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2020年11月05日18:27

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「民間初のロケットに挑んだ男」 メモ。


内容は1970年代にドイツで民間人工衛星ビジネスに挑んだ OTRAG社のロケット開発ドキュメンタリー。
開発開始からコンゴ射場からの撤退までと、開発者ルッツ・カイゼル氏の一代記的な内容。豊富な記録ムービーや個人のホームムービー、当時の新聞記事やニュース・宣伝映像などで当時の雰囲気がよく伝わる。
若い技術者達が無邪気にロケット開発を行う雰囲気が伝わってきて面白い。
実際には単純な話ではないだろうけど「お前ら楽しそうだな」というのが素直な感想。

番組中最大のフラグは、射場にコンゴの、しかもカタンガ州を選んだところ。少し前まで独立を掲げて泥沼の内戦やってたところやん。後にはルアンダ内戦にも絡んでたな、この地域。
赤道直下なら同じアフリカでもケニアとかあったろうに、どうしてそうなった。

なお射場の立地はテーブルマウンテンの高原上、なんかギアナ高地の秘密基地っぽくてカッコ良い。
高地なので気温が低くジャングルではなくサバンナ気候で、かつ高度も高いのが選定理由だろうなぁ。

原野に滑走路作って、住居やレストランを建設。インタビューに出てくる土木や建築技術者もすごく楽しそうに懐古してます。
最後の方ではドイツソーセージまで現地生産してるし、最後の方ではザワークラウトも出してたけど、キャベツはどうしたんだろう?やはり栽培してたのかな?


輸送には英国空軍のアーゴシーというP38と同じ構成の輸送機(確かブリュッセルで見たな)やヘリコプターを買って運用してる。
労働力として現地人を雇用。小学校も作ったらしい。

コンゴ開放戦線がアンゴラからカタンガに侵攻すると、フランス外人傭兵部隊出身者2名雇って現地人30人ばかり訓練させたけど武器は持たせなかったとか。
おお、アフリカでキューバ軍に訓練された共産ゲリラの大群に包囲された傭兵部隊とな、そのままエイリアンに救助されたら「地球から来た傭兵たち」だなっ。
もしくはロケット奪取にソ連が黒幕として動くなら「オネアミス」になってしまうところ。

実際には2回の侵攻ともゲリラ部隊はロケット射場まで到達してないと思うけど、その直後にモブツ大統領の目の前での打ち上げ失敗。番組ではそれがきっかけでコンゴから退去との流れとありましたが、実際のところモブツ大統領のバックの米仏、開放戦線バックのソ連からの圧力が理由だろうなぁ。
で、退去が決まって残念会として冒険旅行をしようと、ザィール川上流からボートで川下りをしたら、ボートが転覆して乗ってた科学者7人全員死亡で打撃を受けて番組は終わり。ウィキにあったリビアに新たに作った射場には触れていません。

ウィキでは長距離ミサイル技術の拡散が問題とされているけど、番組内では偵察衛星の提供が問題だったとの見解、微妙に違う。
なお番組内で紹介された当時の報道は興味深く、「カイザーの帝国」「ドイツ軍が秘密基地をコンゴに」「元親衛隊員が参加」と、容赦ない。


なおルッツ・カイゼル氏、晩年は太平洋のとある環礁をどうやら島ごと購入して悠々自適の生活をしながら、アメリカでロケット開発会社の起業を考えてた模様。テーブルマウンテンの基地とか太平洋の環礁とか、大金持ちだったら国際救助隊でも作ってたかも(^^;;



技術面ではOTRAGロケットは、小型で簡易な同一規格のロケットをクラスターにした構成。エンジンノズルは固定で推力偏向は個々のエンジンの推力を絞る事によって行う。これは技術的にフラグで、個々の出力が揃ってないと成り立たない。100本くらいのクラスターなら現代なら慣性制御で成り立つかもしれません。

エンジンノズルの冷却は樹脂?のアブレーション材で行うためノズルの構造はシンプル。アポロ計画後にNASAを退職した技術者2名が転職して関与してます。ウィキで見たら圧縮ガスによる燃料抽送なのでエンジンもシンプルっぽい。

個人的感想を言うと、低コストと低技術力でも出来るシステムを目指しているけど、個々の推力安定が前提なのがネック。先にも書いた通りもっと本数が多くして冗長性を高め、慣性制御が自動化出来れば可能性はあったと思う。
ただ工作精度も現代では向上しているので、現在一般的な高出力エンジンとどっちがコスパが良いかは微妙かも。

なお、ウィキで見てたらカイザー氏は、戦後ゼンガーの教えをシュツットガルトで受けている。ドイツロケット工学の正統をある意味受け継ぐ者の一人だったのかもしれない。
昔ドイツの展示で見た「ゼンガー2」の飛行経路予定が、ドイツから発射してアフリカ上空を8の字を描いて戻る軌道が書かれていたけど、なんか関係あるかもしれないと思いました。
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