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2021年02月01日10:43

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原発雑考第391号    電力需給逼迫の背景 水素発電とCCSなど

原発雑考第391号の転載です。


2021・ 2・5
発行 田中良明
転載自由
連絡先 豊橋市富士見台二丁目12-8 E-Mail tnk24@tees.jp


電力需給逼迫の背景

 年明けに各地で電力需要が逼迫し、関西電力や四国電力では電力利用率(供給力にたいする需要の比率)が一時99%になったと報道された。直接の理由は厳しい寒波による暖房需要の増加である。異常気象が頻発しているにもかかわらず、電力各社はそれへの備えを怠っていたようだ。
 ただし需給切迫の最大の理由は寒波ではない。最初に需給逼迫が報じられたのは、工場がほとんど操業していない連休中の1月10日、11日の早朝についてだった。運転可能な全電源をフル稼働させてこの時間帯に需給逼迫になったのであれば、工場が本格的に稼働する時刻になれば、電力はまったく足りなくなって大停電が発生したはずだ。しかしそうはならなかった。
 実は、燃料(LNG)が足りなくて、火力発電をフル稼働させることができなかったのである。燃料が足りなかったのは、LNGの輸入先のオーストラリア、マレーシア、カタールなどで生産施設のトラブルが続出して、輸入に支障が出ていたからである。アメリカからのLNG輸送の航路であるパナマ運河で渋滞が発生したことも輸入減少に拍車をかけた。この燃料不足が需給切迫の最大の原因だったのである。
 長期間保存すると気化してしまうLNGは備蓄が難しく、調達先を多様化することで安定調達を目指してきたのだが、上記のような事態が発生して十分な量が確保できなくなったのである。とはいえ、変事があると調達が難しくなるスポット契約が多かったし、コスト削減のために在庫を圧縮していたのではないかという疑念もある。安定調達の意識が低かったことは否めない。
 備蓄が難しいLNGの輸入に依存している電力供給体制の脆弱性が表面化したのである。再エネ発電100%になれば、こういう問題は起きない。再エネ発電は気象条件に左右されるが、そのことを前提に多元的な需給調整システムを構築すれば、需要に供給を合わせるだけという現行の単線的で硬直的な需給調整システムよりも安定性はかえって増すと考えられる。


水素発電とCCS

 温暖化対策が迫られるようになって、エネルギー源として水素が注目されるようになった。燃焼させても水しか出ないので、化石燃料に代わる燃料になるし、電気も作れる(燃料電池)。製鉄業でコークスの代わりに鉄鉱石(酸化鉄)の還元に用いるなど、産業原料としても期待されている。昨年12月に公表された政府の「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」(以下、「2050年戦略」と略記)では、水素発電(水素を燃料とする火力発電。文末に注記あり)が、アンモニア発電とともにカーボンニュートラル時代の新電源として取り上げられている。
 ところで水素は単体ではほとんど存在しない。まとまった量の水素を得るには、ほかのエネルギーを利用して生成するか、ほかのエネルギー源から取り出す必要がある。したがって水素の使用でCO₂が排出されなくても、水素の生成・取り出しの過程でCO₂が排出されておれば、その水素はクリーン(カーボンニュートラル)とはいえない。これは電気とまったく同じである。
 ちなみに現在使われている水素は主として天然ガスから取り出されたもので、取り出し過程でCO₂が発生する。つまりクリーンな水素ではない。太陽光と触媒で水を水素と酸素に分解するという夢の技術もあるが、長年の研究開発努力にもかかわらず、実用化のめどはまったく立っていない。クリーンな水素を得る方法はまだ存在していないのである。
 そこで期待されているのが、化石燃料とりわけ天然ガスから水素を取り出し、その過程で発生するCO₂をCCS(CO₂を回収・貯留する技術)で隔離処理する方法である。これなら得られた水素はクリーンであるといえる。水素発電で使われるのも、こうして化石燃料から取り出される水素である。
 ところでカーボンニュートラル社会では天然ガスを燃やす火力発電もCO₂をCCSを用いて隔離処理することが必須である。それなら、天然ガスを燃やして発電するほうが、 天然ガスから取り出した水素を燃やして発電するよりも簡便で低コストだと考えられる。なぜわざわざ水素発電を行うのか。
 この疑問を解く鍵は、水素の取り出しが日本ではなく、石油・天然ガス産出国で行なわれるところにある(日本はその水素を輸入する)。石油・天然ガス産出国ではこれまでも自噴しなくなった油層・ガス層にCO₂を注入して内部圧を高め、残存する原油・天然ガスを押し出して回収することが行われてきた。また採取が終わった油田・ガス田にCO₂を封入して密閉することは簡単にでき、原油や天然ガスが溜まっていた油層・ガス層は密閉性が高いので、CO₂を注入しても漏出する危険性は低いとも考えられている。
 ただし原油・天然ガス増産が目的の場合は、注入したCO₂が多少漏出しても問題にならないが、カーボンニュートラルのためには漏出は短期的のみならず長期的にもゼロでなければならない。これまではCO₂貯留が目的ではなかったので厳密な測定や監視は行われていないはずで、はたして長期的に漏出ゼロにすること、そしてそのことを異論の余地なく証明することができるかという問題は残されている。
 このような課題はあるが、石油・天然ガス産出国にはこれまでの経験と技術の蓄積、それに天然ガス井の近辺に水素取り出し設備を設ければ、発生したCO₂を輸送コストをほとんどかけずに処理できるなどのコスト面での有利さがある。日本では、特定地質の海底地中にCO₂を封入することになっているが、石油・天然ガス産出国のような陸上での封入に較べて技術的に格段に難しい。しかもその地質は日本海に多く、太平洋側に多いCO₂発生地点からはCO₂を長距離輸送しなければならず、コストもかさむことになる。
 このようなことから、国内でCCSを使って火力発電を行うよりも、石油・天然ガス産出国でCCSを使って水素を取り出し、その水素を輸入して水素発電を行ったほうが、工程の複雑さや水素輸送の困難などのデメリットを考えても有利だ、少なくともあまり不利にはならないと判断されたのである。日本でのCCSは技術的にもコスト的にも自信がないということでもある。
 水素発電はCCS依存で成り立つ電源である。天然ガス火力発電もカーボンニュートラル社会ではCCSに依存しなければ存立しえない。原発は火力発電なしでは存立しえないから、間接的にCCSに依存している。ここでは取り上げなかったアンモニア発電も、アンモニア合成に水素が必要であり、その水素をクリーンにするにはCCSに依存せざるをえない。
 このように「2050年戦略」で取り上げられた電源は、再エネ利用発電を除いてすべてCCS頼みである。そのCCSの実用化は、日本で2050年までに実現される保証はまったくないし、石油・天然ガス産出国でも課題は残されている。他方で、今から準備すれば2050年の電力供給を再エネ発電100%にすることは十分に可能である。原発・火力発電に未練を残す「2050年戦略」はその可能性を奪ってしまうし、そのあげくCCS実用化が期待どおりに進まなかったら、いったいどうなるのか。CCS頼みは危険な賭である。
注記 過剰になった再エネ電力を使って水から水素を取り出して蓄え、必要な時にその水素で発電するという電力蓄蔵法が構想されているが、それは再エネ発電の一形態と見なすべきであって、ここで論じた水素発電とは別物である。


雑 記 帳

 この冬は、メジロ以外の冬鳥が庭にほとんど来ない。家の周辺でもあまり見かけない。留鳥のモズやコゲラを含め、小鳥の数が減っているようで、増えているのは、嫌われ者のムクドリだけだ。近くの万場調整池に浮かぶカモ類の数も異常に少ない。これについては鳥インフルエンザにやられたのだという説があるが、真偽不明である。
人間のインフルエンザはほとんど発生していないらしい。昨年秋にはCOVID-19とインフルエンザの同時流行が警告されていたが、COVID-19感染防止の取り組みが、COVID-19にはあまり効かなかったが、インフルエンザには効いたようだ。私は上記の警告を真に受けて、11月に生まれて初めてインフルエンザワクチンの接種を受けたのに、皮肉な結果になってしまった。
 春になるとCOVID-19ワクチンの接種も始まるそうだ。複数のワクチンが使われるようだが、どれも速成品だから長期的な有効性や安全性が懸念されるのは当然だ。私は日和見で、これらの懸念がそれなりに解消され、かつ、あまり苦労せずに接種を受けられるのなら、受けようと考えている。

万場緑地のネコ 第17話 2年前に万場緑地に現れたときすでに成ネコだったボブ。しっぽが短い茶トラだが、餌を食べにくそうにしていたので動物病院で調べたら、歯肉炎だった。ところが治療してもなかなか治らない。さらに検査したら猫エイズに感染していることが分かった。犬歯以外の歯をすべて抜くのが重症歯肉炎の標準的な治療法で、ボブはその手術を受けたが、エイズが絡んでいるので、それで治るとは限らないらしい。

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