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2020年10月12日20:20

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妄想小説 暁烏 87

ワイングラス小説 暁烏 87ワイングラス
「ねぇ、どっかで話さない?」
「いいね。何か昔の彼女に会ったような気分になって来たぞ・・」
「あなたって変わらないね」
「どういう意味?」
「う・・ん・・何て言えば良いのかなぁ・・過去は問わず、ただのお客さんとして受け入れる・・」
「そんな冷たかったっけ。俺?」
「冷たくはないの。昔からの知り合いみたいに受け入れて、自分のことより相手の立場で考えて・・甘えさせてくれるけど距離を取る・・結局わたしはお客様だろうなって思わせると言うか・・」
 女房に淋しい思いをさせたって後悔が次々と思い浮かぶ。初めて会った日から、ずっと俺は距離を取った。まさか結婚することになるなどとは思っていなかったから、ちょっと変ったタイプの接客と割り切ることで、時間をやり過そうと思った気がする。結婚してからもそれは変わらなかった。初夜の日に「セックスが目的で結婚したわけでない」と言われ、自分の心を心を見ぬかれた気がして慌て、「それは俺だって」と意固地になった気がする。あの時に女房が言いたいのは別なことだと感じながら・・
 30年余の夫婦生活。女房の苛立ちには気づいていたが、俺は気づかぬふりをしていた。「いまさら」という気持ちもあったし、下手に踏み込むややこしさを警戒していたのだと思う。女房が抱えた悩みや不安を共有する必要はない。親戚の娘と暮していると思えば、セックス抜きで暮せた。他人では無い、近しい親族との同居。そんな距離の取り方を俺は面白いと感じていた気がする。
「向こうにコーヒーが飲める店がある。行く?」
 俺は商店街の真ん中付近にあるプリン屋へ誘った。宮崎に本店があるプリンのティークアウト専門店だ。奥に5席ほどのカウンターがあり、コーヒーメーカーで点てたコーヒーを出す。それほど美味しくはないがまずくもないので、油津でコーヒーを飲むときはその店だと、俺は決めていた。もっと先へ行くと、豪華な内装の喫茶店があり、チキン南蛮の名店として名高いのだが、点て置きで沸かし直しのまずいコーヒーを出されたので、2度と近づかない。
「コーヒーはお父さんが点てたのが、やっぱり一番ね」
 プリン屋の奥のカウンター席には店の横から入る。表で客待ちしていた店員に声をかけ、俺は女房と並んで腰を下ろした。この店は注文が入ってから豆を挽き、コーヒーメーカーで点てるので担当者の技術をさほど必要としない。もうひとつの利点はティークアウトがメインなので、店員は常に表にいて、カウンターに座る客など気にしないことだ。
「手術の翌日、義信と何かあったの?あの時から義信の態度が変わったんだけど・・」
 俺はずっと気になっていたことを女房に聞いた。(続く)

コーヒークウネル日記コーヒー
 微妙な天気が続いています。体調は相変わらず・・今日も撮影に行くこと無く、写真ブログはさぼり・・
 小説も失敗しました。油津でチャチャッと宇宙人との戦いが起きそうな気配を書いて終わるつもりでいたのですが、女房が出てしまいました(笑)これでまた話しは迷走し、長くなりそうです。悪いのは天気です(笑)

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