背が低かったあなたは
今では 女の子たちの憧れ
わたしの背も追い越して
見上げた先に 汗が光る端正な面立ち
五月の風が吹き抜ける若葉のように爽やかで
白い歯を見せて快活に笑う
知らないうちに クールな青年になっていた
あの時代の話題の映画スターによく似てときめいた
バスケットが上手くて 伸びやかな手足
そんな19歳の夏のはじまりは一気にカラフルにきらめいて見えた
海に誘われ
選んだ黄色のチェックのビキニ
もう一つのヘルメットをもって あなたはバイクでお迎え
海まで二人 相乗り
潮風を切って たなびく長い髪は、頬を打つ
夏草の香りはむせ返るほど鼻をくすぐり
腰に回した手に力が入る
黄色の水着でつまさきを濡らす
夏は始まったばかり
海の水はまだ冷たい
二人で飲むソーダの泡も弾けてる
寝転んで、他愛もなくクラスメイトの話
それだけでほほ笑みはいっぱい
あなたは きっと聞きたい ずっと知っていたのに
気づいてないふりをした
あなたと彼への好きは まったく違う気持ち
意地悪なんかじゃなく
気づいてないふりをしたのは 精一杯の優しさ
そのほうが いい気がしたの
あなたは今そばにいて寂しさを埋めてくれる
いるだけで楽しくこんなに素敵なのに
あなたを恋人として好きになれたらよかったのに
恋は不思議 恋に落ちる瞬間も
あなたをみて囁き振り返る女のこたち
そんなあなたを好きになれてたらよかったのに
恋は不思議 好きという感情も不思議
儚い若い夢を一緒に見つめながら
甘く澄み渡る世界に一緒に住むあの人のことが
心深いところで好きなの
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