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2020年11月21日12:35

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94 詩・短編を書いてみた(第1929回)

短編を書いてみました(^_^)
素人が書いたので
気に入っていただけるか分かりませんが
暇な時に呼んで頂ければ幸いです


95-7「子供達の里帰り」

〓〓〓〓〓〓〓

とある日のこと…。
僕がトイレに行きたくなり
部屋を出ると
この城で働いている孤児の子供達に呼び止められた。

『どうしたの?』

そう言うと
彼らは含みを持たした笑みの後に
数十枚の硬貨を見せてくれた。

『それは?』
『お駄賃だって!。魔王様がくれたの!』

話を聞くと
魔王様が一生懸命に頑張る彼らを見て「ご褒美に」と渡したらしい。

『ねぇ、見て見て』』

彼らは
硬貨を一枚づつ見せてくれて
とても嬉しそう。

そんな微笑ましい姿を見ていると
その子供達の一人が顔を下を向けている事に気づいた。

『下を向いて、どうしたの?』

そう僕が尋ねると
その子は一度ためらいながらこう答えた。

『このお金を「マキ荘」の皆のために使いたい』と。

マキ荘とは
彼らがここに来る前に住んでいた孤児院の事で
仲間のためにお金を使いたいと言う。

『マキ荘へ、ね…』

僕はそのお願い事を聞くかどうか迷った。

彼らの住んでいたマキ荘は
この城下町から少し離れた小さな町の中にあるのたが…。
ミカエルさんに聞いた話によると。
マキ荘まで行く道は
治安があまり良くないらしいく。
盗賊などが出ると聞いたことがある。

だから
彼らをそこに行かせるのはかなり危険だのだが…。

どうしようか…。

そう思った時
ふと疑問を抱いた。

そういえば
彼らはどうやって
その道を乗り越えてここにやってきたんだ?

『ねぇ、皆はマキ荘から城下町に来たんだよね。ここまで来る道は危なくなかった?』

皆が『うん』と頷く。
彼らが言うには「お兄ちゃん」という人が道中を守ってくれていたからだそうだ。

その「お兄ちゃん」が一体誰なのか。
どうやら皆も分からないらしい。

僕はその事を頭の片隅に置いておく事にして
今は子供達の願いをどうするかを考える事にした。

『じゃあ、お願いの件だけど。ミカエルさんに聞いてみるよ』

子供達は嬉しそうに喜びながら
どこかへと走って行った。

僕は『さて、と…』と呟いて
ミカエルさんを元へ向かった。
ミカエルさんを見つけた僕はすぐに相談してみた。
しかし
ミカエルさんは『王子があの辺りを歩くのは危険』と断られてしまった。
でも僕は引き下がれなくて『あの子達を引き取ったのは僕だから、その気持ちには応えたい…!』と想いを伝えた。

そう言うと
ミカエルさんは少し考えた後
『検討しておきます』と言ってくれた。

それから月日が経ち。
ミカエルさんが検討してくれた結果…。
行くことを条件付きで許可された。
その条件とは
防犯上の理由から
マキ荘へ連れていく子供達を1人だけにすること。
そこで選ばれたのは「マリア」
女の子だ。
なぜ彼女なのかと言うと…。
実はあの引き取った子供達は
城内の警備を始めるのと同時に
武器を使った防衛技術を学んでいる。
その技術が
あの子達の中で彼女が
一番上手かったからで
上手ければ
自分の身を自分で守る事ができ
全体の生存率が格段に上がるからという判断らしい。

こうして
準備を整えた僕達はマキ荘へ向かい事になった…。

出発当日。
マリアは少し大きめの荷物を背負っていた。
その中身は
マキ荘へ行けなかった
他の子供達の分の手紙やお金が入っているらしい。
なんて良い子達なんだ…と心で感動しつつ
僕らはマキ荘へ出発した…。


出発して数時間。
旅は何事もなく進み
気がつけば夕焼けが心を和ます時間になっていた。

僕らは岩場の近くにあった
雨風がしのげそうな場所で休むことにした。

少し危なそうだけど仕方がない。

その後。
僕らは焚き火を囲みながら
明日からは危険地帯に入る事や
マキ荘での段取り等々を確認し合い
それを終えた僕らは疲れていたのか
すぐに眠りについた…。

次の日。
僕らは朝日と共にキャンプ地を出た。

すると早速…。
怪しい3人組の男達が近づいてきた。

ミカエルさんが僕らに警戒を促す。

『すみません。私達、旅人でして。水を少し分けてくれませんか?』

雰囲気を見るに
疲れているみたいだか…

ミカエルさんが僕に小声で言う。

『どう致しましょうか?』
『一様、渡そう』
『分かりました』

ミカエルさんは荷物から飲み物を取り出し
彼らにそれを渡そうと近づいた。
すると
奴らはあらかじめ地面に仕掛けていたであろう魔術を発動させ
ミカエルさんの動きが封じられてしまった。

それを確認した奴らは
僕達に襲いかかってきた。

しかし
ミカエルさんすぐにその拘束の魔術を解いて
魔術を使い相手のバランスを崩した。
それを見たマリアは
習った技で相手の急所を的確に当てて
奴らの動きを止めた。
そして
僕は教えてもらっていた拘束の魔術で
奴らを捕らえた。

自分でも驚くくらいのチームプレイに
思わず仲間とハイタッチをした。

さて
気分が落ち着いた所で
問題はコイツらだ…。
悪党だから放置しても良いのだけど。
どうなるかを考えた時に僕の後味が良くはない。

どうしようか…。

皆と相談した結果。
情報を聞き出して
逃がそうということになった。

彼らに質問すると
意外にも素直に
この場所について教えてくれた。

この辺りは噂通りに治安が悪いのだが
数年前から
ある組織がここを支配してから
もっと治安が悪くなったという。

その組織の名前は「マリャル」。
この組織は
この地域を通過する人や商人から金目のモノを奪うだけでなく。
子供を拐い
組織の一員にする為に教育を行っているという。

なんて卑劣な奴等なんだろうか…。

僕らは彼らを解放した。
彼らは逃げるように去っていった。


それから数時間後。
町が見えてきた。
町についてマリアに聞くと
町の名前は「チャイ」。
あの町にマキ荘があるらしい。

僕らは町に入る。
すると
僕は町の住民の違和感に気づいた。
まるで僕らに怯えているような雰囲気を感じた。

何かあるな…。

そう思いながら僕はマリアにマキ荘まで道案内を頼んだ。
マリアは『うん!』と言って
元気よく僕達の前を歩き始めた。

少しして
マキ荘に到着した僕はその外観に少し驚いた。
建物の前には遊ぶスペースのようなモノがあるが
ほとんど手入れがされていない上に
マキ荘の外壁は
ツタなどで壁が見えないくらいに絡み付いていたからだ。

恐らく
人手も資金もギリギリの状態を保っているのだろう。

僕らはサビた鉄の柵を開けて敷地内へ入り
呼び鈴を鳴らす。

すると
その中から大人の男性が出てきた。
いかにも子供好きと思わせるような
彼の風貌に
僕らの気持ちを少し安心する。


僕らは偽名を使った自己紹介と
ここに来た理由を彼に話した。

『そうですか、この子が…』

彼はマリアを見る。
マリアは僕の後ろに隠れた。
どうやら知らない人のようだ。

『では、ここで話もなんなので中へ…』
僕らは応接室に案内され
あらためて彼の自己紹介を受けた。

彼の名前は「グフー」。
最近
前のマキ荘の室長の代わりにとして
ここに赴任したという。
その後
簡単な雑談を終えると
マキ荘のどこかからチャイムの音が聞こえてきた。
グフーが言うには昼食の時間らしい。

彼と一緒に食堂へ行くと
そこには5人の子供がいたのだが
彼らは何も話さず
無心にご飯を食べていた。

まるで
そう教え込まれているかのように…。

少し違和感を感じていると
グフーから『食事はどうてすか?』と誘われた。
しかし
僕らはそれを断った。
施設に負担を掛けてはいけないという思いと
何処か怪しいから…。

断った後
食事を終えた子供達は
何も話さず自分の部屋へ戻っていった。
それを見ていたミカエルさんが僕にこう囁く。

『王子。これは明らかに変です。マリアも「こんな雰囲気ではなかった」と言っています。調査を行うべきでは?』

僕は静かに頷き
グフーに『今日は一旦、帰ります』と伝えた。
すると
グフーは不気味な笑顔を浮かべる。

『おや?。どこへ行かれると言うのですか?』

グフーの雰囲気が変わった。
僕らは身構える。
しかし…

『捕らえろ!』

グフーの声に反応した数人の子供達が
僕らの背後から襲いかかり
僕らは動きを封じられてしまった。

『くそ…。グフー!。お前は一体、ここで何をしている…!』

僕の問いかけにグフーは呆れたように笑う。

『そんな事、アナタ達が一番分かっているのでは?。魔王城の皆さん』
『何で、それを知っている…?』
『道中、アナタ方が遭遇した盗賊がいたでしょ?。あれ。私の人形なんです。彼らから教えてもらいました「凄い力を持った人が来る」とね』
『そんな…』
『いやぁ〜。子供は本当に役に立ちますね。精神が未熟ですから洗脳しやすいですし』

グフーの笑みに僕は怒りが込み上げてくる。

『さて、お喋りは終わりです。さぁ、ガキ共、コイツらを連れていきなさい』

僕らは抵抗も出来ず
地下牢に入れられてしまった。

『僕はすぐに脱獄しよう』

そう思ったが僕は思い止まった。

グフーの事だ。
無理に脱出したら
ここにいる子供達に危害が加えられるかもしれない。

どうしたら…。

すると
マリアが洋服の内ポケットから
針金のようなモノで鍵の開錠をし始めた。

出来るのか?

そう思った僕だったが
彼女は手慣れた感じで簡単に開けてしまった。

マリアが言うには
僕らに保護される前に身に付けたスキルらしい。
要は盗みを行う為だ。
そんなスキルが役に立つのは少し複雑だが
それで助かったのは事実。

僕らはマリアに感謝をして地下牢から脱出し
すぐさまグフーの管理長室へ…。

ところが
部屋は引き出し等が開けられて
もぬけの殻の状態だった。

どうやら逃げたようだ。
だが
このまま逃がすわけにはいかない。

僕らはマキ荘から逃げ出したグフーを追いかける。

しかし
追いかけようとして外に出た僕らを
マキ荘にいた子供達や
町の住民が僕らの行く手を阻む。

彼らも操られていたみたいだ。

くそ…!

ここを強行突破しなければ
グフーには逃げられる。
しかし
彼らを傷つけるわけにはいかない。


どうしたら良いんだ…。

その時だった。

『王子、少し下がってください』

そう言って
ミカエルさんが一歩前に出て
片膝と片手を地面に置く。
すると
魔方陣が浮かび上がり
それは次第に大きくなり町全体に広がっていく。
そして
ミカエルがその魔方陣に魔力を込めると
さっきまで殺気を纏っていた町の住人達が
縛られた縄がほどかれたように気を失い倒れていった。
その力を目の当たりにした僕は
驚きと恐怖で心が震えた。

『王子、今のうちです!』

ミカエルさんの声に僕は目的を思い出し
グフーを追いかけた。

町から出ると
僕らの先を走って逃げるグフーがいた。

このままでは逃げられる。

そう思った僕は
ミカエルさんに足が早くなる魔術を
マリアに掛けるように指示。
ミカエルさんはすぐに
マリアに魔術を掛け
魔術を掛けられたマリアは
猛スピードでグフーに近づき
得意の体術でグフーの足を払い転倒させた。

グフーは観念したのか
逃げることを諦め
素直に僕らに捕まった。

僕らはグフーから情報を引き出そうとした。
しかし
彼は雇われらしく
今以上の情報を聞くことは難しいようだ。

その後
グフーはミカエルさんの呼んだ魔王城の兵士に引き渡され
深く調べられる事になった。
そして
マキ荘については
ミカエルさんの部下が着任し管理する事になった。

これで町とマキ荘には平和が戻り
穏やかな日々が訪れる事だろう…。

ただ
問題は解決していない。

グフーのような人間を
裏で操っていた組織がいるはず。
ここをどうにかしないと
また新しい被害者が出ることだろう…。

僕は不安を抱えながらマキ荘を後にするのだった………




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