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2021年01月04日20:45

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追悼・福本清三さん/人斬りの鬼が斬られるとき

■“5万回斬られた男”福本清三さん、肺がんのため死去
(ORICON NEWS - 2021年01月04日 17:51)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=54&from=diary&id=6366105

■「5万回斬られた男」福本清三さん死去 水戸黄門他
(日刊スポーツ - 2021年01月04日 18:10)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=8&from=diary&id=6366136

■北大路欣也、“大切な仲間”福本清三さん追悼「別れは信じられません」
(ORICON NEWS - 2021年01月04日 19:35)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=54&from=diary&id=6366246

■寺島進「日本一魅力的な役者さん」福本清三さん悼む
(日刊スポーツ - 2021年01月04日 19:46)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=8&from=diary&id=6366251

■池松壮亮、福本清三さんしのぶ「最高にかっこいい人でした」
(ORICON NEWS - 2021年01月04日 20:56)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=54&from=diary&id=6366305

 一昨日、DVDで『伊賀忍法帖』(1982年)を観返していたばかりだった。
 自宅で、友人たちと一緒に観ていたので、「福本清三さんが五人の妖術僧の中にいるんですよ! 台詞もいっぱいあって!」と熱弁を振るったのだが、反応はイマイチ。いくら「五万回斬られた男」の異名を取っていても、一般人にとっては「名もなきちょい役の人」でしかない。ご本人は「代表作は?」と問われると、屈託なく「ない」と答えられていたそうだが、実際、印象に残る大役は数えるほどしかなかった。その出演作の大半は、出てきた途端に主人公に斬られて退場する噛ませ犬役。画面に三分間も映っていればいい方で、ウルトラマンより出番が短い。クレジットに役名付きで紹介されることもほぼないから、どんなによく見る顔でも、名前を覚えるには至らなかった。
 だから、『伊賀忍法帖』で「虚空坊」という名前付きの役を演じたのが、私が福本さんの名前を覚えた最初である。妖術使いという点では五人の中でも群を抜いた妖しさで、数多あるネクロマンサーの元祖。それも、渡辺典子と美保純の首をすげ替えて生き返らせるというとんでもなさ。エロス満載、グロテスク至上の山田風太郎が描くド変態キャラクターを、実際に体現できる役者さんがいたとは何という奇跡!
 福本さん、ただの凡百の斬られ役の一人なんかじゃねえぞ、と認識を改めるきっかけになった役だった。

 それからは、過去作でも新作でも、字幕に福本さんの名前を見つけると、どこに出ているかを探すのが習慣になった。同じく東映の特撮忍者映画『怪竜大決戦』でも、福本さんの名前を見つけたので、探してみたのだがなかなか見つからない。ウィキペディアに役名が載っていないかと見てみたら、「忍者」とあったので、ようやく見当を付けることができた。最初に松方弘樹のいかずち丸(児雷也)を襲ってやられた忍者が福本さんだったのだ。そりゃ、覆面してるんだもの、よく見て目元で確認しないと分かんないよ。
 福本さんは、こういう顔を出さない役や、ロングショットのその他大勢の中の一人なんて役も少なくないから、福本さん目当てで映画を見るのはひと苦労するのである。場合によっては、ヒッチコックを探し出すより難しかったりするんだよ。

 そんな福本さんの「大部屋役者」人生の中で、本当に大向こうを唸らせたのは、やはり『ラスト サムライ』(2003年)の「ボブ」(寡黙な侍)役と、堂々たる主演を張られた『太秦ライムライト』(2014年)の香美山清一役だっただろう。
 ボブ役は、明らかに黒澤明『七人の侍』での最強の剣士・久蔵(宮口精二)を彷彿とさせる役であったし、香美山のモデルはもちろんかのカルベロ(チャーリー・チャップリン)である。生涯一脇役を通してこられた福本さんのフィルモグラフィーにおいて、その晩年にこれだけの大役が舞い込んできたことは、単に運がよかった、という一言で済ますことはできない。
 『ラスト サムライ』での起用は、キャスティング担当の奈良橋陽子による推薦によるものだということだが、既にハリウッドで名を成していた真田広之の引きもあったに違いない。『太秦ライムライト』での福本さんの最後の立ち回りの相手役は、やはり松方弘樹。東映最後の時代劇スターが、福本さんの花道を飾った。感無量とは、こういうときにこそ使う言葉だろう。
 どちらの殺陣も、様式的な立ち回りではなく、骨肉の響きを感じるほどに凄惨な「人斬りの剣」だった。斬られるためには、斬る技術にもまた秀でていなければリアリティは出せない。ヒーローは、福本さんの必殺の一閃を掻い潜ってその胴を斬る。強さの上に、強さが相乗されるのだ。だから怖い。福本さんの「剣技」には、誰もが信頼を置いていたのである。

 特撮ファン、時代劇ファンには、劇場版『オーズ・電王・オールライダー レッツゴー仮面ライダー』(2011年)での2代目ブラック将軍役も嬉しい配役だった。
 『仮面ライダー』(1972〜1973年)で、ゲルショッカーの大幹部である初代・ブラック将軍を演じたのは、大映の時代劇俳優だった丹羽又三郎氏。その役を東映生え抜きの福本さんが演じたのだから、時代劇が娯楽映画の王道だった時代を思い起こさせて、ファンは歓喜の涙を流したのだ。
 残念ながら、福本さんのブラック将軍はこの1作で終わり、次作『仮面ライダー3号』に登場したブラック将軍は、パラレルという設定ゆえか、高田延彦に変更されたが、もしも福本さんの体調がよろしければ、ぜひもう1作、それも往年の大幹部勢揃い編のように、ゾル大佐、死神博士、地獄大使、ドクトルGとともに復活を遂げてほしかった。
 それも、今となっては見果てぬ夢である。 

 合掌。




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