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2020年08月15日19:35

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追悼・渡哲也さん/笑っちゃいけないアクション・スター

■渡哲也さん死去 裕次郎さんの後を継ぎ…肺炎78歳
(日刊スポーツ - 2020年08月14日 19:24)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=8&from=diary&id=6194605

■「自分の訃報は…」渡哲也さんが妻に残した「遺言」
(日刊スポーツ - 2020年08月15日 04:01)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=8&from=diary&id=6194894

 ちょうど、BSプレミアムで、吉永小百合主演の日活版『あゝひめゆりの塔』を放送した直後の訃報だった。
 渡さんはこの映画の「現代」のシーンにちょっとだけ出演していて、クレジットでは「特別出演」扱い。日本で最も古い映画会社でありながら、大映と並んで斜陽の波をもろに浴びていた1970年代、石原裕次郎、小林旭の主演作ですら当たらなくなっていた頃、渡さんは文字通り「最後のスター」として、日活の屋台骨を支える存在になっていた。

 この頃の代表作と言えば、『無頼』シリーズや『東京流れ者』シリーズを挙げる人も多いだろう。近年、『ラ・ラ・ランド』を監督したデミアン・チャゼル監督が、自作を『東京流れ者』へのオマージュを捧げたものだと発言して話題になったことがある。それはもちろん鈴木清順監督の世界的名声があってこそのことだろうが、この映画の中で、渡さんは、身に危険が迫る中、突然主題歌を歌い出すいささかおかしな主人公「不死鳥の哲」役を、大真面目に演じている。
 清順監督が「意図的」なのは、敵のヤクザに「ちきしょう、暢気に歌いやがって」と言わせていることからも明らかだ。歌ってるおかげで、敵に位置を確認されて狙われてしまうのだが、我らが渡哲也は銃弾なんか平気で避けちゃうから大丈夫なのである。木村威夫の演劇を思わせるスタイリッシュな美術と相まって、シュールな快作として評価は高いが、まあ、正直、笑いをこらえる方が大変な映画ではあった。
 ただ、それでも渡哲也はとことんカッコ良かった。頭がオカシイだろお前と突っ込みたくなるが、徹頭徹尾、やっぱりカッコ良かった。石原裕次郎や小林旭は、暗い役を演じても天性の明るさがかえってそれを邪魔してしまう面があったが、渡さんは、憂いを秘めた影のある表情にこそ魅力があった。よく、演技派である弟・渡瀬恒彦が「役者」であるのに対して、渡哲也の演技を過小評価する人も少なくなかったが、そんなことは決してない。日活時代の諸作を見れば、それは自ずと理解できるはずである。

 コメント欄を見渡してみても、追悼の言葉を述べているのはTV時代の渡さんしか知らない人たちばかりだ。しかし、『大都会』『西部警察』シリーズの派手なカーチェイスと爆発ばかりの作品作りが、俳優としての渡さんの評価を低くしてしまった面は否めない。この時期の渡さんの演技者としての実力は、むしろドラマ版『浮浪雲』の雲の旦那のような飄々とした演技に表れていた。映画出演が激減していた近年でも、『誘拐』のように渾身の演技を見せてくれていた作品もある。
 再評価されて然るべき「役者」であると、声を大にして訴えたい。

 合掌。



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