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2020年08月30日22:28

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『2分の1の魔法』は面白さも2分の1。ピクサー、頑張れよ!

■【映画ランキング】菅田将暉&小松菜奈『糸』が初登場首位 『2分の1の魔法』は4位発進
(クランクイン! - 2020年08月25日 14:02)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=100&from=diary&id=6206894

■ディズニー&ピクサー『2分の1の魔法』で志尊淳&城田優が熱演する兄弟愛に号泣! 今そばにいる人を大切にしたいと思える良作です
(Pouch[ポーチ] - 2020年08月24日 21:02)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=114&from=diary&id=6206139

■【映画コラム】コロナ禍の今、改めて人間同士の絆や信頼について考えさせられる『2分の1の魔法』
(エンタメOVO - 2020年08月23日 06:11)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=199&from=diary&id=6204111

 福岡では「PIXERのひみつ展」が絶賛公開中(9月22日まで)。もっとも、コロナ禍の中で入場者数が制限されていて、行きたくても行けない。予約制なせいで割引も効かないし、せめて会期をもう少し伸ばしてくれないものかな。まあ、『ルクソーJr.』以来のピクサーファンとしては繁盛していること自体は嬉しい。ピクサーのCGアニメーションは凄いよ!と声を大にしても、何の関心も抱いてもらえなかった時代を思うと、隔世の感がある。
 ただ、これだけCGアニメーションが世界的に爛熟してしまうと、同時に粗製乱造による弊害、簡単に言えば質の低下を招かずにはいられなくなる。『2分の1の魔法(原題:Onward)』はまさしくそうした作品になってしまった。それが残念でならない。

 ということは、これから内容を貶すことになるので、先に「いいところ」を言っておくと、スキマスイッチの日本版エンディング『全力少年』は名曲。サイズが合ってなくて、曲が終わっても字幕が流れ続けるけどね(苦笑)。あと、吹替版の志尊淳、城田優の掛け合いは悪くなかった。ママ役の近藤春奈は少し棒(もう貶しとるやん)。
 何がいけないって、設定が雑、展開が雑、ちょっと切なげに終わらせるいつものピクサーっぽい落ちも、たいして意外性もなく、感動を呼ばない。全体的にアイデア不足で、あちらの映画サイトRotten Tomatoesでも日本のYahoo!映画や映画.comでも可もなく不可もなくな評価なのは、「まだ」これまでのピクサー作品に対する高評価によって、贔屓目な評価が下されているのではなかろうか。これが「凋落」の端緒にならなければいいのだけれど。

 物語の舞台は、エルフたちが住む大都会。「魔法」が栄えていたのは遠い過去のことで、今は完全に「科学」の時代。主人公のイアンは、落ちこぼれのダメ少年だけれど、16歳の誕生日に、亡くなった父親が遺してくれた「魔法の杖」を母親からプレゼントされる。魔法を使えば、自分が生まれる前に死んだ父を24時間だけ蘇らせることができると知ったイアンは、兄のバーリーと、父親を復活させる魔法の呪文を唱えるのだが――。

 まず、基本設定からして「?」が浮かんでしまうのが、「魔法が廃れた」その理由。「科学」が発達して、そちらの方が「楽だから」というのだが、死者を蘇らせるなんて、科学でもムリだから! 魔法は「素質」のあるものにしか使えない、つまり汎用性がないってことも廃れた理由であるかのように描かれているけれども、それならかえって魔法使いが珍重されそうなもの。そもそもエルフだけじゃなくて、ケンタウロスやユニコーン、人魚にドワーフにマンティコアまで存在している世界で、魔法を否定するって設定が理解できない。あいつらの能力、魔法と変わらんのじゃないか?
 親父が息子のために魔法の杖を遺した理由もよく分からない。成長した息子に一目会いたかったからだとしても、まだ生まれてもいない息子に、魔法使いの素質があるとどうして分かる? 才能があることに「賭け」たのだとしても、もしも魔法の杖が何の役にも立たなかったら、かえって息子を悲しませることになるとは考えなかったのだろうか?
 実際、イアンの「才能」は「半分」しかなかったので、復活した父親も下半身だけだったという始末。これって、親父が頭が悪かっただけってことじゃないのか。

 バーリーとイアンは、父親を「完全に」復活させるために、魔法石「不死鳥の石」を探す旅に出る。旅とは言っても、24時間がタイムリミットだから、あまり遠くへは行けない。二人は、石のありかを知っているというマンティコアの経営する酒場へと出かけていき、そこに都合よくも石を隠した場所の地図が飾られていて(苦笑)、それを手に入れた二人は喜び勇んで荒野を目指すのだが――。
 「冒険」が随分小規模で、時間短縮のために次々と都合の良い展開になるあたり、脚本家は知恵を絞るということをしなかったのだろうかとこちらの方が首を捻ってしまう。しかもこれでは盛り上がりに欠けると考えたのか、ゲームオタという設定のバーリーが、わざと「困難な道」を選ぼうとするのだ。それがゲーム攻略のセオリーだから。
 もちろん、またまた「都合よく」、バーリーの勘は当たって、いくつもの危険を乗り越えた末に不死鳥の石のありかは判明するのだが、こんな滑ったギャグのような展開に乗れと言われても無理な話である。
 落ちはまあ、いかにもピクサーらしい、ちょっとだけ意外な展開で、涙を誘う要素が加えられてはいるのだけれど、正直、宣伝で煽られているような「兄弟の絆」とやらを感じることは難しかった。ともかく最後の最後まで、「この親父、結局、何がしたかったんだ」という疑問は晴らされないままで。

 『コンフィデンスマンJP』も『ドラえもん』も、コロナで公開延期、それが観客の飢餓状態を生んで、一気にヒットにつながったと言えるだろう。しかしそうした効果は『2分の1の魔法』には効かなかった模様である。待たされている間に忘れられちゃったんじゃないかな。スキマスイッチの主題歌だけはやたら耳にしてたんだけどねえ。
 この映画の一番の特徴は何かって、そりゃあ「下半身だけの親父」ってことになるのだけれど、一見、インパクトが強そうで、キャラクターとしては弱いんだよね。何しろ喋れないから(笑)。上半身がないことによるギャグもあるんだけれど、今一つアピールする要素に欠けていたんじゃないか。
 このお父さん、モデルはダン・スキャンロン監督自身の父親だそうである。実際に監督は1歳の時に父親を亡くしていて、父親との思い出がないとのこと。ないからこそ、「思い出を作りたい」と決心して、この映画を作ったということなのだが、お父さんが「半分しかない」ということは、どんなに想像力を逞しくしても、ない思い出を完全に作り出すことはできないということではないのか。
 そう考えると、この映画自体が哀しい存在に思えてくるのである。

 チョイ役でレズビアンのキュクロプスが登場するということで、中東では上映禁止を食らってしまったという話については、宗教的な差別の壁を乗り越えるのは難しいねと言うしかない。それよりも作品自体のモチーフとして、「素質や才能が一番で、努力は二の次」って取れなくもない設定がどうしても気になってしまう。
 魔法の素質のないバーリーにも見せ場を与えているから、はっきり差別とは断言しないけれども、ある種の優生思想が背景にあるような「匂い」は感じてしまうのだ。次のピクサーの新作『ソウルフル・ワールド』と同時進行で制作されていたようだから、脚本を充分に練る時間がなかったのかもしれないという気もする。『ソウルフル』も、今回のような拍子抜けな出来になっていなければいいのだけれど。 








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