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2021年02月13日22:17

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105 詩・短編を書いてみた(第1941回)

105「サーファーと夕暮れ」

気分転換にと始めたサーフィンも
1年も続けたら上手くはなる。

今日もサーフィンが終わり
髪や身体を濡らした海水が乾いて
ベタベタとした感覚が煩わしさを感じさせる。

海嫌いの人はこの煩わしさが嫌なのだろう。

でも私は
その煩わしさも含めて
海の魅力だと思う。

塩を含んだ磯の香りを感じる嗅覚。
自分の肌に海水が付着する感覚。
波の飛沫に触れる触覚。
海水を口に含んでしまったときの味覚。
そして

海のさざ波が聞こえる聴覚。

それら全てが自分の持つ感覚を刺激する。
そして
波の「ザザーザザー」という
生き物のように鳴き
押し引きを繰り返し
それに共鳴するかのように
砂が動かされて
まるで砂は海に帰りたがっているかのような光景も
どこか懐かしい。

さすが生命のスタートと言われる海。
それは何もかもが広く深く。
どんな生物でも受け入れてくれるだろう。

多くの人が胸に溜めた不満や悲しみ。
そんな負の感情も全て…。

ただ
その優しさに私は腹が立ってしまう。

全てを受け入れてくれるが故に
全てを受け入れすぎてしまうのだ…。

さざ波が大きな鳴き声を出す。
まるで私を慰めているかのよう。

でも残念だけど。
今の私にそんなお誘いに乗る気持ちはないわ。
逆にアナタをこのサーフィンを使って
乗りこなしてみせる。
それをアナタの悩みにしてあげるわ。

夕陽が地平線と重なる。

それは綺麗で
とてもノスタルジック。

どこかのカップルがこれを見ていたならば
知らず知らずに手を握り
お互いの唇を重ねあっていることでしょう。

海もそんなことをしたいから
これを見せたのかしら?。

でも残念
もうすでに先約がいるの。
……いや正しくは「いた」と言うべきかしら。
もうあの人の手には触ることができないけど。
辛い時。
泣きそうな時。
きっと私の手を握ってくれていると信じているから
あなたのお誘いには乗れないわ。

そんなことより
随分と余裕を見せてくれるじゃないの。
あなた
私がサーファーだって忘れていない?。

私はアナタを乗りこなす女。

次に会ったときは覚悟していなさいよ。
あの人ばりのテクニックで乗りこなしてあげるから。


そんなマンガのような捨て台詞を言って
私は夕暮れに背中を向ける。

自分の体重で沈み込む砂浜の砂。
それに負けないように
倍の力で蹴り返す。

あの人が頂上から見ていた景色には
まだ手は掛からないけど。
いつか必ずたどり着いてみせる……。

そう自分の決意を込めて………。


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