【ウンコを】速達でだ。【送りつける】聖なる夜に読みたいな日記

　もう数十年前になるのか。茶髪のロン毛で未成年の私は、ガソリンスタンドでアルバイトをしていた。

　クリスマスという日も、洗車が立て込む日である。
みな綺麗な車でデートしたいのだ。
ガソリンも満タンで、どこか遠くに行くのか。
給油しないヤツは近くですますのか。

手洗い洗車＋室内清掃というのが　一番高価なコースなのだが、この日はこれが立て込んだ。

気温一桁の中、冷たい車体を手洗いし、かじかんだ手で車内を掃除機掛けするのだ。


洗車の仕事をしていて、ヤクザやさんの車から、封筒に包まれた拳銃？？を見つけてしまい。

「ニイチャン、なんか見たか？　内密にな」

と諭吉さんを数枚貰ったという話をラジオだったか先輩だったかから聞いた。

それ以来　私は、高級外車の洗車の際にはいろんな意味で気をつけていた。

クリスマス。

来客に着飾った男女が乗っている率が多い気がする。
カタギでなさそうなベンツの40代後半に見える、襟が大きいシャツのサラリーマンではなさそうなスーツの男性と、助手席の女性がタイツのおねーちゃん。

「洗車お願いね　いちばんイイやつで」と待合部屋に消えていく。

エロいねえちゃん連れてるなあ　すげえなあ。

私は、あかぎれの手に息を吐きかけながら、室内清掃にかかる。

後部座席に包み紙。隠す気もない。

きゃーーーーーー大人のピストルだーーーーーーーーーーー！！！！！！！

リモコンでうごくヤツだーーーーー！！！！！！！

そして　空き箱だーーーーーー！！！！


え？どういう事？！！

店内の有線放送がブランキージェットシティ　「悪いひとたち」

「ピースマークを送るぜ。」

つまり、仕込んであるのか。
あのおねーちゃんは、リモコン操作が可能なのか？！！！

私は、もうずっと後部座席に掃除機をかけ続けている気がする。

私は、後部座席の縫い目をずっと吸ってる。
待合から視線を感じた。

にやりとしている。

ああ、私は　遊ばれている。

ああ、私に好きな周波数の電波を発する異能力があったらどうするつもりなのか。
そんなものはない。
とはいえ　そんな能力を来世で付与されてもこまるので望まないでおく。
ーーーーーーーーーー

そんなことを思い出した。
今日の私は、ウンコを速達で送りつけた。

健康診断に付帯している大腸ガン検査用の検便。
期日が12月25日必着であることに23日に気がついた。

12月24日　又一人　罠に落ちたね。

ウンコを調整した結果、つい先ほど献体を拾集する流れとなった。
明日必着。

普通郵便でも都内なら届くか。
いや、万が一　期日が切れて届いたウンコは　破棄されてしまうのか。

脳内のローランド爺さんが優しくささやく。


「届かなくていい手紙なんて　無いんじゃよ」

よろしい　ならば速達だ。
私は、検体の入った郵便を　速達にすべく、郵便局に向かった。

速達だ。他の郵便も　届かなくて良い物はない。
だが　優先されるのだ　私のウンコが。他の郵便よりも。

「速達で承りました。」と優しく受け取った郵便局のおじさん。
ありがとう。その封筒は大事な私のウンコだ。