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2020年05月18日23:28

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テーマ別『現代マンガ選集』刊行開始!

●ちくま文庫 オリジナル・アンソロジー刊行開始 現代マンガ選集
http://www.chikumashobo.co.jp/special/manga_sensyu/

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 5月12日に第1巻が発売された、ちくま文庫の「現代マンガ選集」。
 手前味噌でも自画自賛でもなく、「日本のマンガは世界一ィィィ!」と思ってるマンガファンは多いんじゃないかと思う。手塚治虫以降、日本のマンガ表現が劇的な発展を遂げ、他国の追随を許さないほどに発展してきたのは紛れもない事実なのだ。
 でも、実際に「マンガファン」を自称する(特に若い)人たちと話をしてみると、恐ろしいくらい、マンガを読んでいないことを知って愕然とさせられる。「ジャンプマンガ」しか読んだことがない、なんて十代はザラだ。手塚治虫を一冊も読んだことがないなんて、あっけらかんと口にするものだから、もはや何をか言わんや。なのにこうした自称マンガファンは、大抵がなぜか自信満々で、マンガについて語らせたら俺の右に出るものはないみたいな顔をするのである。なんでや。
 これだけ大量のマンガが出版されていれば、全てのマンガに目を通すことなんて不可能だ。それにたくさんの本を読んでいればエラいというものでもない。けれども、ろくにマンガを読んでもいないのにマウントを取りたがる人間が多いのには、正直、閉口する。こいつらの口癖というのが決まっていて、「(こんなマンガの)どこが面白いか分からない」だ。ホント、ろくに読んでもいないのに貶すんだよな。そのマンガがつまらなく感じるのは、たいてい、自分の中にその作品を面白がる「回路」が形成されていないからだ。そしてその「回路」は、「マンガを読むこと(あるいは描くこと)」でしか作られない。
 仮にその「回路」を「マンガを理解するための脳」=「マンガ脳」と呼ぶとすれば、それはマンガを読み続けることによって鍛錬されるのだ。先述したとおり、マンガは量を読めばいいというものではない。そのマンガが生み出してきた表現効果、我々に与えてきた感動の本質、それを捕まえることができなければ、何百、何千、何万冊マンガを読んだところで、それは決して自分の血肉とはならない。

 マンガ選集、全集の類いはこれまでにも数多く出版されてきた。しかし、その多くは「作家別」であったり、「掲載誌別」であったり、「年代別」であったり――。マンガを読むというよりは、「記録」としての側面が強調されていた。
 今回のちくま文庫版のように、「テーマ別」というのは案外少ないのである。つまり、「このマンガはどういう視点で読めばいいのか」というガイドとしての役割を果たすことを主目的としていると言える。

 「マンガ脳」が生育されていないのにエラそうに振る舞う人は、すぐに「リクツなんてどうでもいいんだよ、マンガは面白ければいいのだ」と高慢ちきなことを口にする。しかし、実際には「マンガの読み方」を習得していないから、自分が理解できないマンガに出会うと、「マンガの方が悪い」と言い出すのだ。自分がバカだからとは決して思わないのだね。「マンガの面白さ」を分かったつもりになってはいるが、全く分かっていない証拠である。

 そんなことはないと言うのなら、例えば第1巻収録の岡田史子『ガラス玉』の何が凄いのか、「マンガに技法的な革新をもたらした」とはどういうことなのかを解説してみてご覧よ。私もムツカシくてできんよ(苦笑)。
 マンガ脳を持たざる方々には、今回のラインナップを見ても、誰が誰やら、作品タイトルも初めて聞くといった人も少なくないと思う。古いものでは半世紀以上昔の作品もあるが、今読んでも決して退屈などはしない。実際に目にすれば、その斬新さ、繊細かつ大胆な表現のみずみずしさに、刮目するのではないか。

 本当は、一作一作について語りたいところだけれど、作品数が多すぎて、とても語り尽くせる気がしない。
 まあ、私が下手な解説なんてしなくても、作品を読めば一目瞭然、百聞は一見に如かずである。これだけ芳醇な世界を日本マンガが築き上げてきたことに感嘆し、マンガが内包する底なしの魅力に取り付かれてしまうことは請け合いである。
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 ……しかし、驚いたことに、3巻までのラインナップで手塚治虫作品が一作も選ばれてないんだよね。これから先、SFやエロやホラー、ファンタジーの作品集も出るようなので、そちらに収録されるのかもしれないけれど、手塚が開発した「マンガ表現」も腐るほどあると思うんだがなあ。
 人口に十分膾炙してるから外されたのかな? でも最近のワカモノって、本当に手塚すら読んでないからなあ。没後三十年を超えて、もっと再評価はされていいと思うんだけど。

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●マンガに技法的な革新をもたらした 作家・作品を集めます。
『表現の冒険』  中条省平編
【収録作品】
石ノ森章太郎「待つ」/岡田史子「ガラス玉」/つげ義春「ねじ式」/林静一「赤とんぼ」/佐々木マキ「かなしい まっくす」/長谷邦夫「ルパン二世」/ダディ・グース「砦の下に君が世界を Macbeth ’69!」/みなもと太郎「ホモホモ7只今参上」/真崎・守「挽歌・子守歌」/宮谷一彦「人力死行機」/安部慎一「猫」/上村一夫「おんな昆虫記」/赤塚不二夫「実物大のバカボンなのだ」/谷岡ヤスジ「ベロべーマン」/小池桂一「母をたずねて三千里」/高野文子「病気になったトモコさん」/松本大洋「だみだこりゃ」/西岡兄妹「林檎売りの唄」
ISBN:978-4-480-43671-9  定価:本体800円+税

●ギャグマンガを中心にして、しかし、ジャンルにこだわらない〈笑い〉の諸相を追求!
『破壊せよ、と笑いは言った』 斎藤宣彦編
【収録作品】
石ノ森章太郎「テレビ小僧」「さるとびエッちゃん」/つのだじろう「ブラック団」/長谷邦夫「ライク ア エロチック コミック ストリップ」/赤塚不二夫「ギャグゲリラ」/和田誠「007 贋作漫画集」/佐々木マキ「見知らぬ星で」/ 東海林さだお「新漫画文学全集」/秋竜山「Oh☆ジャリーズ」/滝田ゆう「寺島町奇譚」/水木しげる「新、あり地獄」/橋本治「とめてくれるなおっかさん」ポスター、「東大版博徒列伝」/谷岡ヤスジ「ヤスジのメッタメタガキ 道講座」/ダディ・グース「貧乏くじをぼくが引く!」「月光仮面暗殺物語り」/赤瀬川原平「櫻画報」/山上たつひこ「喜劇新思想大系」/林静一「火の玉怨歌」/谷川晃一「鏡面と修羅」/高信太郎・佐伯俊男「情念魔我人版 天才ばかぼん」/杉浦茂「ブリーフ補佐官」/いしいひさいち「バイトくん」/大矢ちき「ぼくのすてきなポシイおばさん」/高野文子「ウェンディのクリスマス」
ISBN:978-4-480-43672-6  定価:本体800円+税 6月刊行

●日常、家族、身辺雑記。〈世界を新たな「低い目線」から捉える作家・作品を集めます。  7月刊行
『日常の淵』  ササキバラ・ゴウ編
【収録作品】
楠勝平「暮六ツ」/滝田ゆう「寺島町奇譚」/つげ義春「チーコ」/永島慎二「仮面」/つげ忠男「或る風景」/鈴木翁二「東京グッドバイ」/安部慎一「やさしい人」/水木しげる「昭和百四十一年」/つりたくにこ「僕の妻はアクロバットをやっている」/やまだ紫「性悪猫」/近藤ようこ「ものろおぐ」/高野文子「午前10:00の家鴨」/池辺葵「ねえ、ママ」/安達哲「バカ姉弟」/いましろたかし「盆堀さん」

●8月刊行
『異形の未来』 中野晴行 編
▼SFに包括される問題系をできるだけ広く捉え、ラディカルに世界解釈の枠組みを解体する。

●9月刊行
『俠気(おとこぎ)と肉体の時代』 夏目房之介 編
▼格闘技、スポーツ、アクションなどを題材とし、〈肉体の時代〉の展開を映しだす。

●10月刊行
『悪の愉しみ』 山田英生 編
▼悪、犯罪、暴力、そしてエロティシズム。影の領域に挑んだ作家・作品をまとめる。

●11月刊行
『恐怖と奇想』 川勝徳重 編
▼ホラー、ファンタジー、奇妙な味、ブラックユーモアを色濃く帯びた作品を重視する。

●12月刊行
『少女たちの覚醒』 恩田陸 編
▼少女マンガの革新を起点にして、女性マンガの展開を扱う。
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