７２５ ��太政官召集・元正太上天皇、御病未だ平癒せず
＜二月一日 次のように詔した。
五位上の者が薨じたり卒したりした場合、その後六年間はその位田を収公してはならない。＞
＜二月二日 出雲国造・従六位上の出雲臣広嶋は、斎事が終わったあと、熊野神社の剣・鏡と白馬・鵠（こうのとり）などを献じた。天皇は広嶋と祝二人にともに位二階を進め、広嶋に絁二十疋・真綿五十屯・朝布六十端を賜った。その他の祝部百九十四人にも、地位に応じて禄を賜った。＞
＜二月十一日 次のように詔した
内命婦（五位上の位階の婦人）が、五位の位階を持ちながら、六位以下に相当する官職に任ぜられた場合、今後は正六位相当の俸給を支給せよ。＞
＜続日本記 宇治谷孟 上 ｐ．２７２＞
＜二月二十日 太政官は次のように奏上した。
多くの選人（勤務評定によって位階を授けられる人）の中で、太政官に召集して氏名を読み上げる際に来なかった者は、翌日に召集して読み上げ、それでも来なかった者は、後日に召集して読み上げ、それでも来なければ重ねて召集しないことにする。このような者がその年の上等の考を与えられることになっていても、降ろして中等とし、もし中等の考ならば、その一年分の労（勤務）をご破算とし、評定の年限を一年延長する。また労を減じられて延長した年の評定が中等であれば、さらに一年の労を減じる。そして前後両年の考がどちらも中等と記されていれば、前の方の年の労を除くこととする。
以降は、是を恒例とする。天皇はこの奏を許された。＞
＜続日本記 宇治谷孟 上 ｐ．２７２〜ｐ．２７３＞
○『神亀三年（７２６）三月三日 天皇、南苑・御座所に官人を召し、塩・鍬を下賜し給う。』
＜三月三日 五位以上の者に、南園で宴を与えられた。六位以下の官人および大舎人・授刀舎人・兵衛らは、みな天皇の御在所に呼び寄せ、地位に応じて塩と鍬を給わった。＞
＜続日本記 宇治谷孟 上 ｐ．２７３＞
『天皇の御在所に呼び寄せ』ている。スキンシップを計っている。
○『是年 六月十四日 天皇、国民の病に辛苦するを憂い、医薬を施して救療し給う。』
＜「六月十四日 次のように詔した。民の中には長患いにかかり、治らない者、あるいは重病にかかり昼夜苦しんでいる者がある。朕は民の父母として、どうして憐れまずにおられようか。医者と薬を左右京・四畿内および六道の諸国に送り、このような病に苦しむ者を助け治療し皆に安らぎを得させ病の軽量に応じ籾を与え恵を加えよ。所司はよく心掛けて朕の心に通うよう努力せよ。」＞
＜続日本記 宇治谷孟 上 ｐ．２７３〜ｐ．２７４＞
★朕の心に通うよう努力せよ
疫病が流行する。日本は島国であっても、渡り鳥の行き来する、或いは渡来者と共に病原菌は大陸から渡ってくるのか。
天皇自身が動くことから、都にても大流行のようである。
○『是年 七月十三日 新羅使の帰国當りて、璽書を給ひ、その忠勤を愛で給う。』
≪「秋 七月十三日 金奏勲（金造近）らが帰国した。その際璽書（天皇の印を押した文書）を賜り、それには次のようにあった。
勅する。伊飡（官位第二位）の金順貞よ。卿はかの国内を安らかに治め、わが朝廷にも忠実に仕えた。ところが貢調使薩飡奏勲らは奏して「順貞は去年六月三十日に卒しました」という。哀しいことである。順貞は賢臣で、よく国を守りまた朕が股肱と頼むところであった。今はもういない。よい臣下を失ってしまった。ここに黄絁百疋・真綿百屯を贈って弔う。汝の功績を忘れず、せめて体を離れた魂にこれを贈る。＞
＜続日本記 宇治谷孟 上 ｐ．２７４＞
人は人生を円熟しても「生老病死」は如何ともしがたい。
病魔に獲りつかれれば「死」はすぐ隣にある。
医療の未熟なこの時代には日常の「生」のすぐ隣に「病魔と死」が同居している。
苦痛の後に死に至る病人の様子を、知る人は知る。
病人の苦痛の姿は「死」に至る過程と結果と、後の世の姿を思い描く。
それは「極楽・安楽国・天国」の天界の姿ではなく、
異界としての「黄泉の国」であり、「地獄」であるだろうか。
およそ「地獄・極楽、この世にありて……」という次元の観想的な思念ではなく、
「死の尊厳」そのものを甘受するしかないのだ。それには「死」の選択肢など有り得ない。
○『是年 七月十八日、元正太上天皇、御病未だ平癒せず。仍てこの日より疾病の民に湯薬を施し、僧尼を度し、諸社に幣帛を奉る。』
＜太上天皇が病気になられて、二序(夏と秋)が経過した。天下に大赦を行い、病気で苦しんでいる人々に、病状に応じて湯薬(煎じ薬)を支給せよ。＞
＜七月十九日 僧十五人・尼七人を得度させた。＞
＜続日本記 宇治谷孟 上 ｐ．２７４＞
★いかほどのものか。
○『是年 七月 天皇、元正太上天皇の、快癒を祈り、興福寺内に東金堂を建立し給う。』
(続日本記に記述なし)
元正天皇は公私に於いて、聖武天皇の強力な味方である。
聖武天皇は実母の愛情に恵まれなかった。
母親代わりであったのかもしれない。
○『是年 八月八日 天皇元正太上天皇の奉為に像佛・写経し、薬師寺に斎を設け、その快癒を祈り給う。』
＜太上天皇のために釈迦像を造り、法華経を書写する業が終わった。そこで薬師寺において斉会を行った。＞
＜続日本記 宇治谷孟 上 ｐ．２７５＞
今の秋だろう。に元正太上天皇の為に祈願しておられる。
肉親の情がそこに見える。（文章化すること！！）
○『是年 九月十二日今秋天下豊潤、天皇、百姓と慶びを共にし田祖を免じ給う』
＜九月十二日 天皇は宮殿の端近くに出御し、次のように詔した。
今年の秋は大豊作となり、民は暮らしも豊かになった。天下の人々とこの喜びを共にしたいと思う。今年の田祖を免除せよ。＞
＜続日本記 宇治谷孟 上 ｐ．２７６＞
しかし収穫はできた。滋養を取る必要がある。よって田祖を免じる。
たらふく食べなさい。ゆっくりしなさい。との心配りであるだろう。
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