18960916 NO4100 平壌•開城地方 情況 視察報告 件
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008_0070_0660 駐韓日本公使館記録 8巻 七. 本邦人被害에 関한 件 一•二 (66) [平壌•開城地方 情況 視察報告 件]
文書題目 (66) [平壌•開城地方 情況 視察報告 件]
文書番号 公信第三六号
発信日 明治二十九年九月十六日 ( 1896年 09月 16日 )
発信者 在京城 一等領事 加藤増雄
受信者 特命全権公使 原敬
(66) [平壌•開城地方 情況 視察報告 件]
公信第三六号
さきに平壌及び開城地方の情況視察のため出張させていた当館付巡査・武本欽次、橋口直矢より別紙の通り復命書が差し出されましたので御一閱のためこの一部を進達に及びます。 敬具
明治二十九年九月十六日
在京城 一等領事 加藤増雄印
特命全権公使 原敬 殿
[別紙]
文書題目 [一八九六年 九月 十一日付京城領事館付巡査・武本及び橋の右件 復命書]
日本人に対する感情及びその主因
平壌・開城のような日本人行商者の在留地は勿論その他京城から開城への沿道および各地においても、韓民の日本人に対する感情は次第に良好におもむき、最早今日では日本人に対し殺戮を企て暴行を加えようとする者などは全くなく、特に旅宿などは極めて懇切丁寧で旅行の不自由は少しも覚えさせず、この有様では今後の日本人行商者も危険の恐れはなく安全に行商を営むことが出来ると信じる。
実際黄海道・鳳山（ポンサン ＊黄州の南）より広州・中和（チュンファ ＊黄州の北）地方などは日本売薬行商者も少なくなく、あるいは沿道を単独で行商しながら往来するものもいる。特に平壌（ピョンヤン）の韓民などは日本の在留民を見て日本軍隊と同じ観念を持ち、「何時暴徒が襲ってきても日本人行商者がここに留まっていたら直ちに撃退するので我々は無事に生活できる」と人ごとに話し合っている有様であるので、これを見ても韓人の感情が良好であることを知ることができる。
こうして韓民の感情がここまで融和善好に赴いている主因はたやすくは知ることができないとしても、思うにこれは暴徒を平定したことが時日の漸移のなかで韓民の積日鬱蓄していた敵愾心を次第に雲散消亡させるに至ったのであろうと思う。
暴徒の状況及び兵器の精粗・種類
平壌・開城及び沿道は無事平穏であり、暴徒の蜂起の模様はなく、従来平安道にいた暴徒は一時勝手に暴れまわってのさばり良民を殺害し金穀を掠奪し狼藉縱横であったのだが、平壌鎮衛隊が撃退する所となり現時はことごとく咸鏡道（ハムギョンド）地方に逃走してその患いを留めていない。そしてこれら暴徒の中には、平安道の鉱山の坑夫が従来六千人以上に達していたのだが、その後何かの都合で昨今では三四百人だと言う。
これらの坑夫たちはこのようにことごとく解雇されたのでにわかに衣食の道を失って流浪窮苦し、多くはコソ泥の群に入り、旅客の財物を強奪略取して何とか食べていたような者たちが暴徒の蜂起に際し争ってこれに加わったのだろうと考える。
暴徒が携えている武器は旧式のものであるが決して侮ってはならない。大概は単発銃で元返ナルモ（＊五字不明）、中には十二連発銃を所有する者もあるらしい。これは平壌鎮衛隊が奪われたものの中にこの十二連発があるのである。これら暴徒中には雷管及び弾丸の製造法を心得ている者もいる、と。
この地方暴徒蜂起の原因は種々ある。その中には国王が外館（＊ロシア公使館、か）にいるのを憤慨して起ったものもあるというが、多くは衣食の道に窮して加わったものが多いと言う。
日本貨幣通用の程度及び種類
平壌・開城のような日本商人の在留する土地及びその付近にあっては、使用交換の道が多く存在するので日本貨幣の通用が広大であるようだ。しかしながらその貨幣の種類によっては多少の差異がある。
すなわち平壌における日本貨幣流通の状況は紙幣や銀貨は言うまでも無く、白銅・銅貨もすべて通用している。中でも銀貨などは最も韓民の誉め称えるところとなり、一円銀貨は騰貴して韓銭一円○八銭(即ち千五百四十文)に交換され、その他の紙幣及び小銀貨は同一の価に交換されているが、白銅及び銅貨に至ってはかえって低落して五銭白銅貨は韓銭四銭(即ち二十文)、一銭銅貨は韓銭八厘(即ち四文)に交換されているようだ。概して日本貨幣中白銅貨及び銅貨は韓人の評価が良くない。開城においては一円銅貨は韓銭一円○六銭(五百三十文)に交換しておりその他は平壌と同じである。沿道各地に至っては銀貨の外は一切通用しない。これは日本人で在留するものがなく行商者が少ないためだと信じる。
平壌在留日本人及び清人の商況
平壌在留民の総数は
男七十四名、女七名、合計八十一名。
その内、朝鮮内地へ行商中の者が九名。
その他、江西（カンソ ＊現・南浦特別市 に属する郡）五名、安州（アンジュ ＊寧辺の南、平壌の北）一名、順安（スナン ＊現・平壌直轄市北部郊外。平壌国際空港＝順安国際空港がある。）一名、黄州（ファンジュ）二名、寧辺（ニョンビョン ＊平安北道の東南部）二名。
以上皆売薬商である。
平壌在留民営業別
貿易商出張者七戸、医業四戸、氷商一戸
印判業一戸、雑貨商十七戸、陶器二戸
合計三十二戸
別紙平壌七月分及び八月二十二日までの取引高を調査しましたので参考のためここに添える。
目下平壌に在留する者は、総勢三十二戸、八十一名で、それぞれその商業も従事するとはいえ、夏期は各地とも例年商売沈滞の時期となり、特にこの春以来暴徒の奮起に当たり、在留者一同貨物を投げ捨て家具を捨て一旦引き揚げたのだが、その損害はまだ全く癒えておらず、各商とも一般に元気がない状態であったが、目下日に日に次第に好況に向かっているようである。
そして全局から言うと、平壌の商権は全く日本行商者の独占する所であって、平壌及び付近の韓民の使用品はすべて日本品を持てはやしているので日本商が好況に赴くのは言うまでもない。
たまたま清商などが前後数回同地に渡来したが、皆日本商が在留するのを見てたちまち手を拱いて去り、昨今は平安、黄海両道の海辺、及び義州地方においてただ二三名ずつの清商が塩・麻布・乾魚・生薑（しょうが）・砂糖漬の類を持ってきて大豆・小豆・粟・米などと交換して本国に送っているに過ぎないという。そして現時平壌に留まっているのはただ一戸だけで、それも英国領事の保護を受け何とか商売を営んでいる。一戸三口（＊三人か）、業務は雑貨だと言う。
開城在留民の総数は三十一名。
内、男二十八名、女三名。
他に人蔘買い取りのため来たものが全部で六七十名いる。
在留民営業別を挙げると、
医師二戸、雑貨商五戸、菓子商二戸、人蔘仲買商六戸
合計十五戸。内家屋所有権者が十戸。
商況は前月来不振であったが、八月下旬より次第に売口が良い方である。雑貨類で最もよいのは巻煙草 (三好製 ＊阿波の三好か)、 硫黄寸燐、陶器類であってその他の雑貨品は極めて売口が悪い。紡績品などは好景気で、木綿金巾のようなもののまず売口の良いものである。 (以下 欠文)
欧米人ならびに清人旅行の有無及びこれにたいする韓民の感情
平壌には外国宣�鎧佞箸靴導萋阿垢觴圓�アメリカ人一名、イギリス人一名、ロシア人一名計三名いる。これら三名のキリスト教宣�鎧佞蓮∋邑淒�前よりこの地に在住し、住民を慰めいたわり救恤（キュウジュツ）しつつ専ら布�海暴昌�している。
たまたま韓民の中に不時の変難に遭遇するものがあれば、率先して義捐金を募集して貧困を救い、孤独を助けるなど心がこもった世話をしている。近頃の事だったが、韓民の中に変死者がいたのだが、この宣�鎧佞�斡旋尽力して義捐金を募集したところ二百円余に達した、と。
そして欧米人の中では朝鮮内地を旅行するものは非常に少なく、八月十四日仁川に住むイギリス人一名が見物のため平壌に来たのだが同十八日には仁川に帰り、その他六月下旬頃ロシア国測量隊五名が同地に来て二週間位滞在しその後北進し、目下義州地方で測量に従事しているとの事である。
清国人は時々二三の旅行者を見るがこれがみな商売人である。
外国宣�鎧佞�日本商人に接触する時は充分な好意を表しているとはいえ、これに反し韓民の外国宣教師らに対する感情は、日本人に対しての感情とすこしも隔たりはない（＊悪い、ということか）。排外主義（＊日本に対する排外主義、か）が深く韓民の頭腦を浸潤していると見えるが、多くは欧米人に対して排斥の傾向はない。特に清人に対しては特別のもののようだ（＊全くない、の意か）。
現政府に対する感情
平壌及び沿道の韓民は、制度の復旧が一同の希望であって、現政府の新制度を破壊し旧制度を復活することを望んでいるようだ。また国王が外館（＊ロシア公使館）に留まることは憤慨痛惜しているようだとはいえ、当国の風潮では一般にこれを口外することを憚るもののようだ。
そして開城およびその付近では人民の知識が発達しているからか、やや新制度を尊重し、現政府の行為に喜んでいないようだ。（＊不明）
鷄林奨業団の現況
鷄林奨業団＊は組織後やや発展しているようだ。平壌及び開城にはそれぞれ大区を置き、各区長、副長、小区長、書記をおいてこれを統御し、貨物の出入表を調製し、団結輩同、団規整頓、賞罰厳行、将来において甚だ商業のためよい見込みがある。そして朝鮮各地に出る行商者に至ってもなおよく団規を守っているようだ。
そして平壌及び開城の在留民は時いよいよ冬期に近く、氷雪凍結して船舶の交通が遮断されることになれば、暴徒の来襲の恐れがないわけではなく、そのため警護のために銃器を具備したとの計画は既に調い、平壌では募集金が二百円に上り、開城でも目下募集中である、と。そうはいっても平壌在留民は結氷期に至ると警護のため警官の特派を要請しようとの話し合いがしきりに起こっている。
＊鶏林奨業団
https://ameblo.jp/dreamtale/entry-10009561524.html
内地売薬行商者の状況
日本の薬品は思いがけない効能、霊験があって病には必要だと特に韓民が信じているので特にこれを褒め称えている。ところが朝鮮内地行商中にこれまでたまたま不良の報告が出て来て、医師でないのにいい加減な施術を為し、僅かの薬に多分の水を混和して韓民に売り多分の金を受けるものがいる。甚だしい場合は疾病がどうであるかを問わず等外品を用いるなど乱暴な行為をなすものがいる。このようでは全く日本売薬の声価を落とすことになり遂には日本の行商者の大財源を失うだけでなく、さらに我が行商者の信用をも失うことになるだろう。今のうちにこの取り締まりをしておかなければならない。
朝鮮官吏の吾が行商者に対する状況
平壌では観察使、警察官、鎮衛大隊長など皆親切で日本人に対して常に充分の保護をなし、たまたま盗難に遭うものがいれば速やかに盗物を探り出して来て、あるいは不時の変災等では警務庁では巡検、鎮衛隊では兵卒を各戸に分けて警衛に怠ることなく盗賊などの侵入に備えていると言う。そして沿道各地の行商者で、偶々郡守を訪問するものがあれば、極めて懇篤で�醉討販蕕鮨圓掘�帰るときは自ら出て送り少しも傲慢無礼の挙動はなく、このような有様であれば人民も全く懇切であり行商者は安全に行商することが出来る。
以上報告します。
明治二十九（一八九六）年九月十一日
京城日本領事館付 巡査 武本欽治
同 橋口直矢
＊露館播遷아관파천、（1896年2月11日 - 1897年2月20日）李氏朝鮮の第26代王・高宗がロシア公使館に移り朝鮮王朝の執政をとったことを言う。
[別紙] [(付属書)]
文書題目 行商者に対して取り扱った事項
行商者に対して取り扱った事項
大坂府東区農人町東詰�醋斃Д凌癖�
京城居留地 平民 田中角次�� (二十年)
佐賀県西松浦今里町字有田町五百十三番戸
京城居留地 平民 古川光三�� (二十三年)
山口県大島郡外入村八十八番地戸
仁川居留地 平民 倉元久次�� (三十五年)
京都府二条島森橘柳町十七番地
仁川居留地 平民 河村辰次�� (二十九年)
長崎県長崎市丸山四十一番地 平民
仁川港各国居留地新第十九号地 田中寅次�� (三十三年)
福岡県上田郡大庭村字大庭五千三百四十三番地 (以下 欠文)
＊「二十年」などの「年」は「歳」か。
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