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2020年06月19日14:42

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『私の最高のハズレくじ』50話

グラン王国は奇襲を仕掛けてきた野盗から防衛に成功し、援護に来てくれたマルロ王国と人獣に深く感謝を述べ、リキに対しては国民全員が土下座をして謝罪してきた。

「お…オイ!?皆して止めろよ!」

「いや、お主に対する非礼はこれだけでは収まらん。お主が望む事が有れば何でも聞き入れようぞ」

見返りを考えていなかったから、どうしようか悩んだ末に皆に伝えた。

「だったら、これまで通りに接してくれ。王国を救ったからって畏まられると、コッチがやりにくい」

「ほ…本当にそれで良いのか!?もっと贅沢な事でも」

「これが俺の贅沢だ。それとも何か?何でも聞き入れるってのは嘘か?」

「い…いやいや!?…分かった。お主には今後とも世話になるのぅ」

無事に和解する事が出来て、再び歓声が沸き上がった。
後日、グラン王国国王とミルフィーユ王女が今回の騒動で、ズール王国との交流を断つ事を抗議した。
ズール王国は、エミリオの単独行動によるモノで王国では責任を取れないと主張するが、2度も人の命を奪い兼ねない行いをした者を放置した王国への信頼はガタ落ちとなっている。
その後、エミリオの消息を調べたのだが落下した地点から自力で逃走したか、人食い虫の餌食になったかと推測されている。
事実を知るミルフィーユ王女達は何も語らず、ただ「あの男の事を考えるのは止めましょう。これから、平和な日々が訪れるのですから」とにこやかに話した。





「よーーし!!これから復興作業を再開するぞ!」

治療中の兵士達を除いてグラン王国の復興作業が始まった。
人員不足について悩んだが、ミルフィーユ王女の厚意でマルロ王国から派遣された事で解消され、国中が活気づいていき、とても順調に進んでいるのだった。
リキも協力すると言ったのだが、皆から英雄は休む様に言われ、どう暇潰ししようか悩んでいた。

「はぁ〜〜…何もする事が無えなぁ」

「まぁまぁ、グラン王国が平和な証拠なんだから良いじゃん」

「そりゃそうだけどよぉ…」

木の側で横になり、空を眺めている内に眠りに入っていった。

(……おっ!良い寝顔だね)

何度かリキの寝顔を見てきたが、たまに子供みたいな寝顔をする事が有り、それを見るのが楽しみの1つになっている。

(………シルク)

頭の中に直接呼び掛ける様な声。
大女神様からの通信だ。
機密事項が有る為、誰にも見られない場所に移動しなくては。




(…何だ?この寝心地の良さは。頭が凄く落ち着く感じがする)

ゆっくり目を開けると真っ青な空の端からヒョコっとミナが顔を覗き込んできた。

「目が覚めちゃいましたか?」

晴天にも負けない晴れやかな笑顔。
それを見ながら現状を聞いてみた。

「今…俺はどうなってんだ?」

「私の膝枕で気持ち良く寝てますよ」

「道理で寝心地が良い訳だ」

ミナがとても満足した表情を見せる。

「一度やってみたかったんです。好きな人に膝枕してあげるのを」

「俺で良かったのか?」

「リキさんだから良かったんです。それに、リキさんの寝顔を堪能できましたし」

それを言われると、少しこそばゆい気もするが、今は流しとこう。

「ありゃ?何か良い雰囲気の所に来ちゃったみたいだね?」

「お前、何処に行ってたんだ?」

「ちょっとね。ゴメン、ミナ。リキを借りるよ?」

ミナが「どうぞ」と返事すると、シルクは王国の隅っこにリキを連れていった。
その様子を偶然見掛けたミュー隊長が後をつけていく。

(ムフフフ。後ろから抱き付いて驚かせちゃおう)

「おいおい。何で人気の無い場所に連れてくんだ?」

「聞かれちゃマズイからだよ」

意味深に感じたリキは「例の試験か?」と聞くと黙って頷いた。

(……いたいた!あんな所にいるなんて。何を話してるのかしら?)

「…ここを去る日が近いって訳か?」

「そうなるね」

(!?)

聞き違いであってほしい会話だった。

「リキとしては、ここに居たい…かな?」

「まぁ、向こうよりは居やすいけどな。けど、いつかは帰らなきゃいけないんだって、いつも思ってたさ。んで、いつになるんだ?」

「それが………」

ギュッ………

「ぅおっ!?」

無言で後ろからリキに抱き付いてきたミュー隊長に2人は聞かれたのかと顔を見合わせた。

「……今の本当なの?」

2人して「やっちゃった」顔。

「この国を出て行くの?」

言った方が良いかアイコンタクトを送ると、黙って頷いてきた。

「……………あぁ」

「また帰ってくるのよね?」

返答出来ない質問だった。

「ねぇ、お願い!!このまま王国に住んで!貴方を失いたくないの!」

「……………」

リキだってそうしたい。
でも、それを口にする事が出来ない。

「俺だってココに居てぇよ。皆には良くしてもらってるし。けどよぉ……」

そこから言葉が出てこない。
ミュー隊長はリキから離れると、走り去って行き、一瞬追い掛けようとしたけど、足が前に出ない。

「………くそっ!?」

出来るなら誰にもバレずに去りたかったのだが、やはり上手くいかないものか。

「ゴメンね、リキ」

「何を謝ってんだ?出会いと別れは必ず起こる事なんだ。仕方ねえだろ」

その言葉はとても胸に突き刺さる。
そう、この試験が終わるという事はリキと……
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