FBの友達が、”消毒”の話を振ってて、いろんなことを皆さんでお話してるんですが、”消毒一般”となると話が大きすぎて、小生にもさっぱり分からないので、ここではアルコールの話に絞ります。
アルコールはアルファベット表記ではalcoholですが、アルコールと発音するのはドイツ語の読みらしく、アメリカ人はアルコホールと発音しますね。 NCIS見てて一番大きな違和感です(笑)
”アルコール”というのは、広い言葉でして、化学的には”水酸基(-OH)”を持つ物質はほぼ全てアルコールの一種ということになります。 それだとほとんど全ての有機物質(例えば糖類や核酸、蛋白なども)がアルコールだということになってしまうので、水酸基以外の官能基(アミノ基-NH2、アルデヒド基-CHO、カルボキシル基-COOHなどなど)を同時に持つものは別の物質として分類されることが多いです。
狭い意味のアルコールにも２種類あって、一つがエチルアルコールまたはエタノールまたは酒精。 これが世間で”お酒”として一番多く使われる意味ですね。 化学式はCH3CH2OHです。
もう一つは、メチルアルコールまたはメタノールまたは木精。 俗にメチルと言ったりもします。 CH3OH。
エタノールもメタノールも人体に有害で、両方とも”酔っ払う”という急性症状があります。
両方、多量に摂取すれば、”急性アルコール中毒”で死んでしまいます。
逆に、ごく少量であれば、両方とも無症状で終わります。 またその場合には反復使用してもとくに問題はありません。（発がん性があるとは言われていますが、酔っ払わない程度の量なら全く考える必要はありません。）
問題はその中間の量を摂取した場合です。
エタノールはそれほど毒性が高くないので、致死量は体重60kgの人で100mL以上です。（15％の日本酒ならば700mL以上、5％のビールなら２リットルの一気飲みをした場合）
ところが、それ以下の量でも、摂取後しばらくして激しい頭痛や吐き気に襲われます。
この正体はエタノールそのものではなく、エタノールが肝臓で代謝されて生じた”アセトアルデヒドCH3CHO”によるものです。 また”酔っ払いの臭い”もこれが原因です（エタノールはほぼ無臭です）。 アセトアルデヒドは同じく肝臓で代謝されて、酢酸CH3COOHになります。 酢酸は無害……どっちかというと栄養になる有益な物質です（「酢」の主成分が酢酸）。
この２段階の代謝には、
�� エタノール → アセトアルデヒド アルコール脱水素酵素
�� アセトアルデヒド → 酢酸 アルデヒド脱水素酵素
という２種類の酵素が働いています。
面白いのは、この２種類の酵素の量が遺伝的に決まっている、ということです。
両方が多い人は、オサケを大量に飲んでも酔いません。 誰ですか「裏山椎」とか言ってるのは？ 実は小生の知り合いにそういう人がいたのですが、「酒なんて美味しいと思わないし、ナニが楽しいのか分からない」と言っていましたよ。
�，�多くて、�△�少ない人。 これが一番日本人に多いと言われ(異説あり)、最も悲しいタイプです。 オサケを飲むと、すぐアタマが痛くなり、なかなか消えません。
�△�多くて、�，�少ないタイプ。 とてもオトクです(笑) 少量で酔えて、二日酔いにもなりにくい。 ただし……肝臓を壊したり、ガンに掛かりやすい、らしい。 たしかアル中になりやすいのもこれだったかと。
両方少ないタイプ。 これが日本人に一番多いんだったかも^^; すぐ酔って、二日酔いもしっかり起こします。
ただし、これらの酵素を全く持たないという人はいないようです。 大きな理由は、種々の代謝反応の中間物質として、アルコールやアルデヒドを作る必要があることです。 ですから２つの酵素を持たないというのは致死的、たぶん生まれて来れないと思われます。
またこれらの酵素は、働く相手が多い環境にあると、生成量が増加したり、働きが強まったりします。 つまりアルコールに弱い人でも、少しずつ摂取量を増やせば、オサケに強くなります（これには他の要素もありますが省略します）。
さて次はメタノールの話です。
実はメタノールのほうがオサケとしての匂い、つまりアルコール臭がエタノールよりも強く、また飲んだときにかすかな”甘み”があって、美味しいのです。 逆に純粋なエタノール(を薄めたもの)−例えばスピリタスなどのウォッカ類−は無味無臭で美味しくもなんともない（それを悪用したのが”レディ・キラー”というカクテル）。
ですから、日本酒のうまさは実は微量のメタノール(などの不純物)を含むためであり、それがまた日本酒の悪酔いの原因であると言われています（法律上はメタノールが検出されてはならないことになっているけど）。 またメタノールそのものの致死量は、エタノールとほぼ同量であると考えられます。
しかし、実際のメタノールの致死量は20mL程度と云われます。 それは、
� � メタノール → ホルムアルデヒド アルコール脱水素酵素
�◆� ホルムアルデヒド → ギ酸(蟻酸) アルデヒド脱水素酵素
という２つの代謝反応で、ホルムアルデヒドとギ酸という非常に毒性が強い物質が作られるからです。 純粋なホルムアルデヒドは気体なのですが、水に溶かしたものをホルマリンと言います。 ホルマリンは強力な防腐剤で、またウイルスを含むあらゆる生命体を”固定”することで殺します。 昆虫標本や人体標本(解剖用ご遺体、顕微鏡用標本など)を作るときにホルマリンを使うのは、”固定”によって蛋白質が硬化して機械的に丈夫になり、同時に病原体を消毒するという一石二鳥の手段です。
ホルムアルデヒドが酸化されてできる”ギ酸”もまた強烈な毒薬です。 アリさんは恐ろしい、と覚えてください(笑)
ところが面白いことに、ホルムアルデヒドも、ギ酸も体内で常にごく少量ですが作られています。 それなしにヒトは生きていくことが出来ません。 ヒト(生物)は毒すらも生きる糧(かて)にしているのですね。
戦後の混乱期には、密売酒の飲用や故意の摂取による中毒死や、失明が多く見られました。
メタノールの別名がメチルなのは、「目散る」に掛けているからとも言われています。 毒性が目に表れることが多いのは、網膜の視細胞にアルコール脱水素酵素が多くて、ホルムアルデヒドが多量に作られるため、と考えられています。
ちょっと面白いのは、急性メタノール中毒の治療に、わざとエタノールを飲ませる、というのがある／あったらしいこと。
何故かというと、�，鉢 如�働く相手が違っていても、働いているのは同じ”アルコール脱水素酵素”なんです。 ところがアルコール脱水素酵素は、メタノールよりもエタノールのほうが好き。 両方ある場合には、優先的にエタノールを処理します。 つまりメタノールは放って置かれます。 その間に水をガブ飲みしたり、多量の点滴を行えば、メタノールはオシッコとともに排出される、というわけ。 まさに究極の放置プレイですね＾＾
（�△紡海�）
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