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2019年12月01日04:43

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11月の読書記録

先月は職場で急遽二人の欠員が出て、休みが1日削られるし、7時から21時半というありえない勤務日がぶっこまれるしで、読書する時間が確保できず。それでも何とかそれなりに読んでいたか。あと、イシグロ・カズオの『充たされざる者』には予想外に手こずったな…

2019年11月の読書メーター
読んだ本の数:15冊
読んだページ数:4986ページ
ナイス数:166ナイス

https://bookmeter.com/users/4147/summary/monthly
■日本人にとって聖地とは何か
このシリーズ、ノーチェックだったことを軽く後悔。聖地というテーマに何となし食指が動かなかったのだけれど、クリスチャンという立場からしても、このテーマは実に色々と示唆を与えてくれるということに新鮮な驚きを覚える。何より、聖地が常に俗と隣あっているということ、またそれが時として荒ぶる力を持った危険性を持ち合わせているという指摘には目から鱗。それから、歴史学者高島幸次による都構想批判には溜飲が下がる思いがした。かねてから橋下の宗教的センスの欠落を問題視していたのだけれど、それは都構想にも表れていたのだな…と。
読了日:11月30日 著者:内田 樹,釈 徹宗,茂木 健一郎,高島 幸次,植島 啓司
https://bookmeter.com/books/13367552

■生きる場からの哲学入門
アカデミズムから解き放たされた場で哲学をするということ。重箱の隅を突くような瑣末な議論に終始しがちな専門家による哲学ではなく、市井に生きる人の生の声で語られる哲学。実際のところ、哲学というより他の学問に近い論考も目につくが、それでも生きる場でいかに既存の意見に囚われずに思考を研ぎ澄ますか?というスタンスは息づいていると思う。自由に物が言える雰囲気が段々と圧迫されている感がある昨今、このような動きがあるというだけでも希望が持てる。やや左翼色が強いことに眉を潜めるむきがあるかもしれないが、この動きは貴重。
読了日:11月29日 著者:花崎 皋平,三浦 隆宏,細谷 実,大越 愛子,河上 睦子,百木 漠,木村 倫幸,藤田 隆正,田畑 稔
https://bookmeter.com/books/14219058

■充たされざる者 (ハヤカワepi文庫)
他の人も述べているが、まずは「やっとで読み終えた」と言いたい。ただ、長いだけならそんなにしんどいとは思わないのだけれど、とにかく似たようなエピソードが延々と続くのに些かゲンナリ。これだけの長尺の物語にしたのは、作者なりの意図や拘りがあったのだろうけれど、個人的にはその必然性が疑わしく思える。恐らく自分では理性的合理的に動いていると思っているのだろうけれど、客観的に見れば、場当たり的で、なおかつエゴイスティックな言動を繰り返す主人公ライダーに苛立たされることしきり。ラストもつい突っ込みたくなる幕切れ…
読了日:11月24日 著者:カズオ イシグロ
https://bookmeter.com/books/472269

■記憶の盆をどり
断酒経験を綴った著作の発表と前後して出たこともあって、全体的に作風が暗いのが個人的に気になる。内容はいつもの町田節なのだけれど、『ホサナ』あたりにあった、新しい世界観を示唆するような要素は、本書にはあまり認められない気がする。ごく普通の日常にいると思っていたのに、ひょんなことからその思い込みが根底から覆されたり、あるいは妙にずらされたりという独自の展開も些か新味に欠けるようになったというのが正直なところ。個人的にはロック少年でありながら、奇妙な方言を喋る大凡ロック色を感じさせない直征に可能性の萌芽を見る。
読了日:11月23日 著者:町田 康
https://bookmeter.com/books/14395967

■「カッコいい」とは何か (講談社現代新書)
読み進めるうちに、著者はこの本を相当楽しみながら書いているな…という感想を抱いたのだけれど、いみじくも後書きで「頗る楽しかった」とあるのに溜飲が下がった。ロック、ジャズなどの洋楽を長いこと聞き込んできた者として、「カッコいい」という概念とそれらの音楽とが不可分に結びついているという指摘に強く驚かされると共に、大きくうなずかされたのも事実。そして、カッコいいという言葉の意味は誰もが共有していると思われているのに、その対象は千差万別であるという事実に、審美以上の厄介さを孕んでると痛感。後続の論考に期待。
読了日:11月17日 著者:平野 啓一郎
https://bookmeter.com/books/14017029

■ドリーマーズ
これまでの作品と特に変わらない。ごく普通の日常の一コマを描写しただけ…という意地悪な見方もできる。でも逆にそういう何でもないような日常を描写して、ここまで読ませる作家がどれだけいるのか?同じようなエピソードを描くにしても、さりげなく細部に凝っていたり、会話に人物の微妙な心理の機微を巧みに織り込ませたりと、作者ならではの技をいかに読み込むか?が本書を堪能するためのポイントかもしれない。とりわけ、びっくりさせられたのは、表題作。「え、これまさかのSF?」と一瞬思ったのだけれど、夢と現が織りなす不思議な世界。
読了日:11月12日 著者:柴崎 友香
https://bookmeter.com/books/549572

■見とれていたい わたしのアイドルたち
取り上げられている女優の半分以上が知らない人なので、正直個人的に外れかな?と思ったのだけれど、想定外に楽しめたのにびっくり。女性がこれだけ同性のタレントへの愛について語ったというのは、実は珍しいのでは?もちろんこれがステレオタイプの意見だというわけではないだろうけれど、男性からすると「女性って同性のことをこんな風に見ているんだな…」という新鮮な驚きがあった。それと、度々触れているが、女性が同性を見る目と、男性が女性を見る目というのは違うな…と改めて痛感。ただ、紹介されている映画には興味が持てなかったけど…
読了日:11月12日 著者:柴崎 友香
https://bookmeter.com/books/512144

■星のしるし
穿った見方をすれば、これまでのネタの使い回しで新味に乏しいとも言えるのだけれど、それだけに終わらない何かを感じさせるのも確か。とりわけ印象的だったのは、恋人でありながら、セリフが極端に少なく、交際に至る経緯についても触れられていない朝陽の描き方が独特で、そこが妙味と言えるか。それとは対照的に本来なら脇役である筈のカツオの言動にかなりの字数を割くことで、逆接的に朝陽の存在を浮かび上がらせようという意図が働いているのでは?という気がした。一見読みやすいようでいて、実は丹念に読んでいく必要がある意外な曲者。
読了日:11月11日 著者:柴崎 友香
https://bookmeter.com/books/549573

■日本近代文学入門-12人の文豪と名作の真実 (中公新書)
十二人の作家に絞った日本近代文学史。既知の事実も少なからずあったが、概ね興味深く読めたか。とりわけ新鮮だったのは、円朝と亭四迷を扱った第一章。言文一致に落語が与えた影響は知っていたが、落語の速記本があれ程までに世に出回っていたというのは驚き。また当時の識字率が恐らく世界的に見ても群を抜いていたであろうという事実は、後の日本の世界進出の土台になっていたと推察される。それと第二章の一葉と花圃の対照的なあり方は、生前と死後との評価とも相まって、人間の人生の意味や幸福って何なんだろう?という気にさせられた。
読了日:11月11日 著者:堀 啓子
https://bookmeter.com/books/14144444

■老いの味わい (中公新書)
明治の殆どは死に絶え、大正も風前の灯火、そして昭和一桁も終わりが見え、今は団塊世代の老後が気になる…本書を読んでいると、そんな世代の移り変わりを感じる。その過程の中で、ますますかつての老人らしい老人は皆無となり、かといって、新しい老人のロールモデル的なイメージも定着しない。ただ、それぞれの世代が漫然と年を重ねていくだけ…そんな風にも思えたりする。ただ、以前に比べると男の老人が幾分元気になったように思えるという言及に多少明るさを感じるか。近い将来W村上あたりはどんな老後を過ごすのか?てなことを考える。
読了日:11月09日 著者:黒井 千次
https://bookmeter.com/books/8292837

■老いのかたち (中公新書)
歴史上類を見ない超高齢化社会になった日本。しかし、その老後の生活のあり方の見本は当然ない。それは高齢者自身で何とか作り出していかねばならない。60が70になり80になり…という過程の中で、確実に気力体力は衰え、このあいだまでできていたことが今日はできなかったりする。その事に対して、時に落胆し、時に「まあ仕方ないか」と開き直る。そうしたことが、正に当事者の目から客観的に語られる。何でもないことのように思えて、これは実は凄いことなのだと老人介護に携わる者として強く主張したい。今後を生き続けるためのバイブル。
読了日:11月08日 著者:黒井 千次
https://bookmeter.com/books/407129

■となりの脳世界
思春期にこの本に会えたら、自分はどんなにか救われただろう…ついそんな叶わぬ願いを抱いてしまった。妄想癖と思い込みが強く、周囲とはついずれてしまうし、運動も苦手…かつての(ある部分では今も)自分とかなりかぶるところがある著者の生態に「ああわかる!!」と幾度となく声をあげてしまいたくなった。本好きで本屋でいくらでも時間が潰せたとか読書の原体験に星新一があったとか、一回りしたなのにも関わらず、この人となら幼少期の思い出だけで、いくらでも話ができてしまうのでは?という気にさえなる。東京散歩のイラストがいい。
読了日:11月08日 著者:村田沙耶香
https://bookmeter.com/books/13139065

■消滅世界 (河出文庫)
それなりに楽しめたけれど、それまでの作品の集大成…というよりネタの使い回しという印象が強く、全体としては今一だったか。それでも既存の性及び家族のあり方を根底から覆すかのような世界観を模索しようとする著者の試みは賞賛に値するが。ただ、娘がこんなことばかり書いているというのは、親御さんとしてはどんな気持ちなんだろう…と余計なことも考えてしまうけど(笑)。とりわけ印象的だったのは、実験都市における大人と子供の関わりの描写。確かにあれは気持ち悪い…まさにユートピアとディストピアは紙一重ということの証左かも…
読了日:11月07日 著者:村田沙耶香
https://bookmeter.com/books/12937011

■コスモスとアンチコスモス: 東洋哲学のために (岩波文庫)
難解なことを易しく説明するのが、一番難しい…その一番難しいことを一般的には馴染みのない宗教哲学の領域で成し遂げた。それだけでも類い稀な仕事。もちろん、その内容全てが理解できたわけではなく、その程度はかなりあやしい。それでも、幾度となく知的興奮を覚え、もっと先が読みたいと思わせる…そんな思想書がどれだけ存在するというのか?そう考えただけでも、著者の凄さが理解できる。やはり表題作がとりわけ印象的だったか。カオス=混沌というイメージが一般的に流布しているが、それだけには止まらない、豊穣な意味が含有されている。
読了日:11月07日 著者:井筒 俊彦
https://bookmeter.com/books/13747520

■ワンダーワード―柴崎友香漫画家対談・エッセイ集
柴崎による漫画家インタビュー集。大半がまともに読んだことの無い人達だったわりには楽しめたか(笑)。ただ、荒木飛呂彦は殆どひたすら話題が『ジョジョ』に集中して読むのが辛かったけど。それと今更ながらに痛感させられたのが、漫画という表現方法の特異さ、困難さ。絵と物語を同時に紡ぎださねばならないというしんどさに加えて、基本的に雑誌連載、出版社や編集者とのせめぎ合いや様々な制約。そうした問題をクリアーして作品を量産していかねばならないというのは、並みの精神力では無理だろうな…「京都観光」は柴崎作品そのものだった。
読了日:11月03日 著者:柴崎 友香
https://bookmeter.com/books/454719


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