とろとろ日記１０７「雲梯の差」

公園の遊具、各地で使用禁止に
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「この公園も明日からは遊具の使用禁止に踏み切りたいと考えています」
「やはり子供たちの密集感染が心配なわけですね？」
「いえいえ、それはあくまで建前です。今は子供たちの利用はほとんどありませんから。ブランコに乗ったり鉄棒にぶら下がってるのはたいてい家に閉じ込められた鬱屈を発散させるためにやってきた大人たちなんですよ。もし子供たちが遊具をそんな大人たちに独占にされているのを見たらどんな気分になると思います？」
「なるほど、大人たちが遊具を独占している光景を子供たちに見せないための使用禁止なんですね」
「その通りです、見てごらんなさい、あの『ジャングル・ジム』に集まって一生懸命身体を動かしている運動好きな大人たちの自分勝手で能天気な姿を」


「誇り高き悪魔」や「ロック界最強の実業家」として知られるKISSのジーン・シモンズを追ったドキュメント番組を見た。
現役最後のワールドツアー日本公演で撮られたバックステージの様子が非常に興味深かった。自分で鏡を見ながら隈取を入れる姿、重量２０キロのステージ衣装を装着する様子にはプロとしても決意と自負があった。骨太でストレートなロックをやる一方で、本名のユダヤ名をなぜアメリカ人受けする名前にかえたのか？とか、なぜ顔面に化粧をして奇態なコスチュームに身を包むようにしたのか？とか、なぜ派手なステージングを取り入れたのか？とかについてはすべて母親の教えの影響だったようだ。

彼の母親はユダヤ人でホロコーストの生き残りだった
両親と兄が目の前で殺された
新しい生活を求めてニューヨークに渡ってきたが彼が小さい時に夫と離別
週に6日、一日１２時間働いてジーンを育てたという
その母親の口癖は「生きている日こそが最良なのよ、生きてさえいれば勝ちなの。生きていれば何でもできるわ」だった。
ジーンも小学校時代から新聞配達をして家計を助けた。
たまに仕事がいやになってぐずぐずしていると必ず母親に「何が不満なの？あなたに不満を言う権利なんかないのよ！」と尻を叩かれたという。
「生かされている限りは上を目指す責任がある」それが彼女の信条だった。

彼が化粧し変わったコスチュームを着て派手なステージングを考えたのもすべて上を目指すための工夫であり知恵だった。やがて彼らはのし上がりユニークな人気バンドになった。初めてヒットを飛ばした後、彼は母親の目の前に大きな金額の書かれた小切手を差し出した。その時彼女は「おめでとう、おめでとう」と言って彼の成功を祝ったあとで、そっとその小切手を横に寄せ「さあ、これからどうするの？」と彼に訊いたそうだ。そのとき彼は「これからも毎朝早く起きて今まで以上に一生懸命頑張るのか、それともそのままふんぞり返って横柄な態度でくらしていくのかの二者択一を迫られた気分」だったという。もちろん彼に選択の余地はなかった。

メンバー交代を繰り返しながら彼は厳しい戒律と激しい熱情のもとにKISSを５０年近くトップロックバンドの地位に維持してきた。しかし７０歳を迎えてさすがに体力が続かなくなったと本音をもらしている。２時間２１曲を歌った後はカメラを避けるように無言で重いコスチュームを引きずりながら楽屋に戻っていく姿が印象的だった。楽屋の椅子に座り顔の化粧を落としながら彼はこう呟く。「ツアーをやってて一番うれしいのは若いファンが親と一緒に来てくれてるのを見ることさ。ニンジンやハンバーガーはお金で買えるけどこいつはお金じゃ買えないからね。僕はそれを一番愛してる」


それでもあくる日には日本のエージェントとグッズ販売の打ち合わせをしていた。スマホ片手に条件を交渉しすぐさま部下に指示を与える。その姿はまさに優秀なビジネスマンでそのもの。資産総額は３７０億円、それでもまだ金は欲しいという。「もうこれ以上金は要らないなんて言う連中をおれは信用しないね」とのこと。「ここまでやってきて悪くはなかった思っている。ビートルズほどにはなれなかったけどね」とシモンズが語るKISSの最期のワールドツアーは来年の７月ニューヨークの公演まで１２０カ所にわたって続くそうだ。長年一緒にやってるマネージャーは彼のことを「強烈な男さ、彼は何事も全力でやる。ジーン・シモンズであることが楽しくて仕方ないんだろうね」と評している。コロナ騒動の影響でツアーがどうなるかは微妙だが彼らには最後まで全力で突っ走ってほしい。

日本の暗鬱その１４

できることはなんでもやりますのドイツ政府
できないことはなるべくやりたくないの日本政府

もちろん国柄や国情や産業構造など二つの国を同時には論じられないとは思うけれど
両首脳のレベルの差だけは瞬時に計れるのではないだろうか