ウィキの定義では、「遺伝子工学とは、遺伝子導入や遺伝子組換えなどの技術で生物に遺伝子操作を行う事」、「分子生物学は、生命現象を分子を使って説明（理解）することを目的とする学問」と定義されていますが、実態はかなり違います。
共通しているのは、ＤＮＡ(またはＲＮＡ)を主に研究することです。
それに加えて最も大きな違いは、分子生物学は”基礎研究”、遺伝子工学は”応用研究”または”実用化”を目指すものであること。
どちらを名乗るかは、研究者の価値観、それと「研究費」です。 日本では”基礎研究”より”応用研究”のほうが、獲得できる研究費が桁違いに多い。 しかし人間の心理とは面白いもので、カネになる研究よりもならない研究のほうが”偉い”と思うのよね＾＾；
50年くらい前の分子生物学の黎明期には、ＤＮＡの一次構造（塩基配列(シークエンス)）の決定はとても大変な仕事で、化学の知識が必須でした。 また転写や蛋白合成の研究には生化学が必要でした。
ところがＰＣＲ法が発明され、ＤＮＡシークエンスが機械で自動的に出力されるようになった時代に、もう一つの”革命”が起きます。
それが「キット」の登場です。
その前なら、色々な薬品を混ぜたり、生物試料から”抽出”して実験の様々なパーツを手作りしていたものが……カネさせ出せば、簡単に手に入るようになりました。
さらに実験に必要な試験管やピペットなども全てキット化されました。
またＤＮＡは（ＲＮＡと違って）非常に丈夫な物質なので、扱いが簡単であることが分かりました。 そして”マニュアル”通りにやれば、基礎知識がなくても結果が得られるようになりました。
その結果、何が起きたかというと……誰でも(オカネさえあれば)ＤＮＡの研究ができるようになり、工学部や医学部の臨床系の人が研究に参入するようになりました。
この時期にどこの医学部でも”修士課程”を置くようになったのは、その人員を確保するためで、マニュアル通りの仕事をすれば良いので、理系出身である必要はなく、文系学部出身でも医学部の大学院に入れます。
その新規参入組の多くが、遺伝子工学者を標榜しているわけです。
なお日本では”本当の遺伝子工学”が一番盛んなのは農学部ではないかと思います。 目的は作物や家畜の改良です。
厚生労働省はヒトを使った遺伝子実験を禁止していますので、医学部では”本当の遺伝子工学”を行なうことが出来ません。
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