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2020年06月16日22:50

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『私の最高のハズレくじ』47話

ザシュッ……

「ハァ……ハァ……」

城目前まで攻められ、疲労が見えながらも戦い続けるドン副隊長。

「頑張るじゃねえかよ、副隊長さん?」

「当たり前だ!この国は絶対に貴様らにやらん!」

「そうかいそうかい」

こちらを馬鹿にしてくるが、攻撃してくる気配が無い。
まさかと思い、周りを見ると別の場所から野盗が城に近付くのが見えた。

「しまった!?」

「ヒャハハハ!今頃気付いても遅いよ〜」

「ヒャッハーー!城に一番乗り!」

「待てぇ!やめろーーーー!!」

間に合わないのが分かってるが、必死に追い掛けに行く。
だが、それよりも速いのがやってきた。

ドドドドドド………ドゴォッ!!

「ひでぶッ!?」

突如現れし馬車を高速で引く馬に体当たりされた野盗が豪快に吹っ飛ばされた。

「…な…何だ!?」

ドン副隊長も不意に現れた馬に動きを止めてしまった。

「オーオー!?お前ん所の馬、速くて強いなぁ!」

「王子様に褒められて、光栄の至りです」

「フム?状況は思ったより劣勢でしたな」

「ですが、覆す事は可能ですね」

そんな会話をしながら馬車から降りてきた3人。
マルロ王国の執事ナーバス、同じくメイドのサーラ、そして……

「おもしれぇケンカしてんじゃねぇかよ?俺も混ぜろや!」

国から追放されたリキが戻ってきた。
城から見ている人達も自分の目を疑ってしまう程の光景だった。

「……リキさん!?」

喜びよりも驚きの眼差しでリキを見つめるミナ。

「お姉ちゃん!」

喜びの笑みをしたロミオが戻ってきた。

「ロミオ……どうして、リキさんが?」

「実はね……」

少しだけ!時間を遡る。





「うわぁぁぁーーーん!?」

大声で泣き叫ぶロミオにリキが声を掛けた。

「泣いてる暇なんてねえぞ?」

「だって…だって……」

「早くグラン王国に行くぞ!」

「えっ?リキ、戻るの?」

「ロミオは勝負に勝ったんだぞ?“ロミオから見て右”にコインが入ってたんだからな」

「……お兄ちゃん!!」

泣き叫んでいたロミオの顔が一気に晴れやかになった。

「ミルフィーユ、ちょっと頼んで良いか?」

「王子様のお役に立てるのであれば」

「それと、シルク。お前は急いで……」





ロミオの話を聞いたミナは大粒の涙を流し、リキに向かって何度も「ありがとう」と呟いた。

「エミリオ!俺達をハメた借り、万倍にして返すからな!」

「フッ……ハハハハハハハ!たった3人増えただけだろうが!戦況を理解してねえのか?」

「リキ!!」

激しい地鳴りと共に国の出入口から聞こえてきた呼び声。
舞い上がる砂埃の中から現れたのはガアルと仲間の人獣達だ。

「リキ タタカウ ワタシモ タタカウ!」

「へぇ〜!結構人数いるじゃねえか?」

「言われた通り呼んできたよ」

「オウ!シルク、お前も城の中にいな」

「了解!」

「リキ!」

城から出てきたミュー隊長がリキを目視で確認すると、ダッシュで駆け寄り抱きついた。

「ごめんなさい……ありがとう、戻ってきてくれて」

「礼ならこのケンカを終わらせてからにしな」

「そうね。でも、その前に…」

ミュー隊長は皆が見てる前で堂々とリキに口付けしてきた。

「…………フゥ〜〜。おかげで力が湧いてきたわ」

「ドン!負傷した兵士を城に運んどけ」

「指図する…な…〜〜っ…頼むぞ」

いつもなら、怒って言い返すところだが、今回は従った。

「んじゃ、反撃行くぜ!!」

人数・戦力共に大幅に上がったグラン王国は野盗に総攻撃を仕掛けた。
さっきまで、余裕で攻めてきた野盗の集団も予想外の展開に戸惑いだす。

「エミリオ!どうなってんだよ!?アイツが居ない今ならチャンスだって言ったじゃねえか!」

「〜〜〜っ!?」

エミリオは言葉が出なくなった。
自分の作戦は完璧の筈だったのに、敗戦の色が見え始めた現状を受け入れ難かった。

「ゴウダ…リキ…!?」



「ガァァッ!!」

ガブッ!!

「イギャアアァァーーッ!?」

殴る蹴る噛み付く等の野性味溢れる攻撃をしていくガアル。

「リキ キズツケタ オマエラ キライ!」

キィーン!

「老いぼれが争いに入ってくんな!」

ナーバスを相手に剣を交える野盗。

「……フム」

ヒュンっ……

素早い身のこなしで野盗を横切ると、野盗は静かに倒れた。

「伊達に歳は取ってないのですよ」

バシッ!ヒュッ……ドスッ!

「ぶほっ!?」

鉄製の箒を巧みに操り、向かってくる野盗を次々に倒していくサーラ。

「こいつ、本当にメイドなのか!?メチャクチャ強いぞ!?」

「全く話になりませんね?リキ様をお相手する方が戦い甲斐が有りますよ」

ズバッ!!

「ぐぁっ!?」

リキに化けた4人を1人で相手するミュー隊長。

「見れば見る程似てないアナタ達がリキに成りすましていたなんて……許せない……見抜けずにリキを叩いた自分が許せない!!」

ドゴッ!ゴスゴス…グシャッ!!

リキは向かってきた野盗をカウンターで顎にストレートパンチをかまし、動きが止まったところで頭を掴み何度も壁に当て続けた。

「こうなりたい奴、いる?」

そう言って見せてきた野盗の顔は血で真っ赤に染まり粘土細工の様にボロボロになっていた。

「ヒィッ……ヒィィーー!?」

狂気に満ちたリキの笑みを見た野盗達は我先にと逃げ出した。

「見ろよ!野盗の数がドンドン減っていってるぞ!」

「マジかよ!?城の目の前まで来た時はダメだと思ったのに」

リキが戻ってきてくれただけで、これほど状況が変わるものなのか。
改めて、彼の存在の大きさを感じたミナはひたすらリキを見つめていた。



「もう無理だ!?俺は抜けるぞ!」

「俺も辞める!勝ち目無えって!?」

半数以上がやられてしまい、戦力の差を痛感した残りの野盗が退却していった。

「なっ…お前ら!?勝手に逃げんじゃねえ!」

誰もエミリオの声を聞かなかった。

「よぉ、エミリオ」

エミリオを囲む様にリキ達が集まっていく。

(ゴウダリキ……また、邪魔しやがって…………)

「どうすんだ?っつっても、逃がさねえけどな」

「……………ゴウダリキ、俺とタイマンで勝負しろ!」
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