18960830　　NO4263　　国王のロシア公使館より還宮に関する件

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009_0030_0460　駐韓日本公使館記録 9巻 三. 機密本省往 一•二 (46) 国王のロシア公使館より還宮に関する件
文書題目 (46) 国王のロシア公使館より還宮に関する件
文書番号 機密第六五号
発信日 明治二十九年八月三十日 ( 1896年 08月 30日 )
発信者 特命全権公使 原敬
受信者 外務大臣 侯爵 西園寺公望

(46) 国王のロシア公使館より還宮に関する件
機密第六五号
朝鮮国王還宮の件に関し去る八月十九日「別紙第一号」の通り貴電接手致しましたが、目下当地の状況は、ロシア公使館はかなり広い家屋ではありますが、その内に国王・世子及び内閣員その他日々数人の朝鮮人が入り込んでおりすこぶる雑踏を極めておりますため、今日に至っては ロシア公使とその家族などの私情においてはなるべく速やかに還宮を希望する様な口ぶりは時々彼等の口より洩れておりますが、これらの些事はともかくとして、国王還宮がないため諸事ロシア公使の干渉があるものと疑われ、例えば京義（＊京城・義州）間鉄道などはフランス本国政府よりロシア国に交渉しその結果ロシア公使が尽力したのだが、京元（＊京城・元山）間などはロシア公使が甚だ冷談であるとかで、ドイツ人の請求に係る鉱山もロシア公使内がこれを拒むために許可に至らないとか、その他我が京釜（京城・釜山）間鉄道に至ってもロシア公使のために許可に至らないと言うように、その他国内の事に至っても諸事ロシア公使の指揮もしくは黙諾に原因するように、在留外国人においても秘かに噂致し、多少の怨言を放つ者も生じておりますので、ロシア本国政府のみならずロシア公使の私情においても還宮を希望する傾きがありますので、取り敢えず御参考までに「別紙第二号」の電信をもって具申致した次第であります。
ところがその後去る二十四日発「別紙第三号」電報をもって申し述べました通り、明礼宮（ミョンイエグン）の修繕が日夜取り急いでおり、これは王妃の遺骸並びに歴代の位牌を移し、王妃の国葬をも営むためと申しておりますが、修繕が完了した上は国王も還宮するのだろう、と専ら噂致しておりますので「ロシア国政府の申し出に係る守備兵」云々の件もどうなるだろうかと存じ御詮議の模様を伺いました次第でありましたが、翌二十五日「別紙第四号」並びに昨二十九日「別紙第五号」貴電によって、王宮護衛の件は帝国政府において承諾はなく、朝鮮兵訓練の件について御談話になったと承知致しました。
ついては今後ロシア政府においてどう申し出て来るかは計り難いのですが、遣ロシア大使・閔泳煥の申し込んだ国債借入の件、並びにロシア兵王官護衛の件は、ロシア政府では承諾しないものの、ロシア国士官を雇い入れますことは承諾致しますだけでなく、既にこの士官たちはロシア京を出発したと専ら噂致しております。
固より真偽は判然と致しかねますが、さまざまな内報によって考察すると全く無根とも申し難く見えますので、果してそのような折においては、山縣大将のロシア国においての御談判の次第もありますが、これは朝鮮政府の任意の処置だとしてロシア国士官招聘の事になっているのかもわからないと存じます。
特にロシア公使館及び明礼宮近傍にあるグレートハウス氏の官舍は、数日前に同氏が既に移転致しました。その跡はロシア国士官の官舍に充てるだろうとの説があります。のみならず明礼宮の修繕も大いに拡張の様子で、近傍家屋を引き続き買い上げ取り壊しておりますので、あるいはこの内にも官舍様なものを新築するのかとの疑いもあり、またロシア国士官来韓の事はほとんど一般の信用する所だと申すほどであり、かつこの士官などの来着の上は国王が始めて安心して還宮するのだろうなどと申す者もあるくらいで、風説真偽はまだ判然と致しかねますが、とにかく国王還宮並びに朝鮮兵訓練に付いて引き続き御談判があることについては多少御参考にもなると存じます。この件申し進みます。 敬具
明治二十九年八月三十日
特命全権公使 原敬印
外務大臣 侯爵 西園寺公望 殿