mixiユーザー(id:2958687)

2020年11月03日09:20

40 view

10月の読書記録

先月は『禅海一瀾講話』の読了に時間がかかった分を『1億3千万〜』で補った感がある(苦笑)。とりあえず、冊数、ページ数、ナイス共にまずまずという感じかな…

2020年10月の読書メーター
読んだ本の数:18冊
読んだページ数:6144ページ
ナイス数:160ナイス

https://bookmeter.com/users/4147/summary/monthly
■はい、チーズ
シニシズムとペーソス、シニシズムとヒューマニズムが絶妙にというか、不思議にというか、とにかく何とも言えないバランスで混在した短編集。とりわけ印象的だったのは、「エド・ルービー〜」だったか。理不尽な権力による不当な仕打ちに対して、絶望的な状況でもなお争い続ける主人公の行動に思わず声援を送りたくなる。ありがちとも言えるストーリーだが、普遍的なテーマとも言えるかも。後、可愛らしさと残酷さがないまぜになった「ナイス・リトル〜」のオチも強烈。このあたりも作者の真骨頂か。「セルマ〜」の微笑ましさも特筆に価する。
読了日:10月31日 著者:カート ヴォネガット
https://bookmeter.com/books/8135844

■千の扉 (単行本)
一見、穏やかで悪く言えば起伏に乏しいようにも思える日常。しかし、具に見てみると、それぞれの人に、言葉にし辛い過去や、出来事、対人関係における葛藤がある…主軸となるストーリーに時折紛れ込んだ、過去の挿話。一瞬、読者を戸惑わせながら、最終的に落とし所へと導く手腕はさすが。とりわけ、本作の影の主人公ともいうべき、勝男の経歴とはかないロマンスは何とも言えず切なく美しい。そして、ラストに登場する女性はもしかして…個人的には子供の頃、憧れていた洞窟探検のエピソードが巧みに盛り込まれているのが、読んでいて楽しい…
読了日:10月29日 著者:柴崎 友香
https://bookmeter.com/books/12301375

■人生の習慣(ハビット)
内容はともかくとして、ほぼ30年前に語られた言葉ということに深い感慨を覚える。この当時、愛息光氏はまだ20代。それが今や還暦を目の前にしつつある。そして、大江氏の作品の根幹にあるのは、ほぼ一貫して光氏との共生であった。自分の子供がそのような年になってもなお、テーマを変えずにいるというか、それがテーマになりうる状況が変わらないというのは、どういうことなのだろう?ということをふと考えてしまった。また、大江氏の著作で度々その名を目にすることはありながらも、深く知ろうとはしなかった、フラナリー・オコナーに興味が。
読了日:10月28日 著者:大江 健三郎
https://bookmeter.com/books/123251

■極北
ディストピア小説に分類されるべき作品だろうか。とにかく陰惨で絶望的なエピソードがひたすら続くのに、やや辟易させられるきらいがあるが、それでも主人公メイクピースが希望を失わず、果敢に現状に働きかける姿に惹かれてつい先を読み進めてしまう。陰惨なエピソードの合間に、時折希望の光が兆す瞬間があるのだけれど、その光もごく一瞬。でも何がしかの可能性を見出し、前に進もうとする主人公。物語の終盤で明かされる意外な事実に、大半の読者は度肝を抜かれるはず。そして最後での意外な展開は更に衝撃的。重層的な意味が読み取れる。
読了日:10月27日 著者:マーセル・セロー
https://bookmeter.com/books/4716006

■一億三千万人のための『論語』教室 (河出新書)
高橋氏は、「超訳ではない」と言っているが、これはどう見ても「超訳」だろう…と突っ込みたくなったが、その突っ込みを想定した上で、あえて「超訳」ではないとの主張なのだろうという気にもさせられた。時折、典型的な原則論とも言える教えがあって、若干辟易させられるが、それでも、現在にも通じる深い知見も少なからず見られるのは、さすが古典というべきか。また、幾度となく高橋氏の世相批判的意見が露見されるのは、さもありなんというべきか。批判の対象にするにせよ、まずは手にとって読むべき。他のヴァージョンの論語も読みたくなった。
読了日:10月24日 著者:高橋源一郎
https://bookmeter.com/books/14471068

■デッドアイ・ディック (ハヤカワ文庫SF)
良くも悪くもアメリカ人にしか書けない作風…ふとそんな気にさせられた。時折、つい笑いを誘われる件もあるが、全体としてみると、陰惨なエピソードに事欠かない。それにも関わらず、明るい要素が皆無な結末に至るまで、陰鬱な気持ちになることはなく、むしろ清々しささえ覚えるというのは何なのだろう?とりわけ印象的なのは、主人公の兄、フェリックスのシリアに対する一方的でありながら激烈極まりない恋慕。悲喜劇の一つの典型と言えるかもしれない。また、ヒトラーや中性子爆弾などシリアスな要素をユーモアを交えて語るというのもお見事。
読了日:10月24日 著者:カート ヴォネガット
https://bookmeter.com/books/572391

■信長 (宝島社文庫)
あまりにもの面白さに一挙に読了。歴史的背景に疎いため分かりづらい箇所や頻出する似たような名前に若干頭がこんがらがるところがあったが、とにかくその躍動感溢れる文体によって生き生きと描かれる信長像に我知らず引き込まれて、つい読み進めてしまう。また、解説でも触れているように、本来なら漢字で表記すべき単語をあえて片仮名で表すことによって、文章に独特の疾走感を齎しているのは、特筆に価する。この手法をより昇華させることで、著者は前人未到のスタイルをものにする可能性があったのだと思うと、その早生が非常に惜しまれる…
読了日:10月21日 著者:坂口安吾
https://bookmeter.com/books/6910

■天狗の落し文
ショートショートというより、アフォリズムあるいは 断片集というべきか。他の人も述べているとおり、玉石混交の趣も強いのだけれど、概ね楽しめたか。著者独特の言語感覚を駆使したパロディーや言葉遊びはとりわけ刺激的。ものによってはつい笑ってしまうものもあるため、人前で読むときは要注意かも。比較的軽めのものの中に紛れて、鋭い批評や、世相批判も紛れこませているのが心憎い。また、著者自身は自分が大阪出身であることをことあるごとに強調し、時にコテコテの関西弁を使用することもあるが、実はどこか東京的な感覚がある気がした。
読了日:10月20日 著者:筒井 康隆
https://bookmeter.com/books/479358

■筒井康隆かく語りき
どの対談、インタビューもそれぞれ面白いのだが、個人的には丸谷才一、井上ひさしという故人との対談に深い感慨を覚える。とりわけ、後者で言及されている大江と筒井が今も存命であるというのが、何とも言えず貴重だと痛感。また、インターネット黎明期のエピソードの数々にはまさに隔世の感を禁じ得ない。当時から、ネットに果敢に関わっていた筒井のアグレッシブさに敬意。そして、幾度となく言及される差別の問題には、今更ながらに考えさせられることしきり。いみじくも、コンプライアンスが何かとやかましい昨今にあっては尚更、再読が必要。
読了日:10月19日 著者:筒井 康隆
https://bookmeter.com/books/471616

■男 (講談社文芸文庫)
本書の時代から、職業観や各職業を巡る環境、そして男女間の職業の差がかなり軽減された現在を思うと、何とも言えない感慨を覚える。扱われている職業の大半は、今も女性には難しいであろうとされるものだとはいえ、著者の格現場に携わる男性への視線は、やはり時代的な要素が強いと思わざるをえない。でもだからこその読みどころが少なからずあるというのも事実。個人的にはオリンピック前の下水道がまだ整っていなかった東京の事情はかなり驚かされた。また、少年院の教官が収監された少年達に向ける愛情と複雑な思いは時代を経ても胸を打つ。
読了日:10月18日 著者:幸田 文
https://bookmeter.com/books/16191529

■月の塵
まず、タイトルが良い。これだけ簡潔でありながら、人の心にストンと落ちてくるものがある。こういう語感は今の時代の人には到底出せない。本書で度々触れているように、著者がいかに自然に対して、それこそ五感を全開にして触れ合ってきたかという証左ではないだろうか。また、その大半が半世紀前に書かれたものということで、つい時代の流れを感じてしまう。その間に失ったもの、そしてその間に齎された、当時では思いつきさえしなかったものの数々…また、この時点で自分を老人と自認しながらも、そのご20年以上も生きてくれたことに感謝。
読了日:10月17日 著者:幸田 文
https://bookmeter.com/books/123761

■禅海一瀾講話 (岩波文庫)
禅と儒教との関係を述べた書ということを認識しないまま読んだので、「何でやたら孔子が語られるんだ」と思うことしきり。それを前提にして読んでいたら、より理解が深まっていただろう。宗演の語り口は非常に闊達で小気味が良いのだけれど、いかんせん、夥しいまでに頻出する儒教及び仏教関係の個人名についていけず、その語り口に魅せられて読んでいたというのが正直なところ。また漢文の訓読も読んでいると独特の心地よさがあることを認識。これは一生を通じて繰り返し読むべき書だと思った。解説での宗演と洪川との師弟関係が非常に感動的。
読了日:10月16日 著者:釈宗演
https://bookmeter.com/books/13177589

■性のタブーのない日本 (集英社新書)
興味深く読めたが、何せ内容が内容なので、感想が述べにくいというのが正直なところ(苦笑)。実は以前から日本で女性の胸の大きさが重要視されるのは比較的最近ではないか?と思っていたのだが、どうやらそうらしいことが分かったのが、個人的に収穫だった。後映画『桃尻娘』製作を巡るエピソードが興味深く読めたか。それから衝撃だったのは、平安時代の男色文化。この時代の男色といえば、寺関係に限られていると思っていたが、貴族同士でもお盛んだったとは…殆どフリーセックスの世界か。でも、何だかんだ言って、巻末の著者の言葉に尽きる。
読了日:10月11日 著者:橋本 治
https://bookmeter.com/books/9935650

■エセー〈2〉
文体やそのスタイルに馴染んだためか、1巻よりは楽しめた気がする。ただ、その内容は殆ど頭に入らなかったが(笑)。ただ、非常に機知に富んだ記述や、繰り返し読むに価する知見が述べられていたという印象はある。1巻の感想でも触れたが、とにかく初期ヨーロッパの歴史的事実への言及があまりに多いのには、やはり躊躇を覚える。他の人も述べているとおり、注釈は章末ではなく頁末にしてくれたらありがたい。また、よく意味が理できず、字面を追うだけだった箇所も少なくないので、いずれ再読したい。巻末近くの「祈りに〜」が重たかった。
読了日:10月08日 著者:ミシェル・ド モンテーニュ
https://bookmeter.com/books/401816

■街場の日韓論 (犀の教室)
最悪と言われる日韓関係。さぞかし、その最悪さの実像が延々と書き連ねているのだろうと、正直陰鬱な気持ちで手に取ったが、幾分希望の兆しも感じさせる記述があったのに救われたか。個人的にとりわけ驚かされたのが、平田オリザによる韓国のエンタメ状況。歴史的背景が違うとはいえ、あそこまで徹底して自国の文化を売り込もうという姿勢が強固だったら、そりゃ日本は太刀打ちできないよな…と納得。また、鳩山元首相が指摘するように、これからは東アジア圏内での文化的交流を強固にすべきという意見には強く賛同するが、その道のりは遠いか…
読了日:10月06日 著者:内田 樹,平田 オリザ,白井 聡,渡邊 隆,中田 考,小田嶋 隆,鳩山 友紀夫,山崎 雅弘,松竹 伸幸,伊地知 紀子,平川 克美
https://bookmeter.com/books/15712687

■愛国と信仰の構造 全体主義はよみがえるのか (集英社新書)
保守や愛国はどうしてこうも、歪曲化され、間違った方向へ進んでしまったのか?中島氏の著作を繙く度にそう痛感する。現政権を闇雲に礼賛し、無邪気に日本が好きと言い放ち、中国韓国、左翼リベラルを批判することが保守愛国だと信じて疑わない自称愛国者のグロテスクさ…しかし、そうしたあり方をグロテスクと指摘したところで、恐らく相手には響かない。ではどうすればよいか?その解答が本書に示されているわけではないが、本書を繙くことで解答のヒントが得られると思う。また、親鸞と日蓮に対して新たな興味がわいたのが、個人的に収穫。
読了日:10月05日 著者:中島 岳志,島薗 進
https://bookmeter.com/books/10339290

■日本的霊性 完全版 (角川ソフィア文庫)
様々な内容を一冊に詰め込みすぎではないか?という気にもなったけれど、タイトルのような大きなテーマを論じるにはこれだけのヴォリュームが必要かも?という気にもさせられる。以前中公版で読んだときも思ったが、国粋主義とは違う形での愛国のあり方を探る上でも有効な一冊。解説にもあるように、時に危うい表現があり、全てを真に受けるべきではないが、イデオロギーや宗派を超えて、日本とは、あるいは宗教とは何かを考察する上で、これからも大いに示唆を与えてくれるはず。一信仰者として、浅原才一の素朴かつ鮮烈な言葉に驚愕を覚える。
読了日:10月03日 著者:鈴木 大拙
https://bookmeter.com/books/352073

■「リベラル保守」宣言 (新潮文庫)
ネトウヨや自称愛国者に読ませたいけど、読ませたところで、「保守の仮面を被った左翼」と一蹴されそうなのが、何とも歯痒い。日本の伝統や独自の共同体に価値を見出すのが、保守の立場であった筈なのに、闇雲に改革を施行し、隣国を罵倒し、社会の分断や貧困層の問題に目から目をそらし続け、政権を礼賛する輩が保守と名乗るようになったのか?結局、愛国者を名乗りながら、自分達に都合がよい歴史のみをつまみ食いしているだけのまさに軽佻浮薄な輩。そんな輩が跋扈する昨今だからこそ、著者が提唱するトポスの重要性を見直すべきなのだろう。
読了日:10月02日 著者:中島 岳志
https://bookmeter.com/books/10129145


▼読書メーター
https://bookmeter.com/

0 1

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2020年11月>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930     

最近の日記

もっと見る