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2019年10月16日21:47

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屋根まで浸水した川越の老人ホームは、なぜ全員が無事避難できたか

屋根まで浸水した川越の老人ホームは、なぜ全員が無事避難できたか
10/15(火) 11:00
Yahoo!Japan
https://news.yahoo.co.jp/byline/miyashitakumiko/20191015-00146818/
120人の入居者を2時間程度で移動
異常な降水量で、広範囲に浸水被害をもたらした台風19号。埼玉県川越市も、越辺(おっぺ)川の堤防が決壊し、浸水被害が広く発生しました。

その川越市で、特別養護老人ホーム「川越キングス・ガーデン」は平屋建ての棟では屋根に達するほど浸水し、周囲から完全に孤立するという被害に遭っています。

老人ホームでこうした被害が起きると、悲しいことにこれまでは犠牲になる方が出ることがありました。ケアをゆだねた施設で、大事な家族が災害の犠牲になるなど、考えたくもないことです。

しかし、この施設では一人の犠牲者を出すこともなく、全員を無事避難させることができました。なぜでしょうか。報道の情報から考えてみます。

施設はいつ異常に気付いたのでしょうか。

ゴボゴボと音、すぐに上へ 埼玉の老人施設で一時孤立
2019年10月13日18時26分
朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/ASMBF3PLRMBFUTNB00D.html
埼玉県では、県西部の越辺(おっぺ)川の堤防が複数の箇所で決壊し、流域の高齢者施設や住宅が広い範囲で浸水した。川越市では老人施設の利用者が一時、孤立状態になった。だが、職員が総出で高い建物に移動させたため、犠牲者は出なかった。13日朝から消防や警察が利用者をボートに乗せるなどして救助した。

特別養護老人ホーム「川越キングス・ガーデン」の職員が浸水に気づいたのは13日午前2時ごろ。施設には当時、入居者ら約120人がいた。施設の介護福祉士正木一也さん(45)によると、ゴボゴボという音に職員が気づいた。「玄関などから水が入ってきて水位がどんどん上がった」

20人以上の職員が総出で、移動に介助が必要な人を車いすやベッドごと平屋建ての棟から3階建ての別棟へ移動させた。水は平屋の壁の半分ほどの高さまで上がり、明け方には停電したという。

渡辺圭司施設長(57)は救出終了後に記者会見し、「20年前の水害の教訓が生かされた」と話した。経験を教訓に避難マニュアルを作成し、避難用に3階建ての新棟を建てたという。渡辺施設長は「途中で停電となり、エレベーターが動かなくなったが間に合った。3階建てのおかげ」と語った。

ただ13日午前1時ごろに雨がやみ、いったん職員を休ませていたが、その後急激に水かさが増えたという。「これは想定外だった」と話した。

テレビのニュース報道では、この停電によりエレベーターが使えなくなり、職員が入所者を担いで2階に避難させたと伝えていました。

施設で深夜の夜勤帯に勤務する職員は、介護保険制度での人員配置基準でいえば、入居者120人規模の施設なら通常5人程度。20人以上の職員がいたということは、台風に備えて通常の夜勤者以外に多数の職員が泊まり込んでいたと思われます。この施設の災害対応への意識の高さを感じます。

同じくテレビニュースで、この施設の施設長が、年1回、避難訓練を実施していたことから、職員がスムーズに避難誘導を行うことができたと話していました。

避難の経緯についてはこのように報じられています。

特別養護老人ホームで220人が孤立 ボートで救助活動 埼玉 川越
2019年10月13日 15時03分
NHK
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191013/k10012128641000.html
埼玉県川越市にある特別養護老人ホームが近くを流れる越辺川が氾濫した影響で水につかり、警察などが救助活動を行っています。

13日午前8時ごろ、埼玉県川越市の下小坂地区にある特別養護老人ホーム「川越キングス・ガーデン」が水につかったという通報が警察と消防にありました。

施設がある下小坂地区は、近くを流れる越辺川が氾濫して広い範囲が水につかっています。

川越市によりますと施設は建物が4棟あり、1階建ての2棟は水につかりましたが、施設にいた高齢者や職員あわせて220人あまりは2階建ての建物に避難して、いずれも命に別状はないということです。

NHKがヘリコプターから撮影した映像には入所者とみられるお年寄りなどがボートで救出される様子がうつっています。

消防によりますと、下小坂地区では今のところ行方のわからない人がいるという情報は入っていないということです。警察や消防などは、施設に取り残されている人たちの救助活動を行っています。

支援に来た職員「まだ多くが取り残され心配」

近くを流れる川が氾濫した埼玉県川越市の下小坂地区にある特別養護老人ホーム「川越キングス・ガーデン」では周囲が水につかっているため、警察や消防がボートを使って施設に取り残されている人たちを救助していました。

同じ法人が運営する別の施設から支援に来た男性職員は「急に水位が上がり物資を高い所に上げることができなかったと聞いて、物資を持って駆けつけました。まだ多くの入所者や職員が取り残されているので心配です」と話していました。

また、90歳の母親がボートで救助されたという68歳の男性は「この地区は例年、浸水しやすい場所なので、きのうからの大雨で心配していました。朝方にボートで避難するという連絡がきてすぐに駆けつけました」と話していました。

避難の経緯は
埼玉県川越市によりますと、浸水した特別養護老人ホーム「川越キングス・ガーデン」は4つの建物があり、あわせて、220人余りの高齢者と職員がいたということです。

この施設は以前も大雨が降った際に水につかったことがあったため、台風の接近に伴って市と定期的に連絡を取っていたということです。

施設の責任者からは13日午前3時ごろ「水位が上がってきたので2階建ての建物に避難を始めている」という連絡があったということです。

そして、午前4時ごろに市が連絡を入れた際には「全員避難を終えた」と話していたということです

川越市によりますと、避難をした人たちはいずれも命に別状はないということです。

その後、警察などにより、入居者は3階建て(NHK NEWS WEBでは「2階建て」と報道)の建物から順次救助され、13日夕方には、全員が近くの避難所に移っています。

日頃の備えが全員の無事避難を実現
家族のケアを委ねる立場からすると、120人もの入居者全員を、無事、スムーズに避難させたこの施設の浸水被害対応を、他の施設も参考にして対応を整備してほしいですね。

報道からの情報から、この施設が全入居者を無事避難させることができたのは次のような理由が考えられます。

年1回、避難訓練を行っており、避難の際の手順、職員が取るべき行動が身についていた
過去の浸水経験から、台風への危機意識が高かった
台風への対応について、行政と連絡を取り合っていた
異変に気づき、すぐに行動を起こした
特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、認知症グループホ−ムなど、多数の要介護者をケアする入居施設では、災害時に入居者をどのようにして安全に避難させるかについて、常日頃からその対応を考え、備えておく必要があります。

2017年には、「水防法・土砂災害防止法」が改正され、浸水想定区域や土砂災害警戒区域内の「要配慮者利用施設」の管理者には、避難確保計画の作成と避難訓練の実施が義務付けられています。「要配慮者利用施設」とは、老人ホームなどの社会福祉施設や学校、医療施設等を指しています。

国土交通省では、避難確保計画作成の手引きを「要配慮者利用施設の浸水対策」のサイトで公開しています。
http://www.mlit.go.jp/river/bousai/main/saigai/jouhou/jieisuibou/bousai-gensai-suibou02.html
しかし、全国にある要配慮者利用施設6万7091施設のうち、2019年3月末現在、避難確保計画を作成しているのは、その3分の1程度の2万4234施設にとどまっています。

「全員無事避難」には管理者以下職員全員の強い思いが必要
避難確保計画作成が義務化される以前、入居者8人のある認知症グループホームで災害時の避難対応の話になった時、「夜勤の時、職員はたった1人です。8人の要介護者を全員無事に避難させるのは、実際には無理ですよ」と管理者がつぶやくのを聞いたことがあります。

管理者の災害対応の発想が「全員無事避難は無理」という前提では、職員も「無理だろう」と考えます。これでは、全員を無事避難させるのはまず不可能です。

そうではなく、「どうすれば全員を無事に避難させることができるか」という前提で、知恵を出し合う必要があります。あるグループホームでは、近隣住民と話し合いを重ね、災害時には避難に協力してもらう約束を取り付けました。

また、近隣住民と日ごろから密な関係を築いている別のグループホームでは、浸水被害の恐れがあるとき、反対に、やや高台にあるそのグループホームに住民が避難してくるようになりました。「ここに来れば安心だから」と住民たちは言っているそうです。こうした信頼関係があれば、相互に助け合いながら避難のすべを確保できそうです。

いざというときに、管理者が指示しなくても各職員が声を掛け合い、スムーズに動けるレベルまで訓練を重ねることも大切です。

ラグビーワールドカップでは、選手全員が「絶対に勝つ」というぶれない強い思いを共有する厳しい練習によって、決勝トーナメント進出という一つの目標を達成しました。災害時対応でも、「絶対に全員無事避難する」という強い共通認識を持てるよう訓練を重ねることが、「全員無事避難」の実現には必要です。「川越キングス・ガーデン」では、おそらく、そうした思いを共有する訓練を行っていたのではないでしょうか。

この老人ホームの災害対応から学ぶべきこと
もちろん、地震や火事のような突発的な災害では、どれだけ備えても、十分な対応を仕切れないことがあるかもしれません。しかし、今回の台風のように、あらかじめ被害が想定される災害であれば、事前の準備で被害を軽減することは可能なはずです。

過去の教訓を活かすことも重要です。浸水被害、地震での被害を受けたとき、何が課題となったのかを検証し、それに備える体制を整える。これを繰り返していけば、様々な災害への対応力が高まります。

この施設では、おそらく、行政との連絡を取ることの重要性も感じたのでしょう。避難開始の際に連絡を入れるなど、非常事態にもかかわらず適切に連絡を取っています。行政との情報交換は、その時々の浸水状況や救助の状況を把握するのにも役立ったことと思われます。

そして、特筆すべきなのは、異常を感じた際の対応が迅速だったことです。深夜2時ごろに異常を感じて避難を開始し、エレベーターが使えなくなったにもかかわらず、午前4時には避難を完了しています。

要介護の高齢者を移動させるのは、健康な人を移動させるのとは全く違います。それぞれの心身の状態を十分に把握した上で、誰から順番にどのようにして移動させるかなど考慮すべきことが多く、備えがなくてはスムーズに行うのは難しいことと思います。

今回、入居者120人規模の特別養護老人ホームでも、日頃の備えがあれば、こうして全員の無事避難を実現できることが明らかになりました。

これまで、「全員の無事避難は無理かもしれない」と、災害対応に内心、消極的だった入居施設関係者もいるかもしれません。しかし、入居者にとっては職員が命綱です。「川越キングス・ガーデン」の災害対応を参考に、それぞれの施設で「どのようにすれば、『すべての』入居者を無事避難させることができるか」を真剣に考えていただきたいと思います。

異常気象が年々、顕著になっており、今後もこうした被害は増えていくのかもしれません。今後は、避難確保計画が立てられているか、効果的な避難訓練が行われているかなども、老人ホーム選びの視点に加えていくことが必要になりそうです。

最後になりますが、被災者の方々は今も、大変つらい状況のさなかにあることと思います。一日も早く、元の生活を取り戻すことができますようお祈り申し上げます。
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