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2020年07月28日17:22

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児童虐待〜連鎖の軛(2) 子供を守る法律の盾「親権停止」その先に

■ひきこもり「自立支援業者」を監禁罪などで刑事告訴…破産で賠償なし、被害男性「逃げ得許さぬ」
(弁護士ドットコム - 07月28日 15:42)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=149&from=diary&id=6173761
児童虐待〜連鎖の軛(2) 子供を守る法律の盾「親権停止」その先に

 西日本の児童相談所(児相)に勤務する坂本優太さん(27)=仮名=はこの春、遠方の児童福祉施設を1日がかりで訪問した。虐待を理由に児相が親との長期分離を決め、約半年前に施設に入所させた小学1年の桜ちゃん(7)=同=に会うため、そして両親の「親権」を停止したことを伝えるためだ。

           
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  児童虐待〜連鎖の軛(2) 子供を守る法律の盾「親権停止」その先に

 父親が家で日常的に暴力をふるい、継母も止めようとしない。自由に外出できずに小学校への通学すらままならなかった桜ちゃん。児相は身体的虐待、ネグレクト(育児放棄)、心理的虐待と認定。一時保護した上で「早期の改善は見込めない」と判断し、施設入所を決めた。

 入所当初、桜ちゃんはネグレクトの影響で成長が遅れていたためおむつが取れず、筋力不足でよく転んだ。表情はぎこちなく、周りの子供との接し方が分からないのか、けんかも多いと坂本さんは聞いていた。

 少しずつなじんでいると思っていたが、久しぶりに会った桜ちゃんの表情はやはりこわばっていた。「また家に戻されると思ったのだろうか」。緊張しているのが伝わった。

 まずはひたすら一緒に遊んだ。トランプをしたり、縄跳びをしたりしているうちに、桜ちゃんに自然な笑顔が増えていった。坂本さんは頃合いを見計らい、一番の目的の「親権停止」の話を切り出した。

 ■伝える仕事

 児相は、虐待の疑いがあり、緊急に親子を引き離した方がいいと判断した場合、まず一時保護をする。だが、その期間は2カ月以内とするのが原則。その間に家庭の調査を行い、子供が親元で暮らすことが難しいと判断した場合には、施設や里親に子供を預け、家庭の改善や子供のケアを時間をかけて行う。親権を停止しなくても、親子を引き離し続けることは可能だ。

 ただ、桜ちゃんの父親は気にくわないことがあればすぐに相手先に怒鳴り込み、脅迫するような性格だった。今は施設入所に同意しているが、気が変われば親権を理由に施設を脅し、桜ちゃんを連れて帰ろうとしかねない。

 そこで児相はこれまでの父親の素行記録などの証拠を集め、児童福祉法などに基づき家庭裁判所に親権停止を申し立て、認められた。停止中の父親は「他人」。桜ちゃんの居場所を知ることも、生活に口出しすることもできない。

 子供であっても自分が置かれた状況を知る権利がある。坂本さんは自作した切り絵を使って、ゆっくりと話し始めた。

 「子供たちのことを決める『親権』というカードがあって、お父さんとお母さんが持っていたの」「それがよくないと思うから、家庭裁判所というところに決めてもらって一度取り上げてもらったんだよ。いいかな」。精いっぱい分かりやすい言葉で伝えると、考え込むような様子で聞いていた桜ちゃんは「うん」とうなずいた。

 ■弁護士と連携

 誰にも頼れなかったり、市町村が支えきれなかったりして「重症化」した虐待家庭に対しては、児相が最後のとりでとして力を発揮し、桜ちゃんのような幼い命を守る。そのために幾度となく法改正が重ねられ、家庭への児相の介入の切り札となる“法律の盾”が与えられてきた。

 その一つが桜ちゃんのために使われた親権停止。裁判所への申し立てが認められれば、最長2年間、親権を止めることができる。確実に親子を引き離して子供を守り、親を強く指導するための制度で、平成24年4月施行の改正民法・児童福祉法で導入された。それまで親権を制限する制度は、親権を完全に奪う「親権喪失」に限られており、将来の親子関係の修復を見据えると、行使しづらい側面もあった。

 児相が裁判所に親権の制限を求めた件数は、喪失のみだった23年度は9件だったが、停止も可能となった24年度は38件、25年度は45件と急増。28年度には最多の59件を数えた。

 また28年の改正児童福祉法を機に、全国の児相で弁護士配置も進み、連携が取られるようになった。桜ちゃんのケースでも、坂本さんは児相に勤務する弁護士と業務にあたっており、「法律を駆使することで介入しやすくなった」と明かす。

 ■何が幸せか

 親権停止と、それを桜ちゃんに伝えるという重い仕事を終え、少しほっとした坂本さん。だが、これで終わりではない。

 親権停止は2年後に再度申し立てることができる。そうでなくても児相は、桜ちゃんが18歳になるまで、ずっと親と引き離しておくこともできる。しかし、それは残りの人生を親と関わらずに生きていくという選択に等しい。

 一方、施設に入ったころ「もう家には帰りたくない」といっていた桜ちゃんは、家での楽しかった思い出を話すようになっていた。いずれは戻りたいと思うかもしれない。父親のことも含め家庭の状況を改善させることができれば、親権停止を取り消して家庭に戻すことも考えられる。

 桜ちゃんにとって本当の幸せは何か。強い権限を持つからこそ、児相はそう自問しながら親子と関わり、家庭の立て直しに取り組んでいく。

 大人になるまで子供に向き合う児相にとって、施設入所や親権停止はゴールではなくスタートだ。桜ちゃんの屈託のない笑顔を眺めながら、坂本さんは職責の大きさを改めて感じた。


※記事元:産経新聞より


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