mixiユーザー(id:1418555)

2020年05月17日10:43

181 view

こんなもんでいいんですわ

昔、初めてまとめた原稿を読んでくれた出版社の社長から、中川さんの文章は格調と品があるのにリズム感が心地よいが、いったいどこで勉強したのかと聞かれた。
特に勉強ってのはしてないけど、子供のときから本読むのは好きでしたと答えたら、どんな作家の本を読んできたのかと。
そこで、いちばん長くたくさん読んできたのは中学生のときからいままで吉村昭やと言ったら社長、はたと膝を打つ。
なるほど、あの調子にそっくりなんですね。
習うより慣れろとは言うけど、常に触れていることで自然と身につくもんってあるんやね。
それ以来、吉村昭先生に私淑させていただいてるしだいでごんす。

で、家でも店でもよく言われるのが、いったいどこで料理の勉強をしてきたんですかってこと。
いや、思いつきでやってるだけで、ただの天才に過ぎへんでと言っては笑いにしている。
あえて言うとするなら母ちゃん、昔の人なので和食が中心、スパイスなんて言うたらせいぜいコショウとガーリックくらいしか知らない人なので、そのへんの使いかたはただいま勉強中。

てのはともかく、じつはいつも参考にさせてもらってる人が居る。
料理研究家の土井善晴さん。
土井まさる先生の息子さんで、柔らかい関西弁、中でもいまでは使う人の少ない船場言葉でほんわかと料理を紹介してるあのかたが口癖のように言うのが、「こんなもんでいいんですわ」。
これって、座右の銘としているバカボンのパパの「これでいいのだ」に通じる名言なのではないか。
プロセスがどうとか何グラム、何ccやなく、こんなもんでええかなってのが正解、できたもんが美味しかったらそんでええんちゃいますのってね。

この土井善晴さん、いまは土曜深夜にやってるテレビ朝日系「おかずのクッキング」の前半を担当してはって、毎週見ているもので、いつの間にか影響を受けてたのかも。
適当さが心地よいんよねえ、この人の料理。

今回はからし菜のからし和え。
鍋にたっぷりのお湯を沸かし、からし菜を投入。
茹で上がったらからし菜をトングでつまんで冷水へ。
残ったお湯に牛肉を潜らせる土井先生を見て、アシスタントの女子アナがびっくり。
えっ、それ使うんですか。
こんだけにまたお湯沸かすんですか、こんでよろしいやん。
うん、そりゃまあそうやけど、普通は「ご家庭ではそのままの鍋でなさってもいいですよ」とか言いながら別に沸かしたお湯でやれへんか。
茹で上がったからし菜と牛肉を和えるやり方もただもんやない。
小鉢を用意して、チューブの練り辛子を搾り、醤油とミリンを適当に流し込んだかと思ったら、そのまま混ぜだした。
やるぞ、やるぞやるぞと思って見てたら、やっぱりやってくれた。
そこにそのままからし菜と牛肉を投入し、コネコネと混ぜ合わせたらそれで完成。

食卓に出す食器の中で和えてそのまま出すって、こんなやり方する料理研究家って土井善春と平野レミくらいなんちゃうか。
しかも、平野レミには強引ながさつさが付き物なのに対し、土井善春には妙な説得感と上品さがある。
そこにはつまり、こんなもんでいいんですわってのがあるからなんかもな。

今回のを見て、いつの間にか影響受けてることに気付いてしまった。
チャンジャにスパイスを加えて和えたの出すとき、知らん間に同じことやってたし。
えっ、そのまま出てくんのかいと言われて、こんなもんでええやんと答えたのは言うまでもない。

2 1

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する