『恐竜学 進化と絶滅の謎』
David E.Fastovsky，David B.Weishampel 著／John Sibbick イラスト
真鍋 真（国立科学博物館） 監訳／発行：丸善株式会社
B5判・514頁・上製 本体価格：10,000円 ISBN4-621-07734-1
恐竜の進化と絶滅の真相に迫った最新版 恐竜学 進化と絶滅の謎 The Evolution and Extinction of Dinosaurs Second Edition
恐竜はどのような生活を送っていたのか――
どのようなものを食べていたのか?
恐竜はどのような進化を辿ったのか――
どうして絶滅していったのか?
恐竜はどのようにして発見されたのか――
どのように分類されていったのか?
最新の研究発表に基づいた、分岐分類学の精密な系統解析を用いて、
詳細な解説、優れたイラストで紹介する「恐竜学」解説書。
大学の専門テキストとしても最適な一冊。
恐竜各グループの詳細な解説、迫力ある緻密なイラスト
分岐分析で系統進化を解析
温血説、大量絶滅を個別の章立てで基本から解説
監訳者序文
本書は、恐竜の各グループの詳細な解説はもとより、分岐分析で系統進化を解析する方法をその基本概念から行っていること、温血説、大量絶滅を個別の章を立てて基本的な考え方から書かれていることなどにおいて類書がなく、アメリカの大学の教科書として高い評価を得ていることに納得できる。
トリケラトプスやティラノサウルスといった恐竜は、中生代の約1億6000万年にわたる時間、地球の表面という空間の中では、無数に散らばる点のようなものである。系統進化や生態系進化を考えていくと、それらの点と点が線になってつながる。恐竜やその進化を学ぶことの作業の一つは、その目に見えない線をつなげあわせて、系統図という形にして表すことである。現代の爬虫類と鳥類を見ていると、両者の違いは顕著で、大きなギャップが存在する。しかし、その間に存在して、今は化石としてその姿をとどめている恐竜を間におくと、その進化は連続的である。過去10年間の新しい化石の発見の連続は凄まじく、どこまでが恐竜でどこからが鳥類かその境界線を引けないほどである。近年の恐竜学の新知見は、「羽毛恐竜」のような標本の発見はもちろんだが、分岐分析による系統解析によって、新しいモノの見方が得られたことによるところも大きい。
例えば、ティラノサウルス類はジュラ紀のアロサウルス類から進化してきたのではなく、小型で華奢なコエルロサウルス類が大型化したものだった。コエルロサウルス類は、小さくて飛行能力をもつものが進化していく一方、ティラノサウルス類のような最大級の種を進化させたことになる。白亜紀には、アフリカのスピノサウルス、南アメリカのギガノトサウルスのような大型の獣脚類が出現していたが、彼らはティラノサウルス類よりもアロサウルス類に近い。白亜紀にはアメリカとアジアでコエルロサウルス類、南半球ではアロサウルス類と、少なくとも2系統で別々に大型化が起こっていたことを教えてくれたのは系統図だった。
ヨーロッパと北アメリカと海で隔てられた島大陸アジアには、ジュラ紀後期から白亜紀初頭にかけて大型肉食恐竜がいなかったようだ。そのような生態系の中で、コエルロサウルス類の一部が大型化しティラノサウルス類になったのかもしれない。同じ環境、生態系は、哺乳類にも大きな種の進化を促したらしい。そしてアジアは、白亜紀後期に陸続きになった北アメリカにティラノサウルス類や角竜の分布を広げさせることによって、北アメリカの生態系へも影響を与えていった。それは、個々の系統の進化に、他の動植物の進化、生物地理などが関係していることを物語っている。系統図を描くことは研究の目的ではなく、研究のスタートであることを知れば、系統解析の基本とその具体例を示した本書のアプローチの重要性は明らかだろう。
2006年7月
国立科学博物館 真鍋 真
目 次
I 部 舞台設定
1章 序論
化石／採集
2章 過去への旅：中生代
恐竜はどの時代に生息していて、それをどのように知るのか／恐竜の生息時代の大陸配置／恐竜時代の気候
3章 自然界の秩序を見出す
階層性／分岐図／サルの親戚
4章 脊椎動物の系統関係
始まりの時／脊索動物への飛躍／四肢動物／爬虫類
5章 恐竜の起源
恐竜の歴史／起源
II 部 鳥盤類：武装した恐竜、角を持つ恐竜、カモノハシ恐竜
6章 剣竜：ホットプレート（体温調節板）
剣竜の生態／剣竜の進化／剣竜との出会い：その発見の概略
7章 鎧竜：装甲タンクと発酵タンク
鎧竜の生態／鎧竜の進化／鎧竜との出会い：その発見の概略
8章 堅頭竜：白亜紀の突撃槍
堅頭竜の生態／堅頭竜の進化／堅頭竜との出会い：その発見の概略
9章 角竜：”角”を持つ恐竜、そしてすべての”襟飾り”をもつ恐竜
角竜の生態／角竜の進化／角竜との出会い：その発見の概略
10章 鳥脚類：中生代のイノシシ、レイヨウ、「飛べないアヒル」たち
鳥脚類の生態／鳥脚類の進化／鳥脚類との出会い：その発見の概略
III 部 竜盤類：捕食者と巨体たち
11章 竜脚形類：大きいもの、へんなもの、そして威厳のあるもの
体が大きくて古いものの生態／竜脚形類の進化／竜脚形類：その発見の概略
12章 獣脚類�機�肉食のための歯とカギツメ
獣脚類の生態／獣脚類の進化／獣脚類との出会い：その発見の概略
13章 獣脚類�供�鳥の起源
現生鳥類／始祖鳥と現生鳥類の祖先／1990年代の革命：羽毛恐竜
14章 獣脚類�掘�鳥の初期進化
IV 部 内温性、環境、そして絶滅
15章 恐竜の体温調整：お熱いのがお好き
温血性は冷血性よりも優れているか／恐竜の温血性：その証拠／恐竜の温血性に関する議論
16章 恐竜進化のパターン『恐竜学 進化と絶滅の謎』
2013.07.31 20:11
カテゴリ：読書・書評
David E.Fastovsky 、David B.Weishampel 著。真鍋真監訳。
時代を通して見る恐竜の入れ替わり／植物と植物食恐竜／肉食恐竜
17章 絶滅の復元：科学の美学
過去を明らかにする
18章 白亜紀―第三紀境界大量絶滅：角竜もいなくなったし、すっきりとしてきた
白亜紀末の地質記録／白亜紀末の生物記録／絶滅仮説
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー以上転載ーー
http://pub.maruzen.co.jp/book_magazine/kyouryuugaku/
まさに恐竜学の教科書。書評
恐竜研究の歴史と詳細を概観できる、まさしく恐竜学の「教科書」。
まさに恐竜学の教科書。書評『恐竜学 進化と絶滅の謎』
■まさに「恐竜学の教科書」とも言うべき圧倒的な情報量
なかなか分厚くてボリュームのある本ですが、2005年頃までの恐竜研究の歴史がしっかり詰まっていて、読み応えたっぷり。
目次は以下のような感じ。
•I部 舞台設定 ◦1章 序論
◦2章 過去への旅：中生代
◦3章 自然界の秩序を見出す
◦4章 脊椎動物の系統関係
◦5章 恐竜の起源
•II部 鳥盤類：武装した恐竜、角を持つ恐竜、カモノハシ恐竜 ◦6章 剣竜：ホットプレート（体温調節板）
◦7章 鎧竜：装甲タンクと発酵タンク
◦8章 堅頭竜：白亜紀の突撃槍
◦9章 角竜："角"を持つ恐竜、そしてすべての"襟飾り"をもつ恐竜
◦10章 鳥脚類：中生代のイノシシ、レイヨウ、「飛べないアヒル」たち
•III部 竜盤類：捕食者と巨体たち ◦11章 竜脚形類：大きいもの、へんなもの、そして威厳のあるもの
◦12章 獣脚類I：肉食のための歯とカギヅメ
◦13章 獣脚類II：鳥の起源
◦14章 獣脚類III：鳥の初期進化
•IV部 内温性、環境、そして絶滅 ◦15章 恐竜の体温調整：お熱いのがお好き
◦16章 恐竜進化のパターン
◦17章 絶滅の復元：科学の美技
◦18章 白亜紀―第三紀境界大量絶滅：角竜もいなくなったし、すっきりとしてきた
見てのとおり、II部とIII部、この本の丸々半分を費やして、恐竜の分類ごとの詳細な解説が行なわれているわけですが、個人的にはこの部分の資料価値が凄まじく高いと思いました。
発見、研究の歴史からはじまり、現在各分類ごとにどのような恐竜の化石が見つかっているのか、また、それらを別属とみなすことのできる骨格の特徴とは何か、というようなことがびっしりと説明されています。
とにかく大ボリュームなので、一読しただけでは全てを頭に入れるなんて不可能ですが、手元に置いておいて、何度も参照したい恐竜本としてはトップクラスではないかなと思います。
2005年に書かれた本なので、それから八年経った現在では、この本に書かれていることが覆されているというケースも、素人目にも何点かありました。このボリュームの本が、数年毎にその当時の最新の学説も取り入れられた形で改訂されていくと、恐竜ファンとしては単純に嬉しいですが、まあなかなかそうもいかないですよねえ......。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー以上転載ーー
http://pangea-note.com/blog/books/post-32.php
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