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2019年11月01日07:58

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10月の読書記録

先月は先々月のリヴェンジを果たせたか。後半若干ペースが鈍ったけれど、それでも7千ページ近く読むことができた。もうしばらく村田沙耶香と柴崎友香を読み進める予定。

2019年10月の読書メーター
読んだ本の数:23冊
読んだページ数:6776ページ
ナイス数:193ナイス

https://bookmeter.com/users/4147/summary/monthly
■井筒俊彦―叡知の哲学
古今東西の古典を独自の視点で読み尽くし、独自の哲学を築き上げていった井筒も凄いが、井筒周辺の思想家、哲学者を丹念に調べ上げ、テキストを読み込み、一冊の本に纏め上げた著者の知識量と知的体力に感服。しかも後書きにある経緯が背景にあるとあれば、まさに血を吐くような思いで書き上げたのでは?という思いが強くなる。最早、市井に生きる人から殆ど失われてしまった霊性。言葉になる前のコトバといかに対峙するか?それは時代宗派を超えて普遍的な問題である。安易な歩み寄りではなく、内観を深めることにより得られる一致の大切さを痛感。
読了日:10月31日 著者:若松 英輔
https://bookmeter.com/books/3284987

■婦系図 (新潮文庫)
軽妙洒脱な文語調の文体に惹かれて一気読み。ただ、この時代の雰囲気や建物の内装や風俗にある程度通じていないとかなり理解が難しい。そういう意味で、注釈が無いのはどうかと思う。それはそうと、主人公主税もてすぎでは…というのが第一印象(笑)。生まれついてのドンファンってこういう人をいうのかも?だったら、そのまま金持ちや成功者をだまくらかして、飄々と生き延びるという道もあり得たのに、なぜか結末は悲劇的…こいうのが、当世風だったのか。師紅葉の『金色夜叉』にも似てるが、その橋本治版とラストが被っているのは偶然か?
読了日:10月30日 著者:泉 鏡花
https://bookmeter.com/books/505425

■殺人出産 (講談社文庫)
クレイジー沙耶香…まさにその名に相応しいぶっ飛んだ内容。頭のタガや常識を極力取り除いて読まないと、不快に思うか、ついていけないだけの代物に終わるだろう。逆にそれらの物を取り払い、虚心坦懐に読み進めることができる者はその既存の価値観や常識、倫理観を木端微塵に吹き飛ばすような新たな価値観、世界観を垣間見ることができる。一見リアリティが皆無のように思えるが、人間の深層心理の更に奥深くを覗き込んでみると、案外多くの人はこのような世界観、価値観を抱えている、あるいは望んでいるのでは?という気にさえさせられる。
読了日:10月27日 著者:村田 沙耶香
https://bookmeter.com/books/11096815

■ガールズ ファイル 27人のはたらく女の子たちの報告書
著者による一般女性へのインタビューを、著者なりの言葉でまとめたもの。登場する女性がいずれも、大なり小なりしたたかで貪欲で、男性にはない野蛮ささえ感じさせる。とりわけ恋愛への貪欲さや果敢さは見習うべきか…とも思うけど、恐らく無理だな(笑)。もちろん恋愛だけではなく、仕事に対しても前向きな人が多くて、それは本当に見習うべき。併録の小説は、良くも悪くも柴崎ワールドという感じ。適度に緩くて、でもその場その場では切実な思いや場面が、まったりとした筆致で描かれてという感じか。他の作品と被る箇所が目立つのが気になるが。
読了日:10月27日 著者:柴崎友香
https://bookmeter.com/books/9054973

■きれいなシワの作り方 淑女の思春期病 (文春文庫)
一回り近く下で性別も違うのに、なぜか激しく「自分と同じ匂いがする!」と思わされた(笑)。人見知りが強くて容量が悪くて、なぜか世間とずれてしまう…著者そのまんまではないにせよ、その著作の主人公の多くは、多少なりとも著者自身が反映されているのだろうな…ということが如実に見て取れる。確実に忍び寄ってくる老い。それに伴い体力は衰え、周囲が見る目も自然と変わってくる。でも、自分の核の部分は基本的に変わらない…その事実と折れあったり、開き直ったり、ジタバタしたり…というプロセスが何とも切なく、おかしく、愛おしい。
読了日:10月26日 著者:村田 沙耶香
https://bookmeter.com/books/13214541

■イエス伝
教条主義、もしくは教会が押し付けるイエス像から離れて、福音書を読み込むむことにより、新たなイエス像を構築すること…それは魅力的であるのと同時に、それがえてして独りよがりなものに陥りがちという意味で、危険な行為でもある。しかし、信仰を持つ者として、いや、信仰を超えて、真摯な思いを持って市井に生きる者でありながら、何がしかの形でイエスに触れるならば、その試みは最早避け得がたいものではないか…本書を読んでそんなことを思わされた。カトリックにおける祭儀の重要性、それと時に相反するイエスの実存は永遠の課題かも。
読了日:10月24日 著者:若松 英輔
https://bookmeter.com/books/10030754

■老いのゆくえ (中公新書)
老いるということはこうも切ないものか…年とともに体力知力共に衰えていき、それは決して回復することはない。そして著者はなまじの知力と体力があるため、自分の老いを客観的に見つめ、それをユーモアを交えて語ることができる。80代半ばでそれをできる人はそうそういない。そう思うと、本書がどれだけ、更なる高齢者社会に向けての一つの指針となりえるか?ということに気付かされるはずである。ごく短いエッセイを集めた物だが、殆どのエッセイについ書きとめておきたくなる珠玉ともいえる言葉がちりばめられている。高齢者のバイブルかも?
読了日:10月23日 著者:黒井 千次
https://bookmeter.com/books/13863461

■ヴィレット(下) (白水Uブックス)
ストーリーの随所に潜んでいる暗い影。一瞬その影が突如として取り去られ、幸福な結末を迎えると思っていたら、最後の最後でどんでん返し…それでも語り手に絶望感はなく、生活に対する充足感を覚えているらしいということで幾分かは救われているが…それにしても気になるのが、カトリックとプロテスタントという相反する宗教観を巡るせめぎ合い。互いに美点、利点を認め合いながらも、最終的には相入れないという複雑な関係。それがルーシーとポールとの関係をかなり暗示しているとも言える。夢想と現実が複雑に織りなす終盤は確かに圧巻だった。
読了日:10月23日 著者:シャーロット・ブロンテ
https://bookmeter.com/books/14121492

■ヴィレット(上) (白水Uブックス)
それなりに面白いのだけれど、少なからず「あれ?」と首を捻ったり、明らかにご都合主義と思われる箇所が少なからずあったのが気になる。著者の妄想をそのまま小説にしたのでは?という気にさせられたというか。後、ディケンズのような同時代の英文学との共通性を感じると共に、バルザックなどの仏文学との差異も感じる。前者が人の善意や立身出世の可能性に対する信奉がそれなりにあるのに対して、後者が希薄というか。また、カトリックとプロテスタントとの差異や両者の歩み寄りと反発を交えたせめぎ合いなど、キリスト者として興味深く読めた。
読了日:10月18日 著者:シャーロット・ブロンテ
https://bookmeter.com/books/14121491

■浮沈・踊子 他三篇 (岩波文庫)
戦前、女性が一人で生きて行くということは、想像を絶するくらい大変なことだったんだろうな…と改めて痛感。特にこれといった教育も技術もない以上、何がしかの形で自分の女性性を切り売りすることを強いられる…そしてそれを当然のことと思い込んでいる男性。その時代の倫理観を今の時代の物差しで計るのは無意味かもしれないが、その理不尽さをつい考えてしまった。表題作「浮沈」はそうした寄る辺のない女性の生き方と共に、忍び寄る戦争の影、そしてそれと共に官憲が威張りくさす嫌な風潮が象徴的で、まさに昨今の風潮と重なり合ってくる。
読了日:10月15日 著者:永井 荷風
https://bookmeter.com/books/13707502

■花火・来訪者 他十一篇 (岩波文庫)
男も男なら女も女。それぞれにこすっからく抜け目がない代わりに、どこか間が抜けている。そして何かにつけいけしゃあしゃあとしている…それでもやっぱり女性の方が大概において一枚上手か?荷風が描く男女の交情の様を見ていると、そんなことを思わされる。とりわけ「花火」のお千代がいい。とりわけ美人というわけでもないのに、肉感的で男好きがする。その手の女性が好きな男性にはたまらんだろうな…と(苦笑)。相手の不実を知りながらも、ついついズルズルと関係を続けてしまう…そういう男性のダメさ加減も妙に憎めなかったりする。
読了日:10月14日 著者:永井 荷風
https://bookmeter.com/books/13875321

■リハビリ 生きる力を引き出す (岩波新書)
高齢者介護に携わっているため、リハビリというのは、ごく身近な営みではあり、それなりの事例に通じているとは思っていたが、ここまで多種多様で、想像を絶するような困難事例、またそこから新たな可能性を見出し生き抜こうとした人、そしてそれを支えた周囲の人達がいるということに驚かされた。とりわけ若い時に障害を負い、十年以上の歳月をかけて社会復帰を果たしたという事例には頭がさがるとしか言いようがない。その反面、このような事例の根底には医療福祉制度があるわけで、その制度が危うくなる流れの中で、今後どうなるかが気になる。
読了日:10月13日 著者:長谷川 幹
https://bookmeter.com/books/14033893

■しろいろの街の、その骨の体温の
スクールカーストという言葉が登場するはるか前からそれは存在していたし、女子同士の複雑でストレスフルな関係というのは、ある意味普遍的かも?と思わされた。小学校高学年から中学までの猥雑で汗臭く、キラキラしていながらも、一方で熾烈な生存競争も繰り広げられるあの感じがかなりリアルに蘇ってきた。それはそうと小学校時代から主人公に力づくで接吻を強要される伊吹が妙に羨ましかったりする(笑)。それと大規模な宅地造成の渦中の描写は、ちょうどそのプロセスを目の当たりにしていた者として、何とも言えないノスタルジーを覚えた。
読了日:10月10日 著者:村田 沙耶香
https://bookmeter.com/books/5449722

■タダイマトビラ
家族は守るべきものか?壊すものか?乗り越えるものか?巣立つためのものか?母性が極度に欠落した母親に育てられた子供は、それをどう受け止め、どう活かしていくか?子供は親や生まれてくる環境を選ぶことができない。壊れた両親による壊れた家庭。その問題性を指摘されても、私だってちゃんとやっていると開き直る母親と、その母親ばかりを責めて、問題から逃げてばかりの父親。そこから抜け出そうとするばかりか、既成の家庭という概念を乗り越えようともがく恵奈は痛ましく滑稽であると同時になぜか清々しい。恋人の浩平は妙に間抜けだけど。
読了日:10月10日 著者:村田 沙耶香
https://bookmeter.com/books/4664189

■次の町まで、きみはどんな歌をうたうの?
とにかく表題作の主人公望の身勝手で独りよがりな言動に苛つかされることしきり(笑)。それでも周囲に愛想つかされないだけの憎めなさや魅力があるのだろうけれど、あんな風に振り回されるのはちょっと…著者紹介でサリンジャーの名前が挙げられていたが、確かにそういう趣があるなというのは、発見。語り手の視線からの風景描写に独特のものがあるということを改めて認識。併録作品は年明け間もない大学の風景がすごくリアルに蘇ってきて酷く懐かしかった。舞台が自分の母校ではないのは承知していながら、つい連想する。それだけの喚起力がある。
読了日:10月08日 著者:柴崎 友香
https://bookmeter.com/books/399855

■ハコブネ
人から見れば面倒臭い。何でそんなことで?単なる中二病じゃね?でもどうしても処理できずにいるこの違和感…全く同じ悩みを抱えていたわけではないが、十代、二十代と何かとこじらせていた者としては共感する所が少なくなかったのと同時に、一抹の気恥ずかしさと苛立ちを覚えたのも事実。主な登場人物の三人の女性のうち、一見一番普通に思える椿が意外と非常識な行動に出たり、密かにこじらせているのがミソ。また他の二人とは違って彼女の視点からかかれた章がないというのも意味深。個人的には知佳子と伊勢崎との関係が成就しなかったのが残念。
読了日:10月08日 著者:村田 沙耶香
https://bookmeter.com/books/4201234

■「こころ」の名医が教える 認知症は接し方で 100% 変わる!
このタイトルはちょっと大風呂敷を広げすぎでは?というのが正直なところ。高齢者介護に携わる者として、気付かされること、身につまされることも少なくなかったが、大半は既知の事柄で全体的に新味に乏しい。また、タイトルに反して認知症やそのための薬に関する情報にかなりの紙幅を割いているのが個人的に不満。もっと接し方に特化した内容を期待していたのだが。ただ、現場にいると介護の常識とされていることがなかなか実行できないというのも事実で、このような書籍を読むことで、認識を新たにするという効用もあるか。介護職は読むべきかも。
読了日:10月07日 著者:吉田勝明
https://bookmeter.com/books/12533126

■きょうのできごと (河出文庫)
特にこれといったストーリーが無いとやや揶揄を込めて言われがちな作者。確かに複数の若者のある一日をそれぞれの視点で描いた小説といえば、それだけなのだが、でも逆にこれって実は途轍もなくすごいことなのでは?と思わされた。成る程、起承転結があるストーリーとはいえないが、解説にもあるように細部にこだわった描写や、練りに練ったエピソードが緻密に組み合わせてあるのが、熟達した読み手だったらわかるはず。こういう作品でデビューしたのだから、この作家やはり只者ではなかった。個人的にはいい人でも煮えきれないかわち君が印象的。
読了日:10月07日 著者:柴崎友香
https://bookmeter.com/books/518875

■ただ一つの慰め―『ハイデルベルク信仰問答』によるキリスト教入門
平易な文体で、抽象的、あるいは難解な単語もでてこないからつい読み飛ばしてしまいそういなるが、一つ一つの単語の繋がりや意味を考えながら読み込んでいかないと、本書を読んだことにならない。とはいえ僕自身、つい文字面を追っただけで理解する努力を怠ったことは正直少なくない。逆に言えば、こういう信仰問答の類は一回読んで理解して終わりというものではなく、解説にもあるように何度も読み返して理解を深めていくという読み方が適切なのだろう。また、カトリック信者としては、カトリックのカテキズムとの異同がかなり気になるところ。
読了日:10月07日 著者:吉田 隆
https://bookmeter.com/books/14036913

■黄金夜界 (単行本)
著者なりの昭和の終わりから平成の総括ではないか?という気にさせられた。バブル崩壊からIT企業の興隆。そこに蠢く様々な欲望や権謀術数…『金色夜叉』と同じく経済小説だと言えるか。それはそうと、個人的には育った家を捨て、寄る辺ない生活を強いられる貫一の生活が、貫一程ではないけれど、先が見えない生活を強いられた嘗ての自分とが重なってきて、読んでいてちょっと辛かった…後、野望を抱きながらも、常に冷静で時に冷淡にさえ思える貫一の姿が印象的、読者の意表をつく呆気ない幕切れもあって、彼が一体何を望んでいたのか?と思う。
読了日:10月06日 著者:橋本 治
https://bookmeter.com/books/14005999

■「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく 東大読書
この人ってもともと地頭がいいというか潜在能力が高かったのでは?というのが第一印象。そうでなかったら本の読み方を変えたくらいでそうそう東大なんかに入れるものではない。それはともかくとして、インプット以上にアウトプットが大事とか、同じジャンルの本を平行して読めなど、これといった新味はないというのが正直なところ。また紹介されている本が、実用書、啓蒙書、ビジネス書など、まさに要点が分かりやすい物にほぼ限定されており、プルーストやジョイスなど要約に向かない難解な小説はどう読むべきなのか?ということが気になった。
読了日:10月03日 著者:西岡 壱誠
https://bookmeter.com/books/12877781

■イエスのたとえ話の再発見
知人に紹介されて読んでみたのだけれど、いささか期待外れというのが正直なところ。イエスのたとえ話を当時の情況に即して読み解いていくというのは、確かに大切で、そこから新たな事実が浮かび上がってくるのは確かだが、その事実に今一つ新味を覚えないというか…同じエピソードの各福音書での異同の分析も重箱の隅をつついている感が否めず。それに加えて一般にはあまり知られていないトマスの福音書まで持ち出すのはいかがなものか?こういう実証主義的な聖書研究ももちろん必要だが、もう少し神学的なテーマにそって書かれていれば…と思う。
読了日:10月03日 著者:ヨアヒム・エレミアス
https://bookmeter.com/books/13185947

■神秘哲学: ギリシアの部 (岩波文庫)
正に知の巨人による偉業。理解の程は怪しいが、一読してそう直感した。神秘という理性では計り知れないものをあえて哲学という文脈で読み取ることで紡ぎ出される豊穣な世界。ギリシャ哲学をここまで独自な手法で読み込んだというのは、世界的に見てもあまり例がないのでは?個人的にはプロティノスの章にこれまでにない知的興奮を覚えた。アウグスティヌスへの影響は知っていたが、これ程までに魅力的な哲学者だったことに驚き。また独特の格調高い文体も非常に魅力的。相当な文学的素養があったこと想像される。ただ、注釈がないのが残念だったか。
読了日:10月02日 著者:井筒 俊彦
https://bookmeter.com/books/13526250


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