集合的無意識が無効になる「自分」の位相。中國隠避思想の系譜。

最初に断っておきますが、私は霊や祟りなど、新興宗教的な心霊現象と全く無関係です。現象としてこの問題を考えているだけです。

本が出てきました。
夢の本です。古代から夢判断のようなものがあり、それに修正を加えて中国の隠避思想が成立してきました。バラバラだったものを体系化する試みです。

ユングなどが夢を超個人化しようと試みています。集合的な無意識の層があり、その、人類共通の潜在意識が夢を見させると。ユングの言っていることはわかりますが、成果が上がっているとは思えません。

当然のことながら、夢は個人が見るものです。
だから、タイタニック号が沈むというヴィジョンは見ることができます。
その現場に行けば、視覚的に見られるからです。事実、真偽はともかく夢で見たという予言は多く残されています。

ところが、不況や世界戦争は、空が暗くなるなどの抽象的な暗示しかできません。
ヴィションを抽象的に見るというわけですが、その場合、量や関係性はわかりません。
夫婦喧嘩（妻との関係。些細なもの）かもしれませんし、世界大戦かもしれません。

つまり、ある一点から見る個人がいる以上、世界についての情報は、個人には視覚的に表れ難いという、当たり前のことです。

価値観も同じです。
祖父が死ぬ夢を見たとしても、祖父の死と孫の悲しみという閉じられた関係では悲しむべきことであり、「凶」かもしれません。しかし、人はいずれは死ななければいけませんから、「解放」という解釈も成立するでしょう。大所高所に立った解釈は、孫という平凡な人間に受け入れられるものではないでしょう。

やはり、閉じられた場での約束事は、無限の外界では通用しませんね。
個人を富ませる倹約が、社会全体では不況の原因となるように。
また、無限集合では、有限集合で通用していた数学の概念が通用しなくなるように。

実は、夢判断というのには元本があります。
『周公解夢』（佐藤六龍が漢籍のなかから見出して、小林三剛に示唆した）
です。
それに、世界の情況が夢に反映されるという考え方を取っていない人が、独自研究を帰納的に付け加えています。たとえば、学校に行こうとして工事中で行けなかったという夢は、落第の暗示だそうです。オートバイを馬と置き換えるなどの『周公解夢』の応用ではないことは明白です。
しかも、なるほどと思うのは、こういう、本当に続きを研究している人は、教団のようなものを組織したり、多くの弟子を取ったりということしていないということです。
（夢の研究には、霊や新興宗教系と、隠避思想系の二つがあり、合い交わらないものです。六龍師や私は後者です。後者の人は、基本的に個人の超能力を認めていません。中国でも霊能力の教団を作るのは、基本的にインチキと考えていいですね。経世済民の思想は隠避思想には見出せません）

広瀬謙次郎、観象学人、高島泉妙や、
田中佐和です。
『仁鶴・きよしのただいま恋愛中』という番組で、カップルの行く末を霊視し、
「お答え、致し、ます」という決まり文句で、一世を風靡した田中佐和さんは、実家にひっそりと住み、相談を受けているようです。

出てきたのは、彼女の本でした。