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2020年09月24日07:15

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もはやろくな報道もされなくなった演劇感染クラスター

■広島のスーパー銭湯でクラスター発生 劇団員と客ら感染
(朝日新聞デジタル - 09月22日 16:56)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=168&from=diary&id=6241003

 詳しい続報があるかと思って待っていたが、広島の地方新聞で「劇団員、観客の家族に新たに4人の感染者」と報道があったっきりで、事態の推移を検証しようとする動きが見られない。
 会場の「スーパー銭湯 ゆ〜ぽっぽ」は当面の間、閉館することを伝えるのみで、何らかの調査を行っているような気配はない。公演していた劇団・優伎座のホームページも閲覧できなくなっている。情報がすっかり途絶えてしまっているのだ。

 例の新宿シアターモリエールでの感染クラスター発生の時も、感染経路についての分析が求められていたが、結局曖昧なまま、報道は収束してしまった。感染対策ガイドラインが守られていなかったことは間違いないが、何が直接的な原因だったのかは分からずじまいである。
 今回の状況はもっと酷い。新宿の場合は出演者に症状のある者がいたことから、そこから感染が拡大したのだろうと思われるが、「スーパー銭湯 ゆ〜ぽっぽ」の場合、優伎座の劇団員から観客に移ったのか、観客から劇団員に移ったのか、それすらも判然としないのである。
 先に症状が出て受診したのは観客の70代、80代の二人だというから、観客から移ったのかとも思われるが、果たして劇団員との濃厚接触があったのかどうか。それが明確でないから、クラスター発生の理由が見当も付かないのである。

 会場には入り口に消毒液が置かれていたという。しかし、感染者が入場時にちゃんと手指消毒をしたのかどうか、調査はされていないようだ。
 会場の換気設備はどうなっていたのか。マスクは着用、飲食も禁止されていたそうだが、観客は本当にそれを守っていたのかどうか。
 感染者は三人とも風呂にも入らず観劇していたという話だが(なぜ?)、舞台とどの程度離れて座っていたのか。最前列は3メートルほど距離を取っていたということだから、一応、ソーシャルディスタンスは守っていたのだろう。しかし、だとしたら、なぜ観客と出演者の間で感染が拡大したのか、かえって訳が分からない。
 出演者は本当に観客席まで降りてくることはなかったのか。逆に観客が舞台に押し寄せることはなかったのか。あるいは双方ともに、3メートルを超えるほどに飛沫を飛ばしまくっていたのか。たとえ出演者に無症状の感染者がいたとしても、観客との接触がなければ、感染することはあり得ないはずなのだ。本当は、何かしらの「濃厚接触」があったのではないか。それを疑われる状況があること自体、アウトと言わざるを得ない。

 これだけ状況が曖昧では、感染経路など辿れようはずもない。もはや原因を調査しようという姿勢が、保健所にもメディアにもないのだろう。そのいい加減さが「再発」を呼ぶ可能性について、考えもしていないのだろうか。

 宝塚や吉本新喜劇では、キャストに感染者が出れば、公演を中止する措置を執っているが、それは大劇場だから何とか「取り返しが利く」という判断があったからだろうと思う。しかし、小劇場の場合は違う。公演を一度中止すれば、「次はない」事態に陥りかねない。
 憶測でモノを言うのは憚られるが、ゆ〜ぽっぽの舞台で、シアターモリエールの時にも明らかになったように、仮に症状があったとしても、「公演中止」を避けるために、症状を隠して舞台に立つ役者もいた可能性は否定できないのではないか。優伎座はそうではなかったと言い切れるのか。
 そして、そんな劇団は、全国どこにでもあるのではないか。

 これでは「演劇は感染クラスターの温床である」といったようなおぼろげな印象を世間に与えるのみだ。適当な報道しかしないメディアに対して、暗澹たる思いを抱かずにはいられない。
 今後、「演劇公演は怖い」という印象だけが一人歩きして、観劇を控える観客が一層増加していくのではないか。ただでさえ、地方の小劇場劇団、小規模の大衆演劇は、近年、一般観客が減少傾向にあったところにもってきて、この新型コロナ禍だ。公演を打ってもペイしないと判断されれば、もはや劇団自体、解散せざるを得ない。
 今回の感染クラスター発生で、その傾向にさらに拍車が掛かるかと思うと、演劇の未来に光などは見えようもないのである。

 私自身、大劇場はともかく、100人程度しか入らない小劇場が、果たして感染対策をきちんと取っているのかどうか、疑惑の目を持たざるを得なくなっている。地元劇団の素人芝居などは観る気も起きないが、関東や京阪神の小劇場の地方公演があれば、今でも観劇欲をそそられないわけではないのだ。
 しかし、このままろくな対策を取らないままで状況を放置していれば、各地の小劇場は、確実に瀕死の重傷を負うことになる。演劇の灯は、確実に消える。その自覚が、危機意識が、演劇人たちに、劇団に、劇場側に、どれだけあるのだろうか。
 優伎座が自身の公式ホームページを閉じてるってことが、また噴飯物なんだよ。果たして劇団側に非があるのかどうか、それを判断することすらできないじゃないか。説明責任を果たす気がまるでない。

 新宿シアターモリエール事件に続く、今回のゆ〜ぽっぽ事件(締まりのない名称だが仕方がない)で、演劇関係者たちの「認識の甘さ」がすっかり露呈した格好になってしまった。
 これまでずっと、演劇擁護の日記を書き連ねてきたけれど、最近は、擁護するだけの価値があるのかという気がしてきてしまった。
 もちろん、考えられる限りの感染対策を必死になって取っている劇団がたくさんあることも知っている。そうした劇団に対しては、みんなで観に行こうと誘うに吝かではない。
 しかし、どことは言わないが、批判に対して感情的に反駁するばかりで、本当に真剣に対策を取る気があるのかどうか、疑問視したくなる劇団も少なくないことも事実なのだ。
 蟻の一穴は、既にマンホール大には、いや、土管並みには大きくなってしまっている。その認識がない限り、演劇に未来はないだろう。哀しいことだけれど。
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