられるかと心配だったが全く杞憂だった。待ち合いに入るなり、肩をつつかれたので、何だと思ったら妻だった。
　外が寒かったのか、やや厚着で、もこもこしている。頭はすっかり丸坊主になっているので、いつものニット帽を被っている。それもあってか、全体的に丸っこい。一週間会わないだけでずいぶん丸くなったなあ、と口にしそうになって、まあ、元からか、と思い直した。
　妻の方は、私を見て、開口一番、「痩せた？」。
　「体重８キロくらい落ちたから。浮腫みもだいぶ取れたよ」と言って腕を見せる。もっこりしていた腕の腫れがかなり引いていたので、妻も「ホントだ」と驚いている様子。
　これから会計で、妻の診察自体はもう終わったとのことなので、次の入院について聞くと、どうやら私の退院と入れ違いになるらしい。抗癌剤の投与後は副作用でしばらく身動きができなくなるので、またまた外出が難しくなる。映画もなかなか見られないが、まずは身の回りの生活がなあ。私も寝たきり生活になるし、何もかもヘルパーさんにお願いするわけにもいかないし、頭が痛いところである。
　長話をしていると、連れてきてくれた看護師さんを待たせることになるので、ボディソープを貰うと病室に引き上げることにした。
　妻はモスバーガーで昼飯を食べて帰るとのこと。また濃いもの食べて。お前も糖尿じゃん！ ああ、サムライマック食いてえ(退院しても食えません)。