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2020年12月05日01:46

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なぜ安いか、を考える

普通数万円かかるというPCR検査がなぜ2900円でできるのか?
安価な検査に何も問題がなければ、普通の検査だってもっと安くなるはず。安いのにはそれなりの理由があると考えないと。

PCR検査の工程を考えると(専門ではないので詳しいわけではないけど)、高くても安くても検体を採取する場面・検査結果を通知する場面に差が生じるとは思えないので、やはり検体を機械で処理している部分にコストダウン要素があるはずだ。

PCR検査は採取した検体に含まれる遺伝子を薬品によってコピーして何倍にも増やすことで、それこそ目に見えるぐらいに調べやすくする手法。わずかしか遺伝子が含まれなかったとしても、何回も処理を繰り返せばその存在が明らかになる。

しかし当然の話として、処理回数が増えればそれだけ時間がかかる。検査要員や検査機器の占有時間が延びれば、その分費用がかかってくることになる。

永遠に処理を繰り返すわけにもいかないので、どこかで打ち切ることにはなる。もしその回数を少なくできれば検査数を増やせるし、請求額を抑えても儲けは十分に出せることになる。

つまり、2900円という安さの裏には、この繰返し回数を少なくしている可能性があるということだ。

回数が少なければ、安くなるし早く結果が出せる。ただ当然のことながら、メリットを狙って現状を変えればその分デメリットも生まれる。繰返し回数が少ないと、まだウィルスに感染してから時間が経ってないなどの理由で体内での増殖が進んでない場合は検査結果が陰性になってしまう(偽陰性)可能性が高くなってしまうのだ。

PCR検査は感染症の検査手法としては感度(陰性という結果が本当であると信じられる確率)が低く、70%程度と言われている。70%程度の感度にしかならない検査は、本来感染の確認手段として用いるものではないのだが、これ以上高い感度の検査が存在しないために止む無く使っているのが現状である。

ただその感度も、十分な繰返し回数を稼いでこその成績だ。回数が少なければその分感度が落ちてしまいかねない。陰性の結果を信じて行動しまくった結果、ウィルスをばらまいてしまったなんてこともあり得る。

だが実は一方で、「繰返し回数は少なくても良いのではないか」と考える研究者もいる。感染者の90%は他人に広げておらず、残り10%が爆発的に広げているという統計があり、その10%の感染者というのはかなり強烈にウィルスが増殖していることから検査をしても陽性と出やすく、PCRの繰返し回数も少なくて問題ないというのだ。

日本でも2〜3月頃、大阪のライブハウスでのクラスターの解析結果などから「スーパースプレッダー」の存在が唱えられたことを覚えているだろうか。これが先の10%に相当する。クラスター対策というのも、このスーパースプレッダーを見つけ出して治療することで、感染を広がりにくくすることを目的としているのだ。

つまりPCRの繰返し回数が少ないのも多いのもそれぞれに意味があるということだ。大事なのはその結果を正しく捉えて自身の行動に反映させること。そもそも感度の低いPCR検査なのだから、結果が陰性であることを過信してはならない。安いPCR検査が繰返し回数を抑えることで低価格を実現しているとするなら、尚更である。

ところで、どうもTVでの報道によると、この安価なPCR検査の結果は診断書としての効力がないらしい。あくまで目安であって、病院にかかる時は改めて検査を受けることになるはずである。

その理由まで聞き及んでいないのだが、ひとつの可能性として、実は国家資格としての検査技師の資格を持った人がいないことが考えられる。検査機器があって経験者がいれば検査の作業自体は可能だと思われるが、おそらく検査技師の資格を持った人が監督できない環境では正式な結果として発行できないだろう(その部分に責任を負えなければ資格の存在価値がない)。

PCR検査の数を増やそうという話があった時に、民間の検査機関を活用して云々とか言われていたわりにはあまり増えてない印象があった。以前から将来の病気のなりやすさをDNAから読み取るという検査サービスが話題になったりしたのだけど、別に参考用でしかないんだから検査技師がいなくても成立するわけで、なんとなくそういう問題で民間の活用が進まなかったのでは…と個人的には勘ぐっている。

いずれにしても陰性の検査結果は費用が高くてもあまり信用できないので、結局は個々人の感染対策しか頼れるものはないということだ。それも「ウィルスをもらわないようにする」のではなく「ウィルスを誰かにうつさないようにする」ことを心がけること。

自分が既に感染していて、周囲にいる人もほとんど感染しているが、誰かはわからないけど感染していない人も若干おり、その人を守るために自分が「誰かにうつさない」ための対策をする。この対策は結果としてウィルスをもらわないことを兼ねている。わりとどうでも良いように見える彼我の転換だが、感染者や医療関係者などへの偏見を解消するためにも必要な発想だと思う。

PCR検査はあくまで道具にすぎない。道具の特性を知らずして目的は達せられない。ちゃんと知った上で活用したいものである。


■2900円でPCR検査=新橋駅前に民間施設開業―新型コロナ
(時事通信社 - 12月04日 15:01)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=4&from=diary&id=6330806
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