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2019年10月06日18:02

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9月の読書記録

終盤、井筒俊彦の『神秘哲学』にてこずったため、5千頁いかず。村田沙耶香と柴崎友香は今後も読んでいく予定。

2019年9月の読書メーター
読んだ本の数:19冊
読んだページ数:4587ページ
ナイス数:157ナイス

https://bookmeter.com/users/4147/summary/monthly
■夢のもつれ (角川ソフィア文庫)
その多くが二十年以上も前に書かれたものであることが信じられないくらいに新鮮なものとして読めるのに驚き。ごく短い哲学エッセイを集めたもので、少々難解な文章でもさくさく読めるのも魅力か。とりわけ笑ったのと同時に身につまされたのが、外で飲んで帰りの電車で寝過ごしてしまい、帰れなくなったという失敗談の数々。自分よりも上がいたんだな…と。それから、ロックへの言及があるのも驚き。そういう年代だといえばそうなのだけれど、個人的に意外だったし、内容も悪くなかった。他にもロックについて書かれた文章があれば読んでみたい。
読了日:09月27日 著者:鷲田 清一
https://bookmeter.com/books/567100

■君が異端だった頃
自分の過去を振り返る…それは時に甘美かつ魅力的であり、それと同時に小っ恥ずかしく苦痛を伴うものである。できることなら無かったことにしておきたい、でも自己形成史を綴るためにはどうしても外せない場面もありえる。そうした場面とどう対峙するかでその書き手の真価が問われるのでは?そんな気がした。それにしても、羨ましいのが主人公のもてぶり。あれだけの変人変態であるのにも関わらずもててしまうのは、やはり容姿と知性がゆえか。また文壇で異端とされながらも、何だかかんだと先輩に可愛がられているし。やはり中上との別れには涙。
読了日:09月24日 著者:島田 雅彦
https://bookmeter.com/books/14023609

■また会う日まで
ほぼ一貫して同級生の女子と無縁な人生を送ってきたものとして、ここで描かれる高校の同窓生男女を巡るエピソードには何ともいえない憧憬を覚える。自分もこんな青春時代を送りたかったな…と(笑)それはともかくとして、著者特有の悪く言えば起伏に乏しいというか、緩いストーリー展開は本作でも顕著。実は結構ドラマチックな展開はあるのだけれど、でもそれが妙に淡々と描かれているのがある意味肝。主人公と鳴海と凪子の微妙な距離感とやり取りも本当は十分に変なのだけれど、なぜか「こんなのもありか」と思わせるのは、著者の真骨頂かも。
読了日:09月23日 著者:柴崎 友香
https://bookmeter.com/books/560310

■星が吸う水
これまで読んできた著者の作品はどれも一風変わってはいたが、本作は別の意味で強烈…ここまで女性の手で真正面から性を取り上げた作品が二つ並ぶとちょっとお腹一杯(笑)。こういう作品を男性が手に取るのは勇気がいるけれど、男性と女性との性に対する感覚の違いをしるために読んでおいたほうがいいかもしれない。ただ、この世界観はちょっと独特過ぎるけど(笑)。個人的には表題作の主人公鶴子と梓との認識の違いによる話のかみ合わなさが印象的。一応仲良くはしているけれど、実はこの二人根本的に会わないのでは?とさえ思えてしまう…
読了日:09月22日 著者:村田 沙耶香
https://bookmeter.com/books/558815

■ギンイロノウタ
世間からどうしてもずれてしまう。自分の中ではごく普通だと思っていることが周囲の人達からは受け入れられず、どうしても齟齬をきたすことになる。特に自分の体験と重なる要素はないのにもかかわらず、なぜか妙な既視感を覚えてほぼ一気に読了。収められた二つの作品の主人公双方が、どうしようもなく未成熟…というか、アンバランスな性格である反面、性に関しては早熟…というより本能的に振舞っているのと、両親との関係にも問題を抱えているのが印象的。表題作は終盤が個人的に今一。もう少し突き抜けた終わり方だったらと思うとちと残念。
読了日:09月21日 著者:村田 沙耶香
https://bookmeter.com/books/558816

■人文学の論理: 五つの論考
興味深い内容であるということを直感しながら読み進めてきたが、理解の程はかなりあやふや。シンプルな構成ではあるが、その分内容が凝縮されているという印象。一つ一つのタームとその繋がりに注意しながら、その深奥にあるものを読み取るという丹念な読み方が必要かと思われる。また、この当時の思想的背景がわからないと理解しづらい箇所が少なからずあるのにも関わらず、訳注がないというのは大いなる欠陥。様々な諸事情があったとも想像できるが、これでは怠慢とみなされても仕方ないではないか?『シンボル形式〜』に興味がわいたのが収穫。
読了日:09月19日 著者:エルンスト カッシーラー
https://bookmeter.com/books/13378351

■かわうそ堀怪談見習い
タイトルにあるような怪談というより、奇談集という趣。一つ一つのエピソードも面白いけれど、むしろ恋愛小説家から怪談小説家へと転身を図ろうとして右往左往する語り手の姿が肝かもしれない。また、霊感などとは無縁と言いながらも、実はそれなりに不思議な現象に遭遇しているというのも妙か。後、味わい深かったのが、中盤から登場する宮竹茶舗の4代目主人。一見、無愛想だけど、実は結構親切だったり、お茶目だったり、愛妻家だったりと独特の悪めなさを醸し出す好人物。この人と嘗ての使用人中野さんとのやりとりも絶妙。貴重な隠し味。
読了日:09月17日 著者:柴崎 友香
https://bookmeter.com/books/11492284

■マウス
クラスに一人はいた教室になじめずに一人でいる子。それを取り巻く、お節介だったり、無関心だったり、冷酷だったりする生徒…そんな光景をかなりリアルに思い出した。とりわけ印象的だったのは、残酷で狡猾で、時に鈍感でもある女性生徒の生態。こういう世界で生き延びるというのは大変なことなんだろうな…と今更ながらに感心(?)してしまった。それ以上に強烈だったのが、副主人公瀬里奈の人物造形。童話を読むことで、性格ががらりと変わるその豹変振りにはある種のカタルシスを覚える程。終盤で瀬里奈と律が新たなステップに踏み出すのに涙。
読了日:09月16日 著者:村田 沙耶香
https://bookmeter.com/books/440923

■沖縄ノート (岩波新書)
沖縄の問題は決して風化していない。そのことを改めて強く認識した次第。少し歴史を紐解けば、少し想像力を働かせれば、沖縄が背負ってきた陰惨な歴史、複雑な立ち位置、今も困難な状況に置かれていることが理解できるはずなのに、なぜか我々の意識から巧妙にともいうべきやり方で遠ざけられているのではないか?という気にさせられた。明治の廃藩置県から先の戦争、米軍の支配下から日本へ返還という流れは、普段意識していなかった沖縄の苦渋の歴史に我々が普段どれだけ無頓着であったかに気付かされる。この問題はまさに日本を映し出す鏡である。
読了日:09月15日 著者:大江 健三郎
https://bookmeter.com/books/476403

■その街の今は
大阪の古い写真を巡って綴られる若い男女の人間模様。派手な惚れた腫れたの話が展開するわけではない…いや、実をいえば、結構ドラマチックなエピソードも語られている筈なのだが、その語り口もあってどこか淡々とした印象。特に主人公と鷺沼との関係は、それなりにドロドロしていた筈なのに、まるで通り雨にでも当たったかのようにあっさりとしたもの。それでも、重く引きずっているのを印象付ける幾つかの描写とコントラストをなしているというべきか。それから、本書は他の作品に比べても、圧倒的に場所の移動が少ないことに気づかされた。
読了日:09月13日 著者:柴崎 友香
https://bookmeter.com/books/563978

■青空感傷ツアー
BLに対してGLという呼び名はないけれど、あえてジャンル分けするなら淡いGL小説と呼びたくなる。別にあからさまに同性愛的な描写はないのだけれど、何かにつけ音生のルックスの美しさに言及する主人公芽衣の視線に仄かな恋愛感情を感じてしまうのは穿ち過ぎか?それにしても、この音生という女性、いくら綺麗で可愛くても、ここまで我儘でかつ凶暴なのはちと御免と思ってしまった。で、五つも下のこの生意気な女性に散々振り回され好きなこと言われて黙って聞いている芽衣にも若干苛つかされる。ただ、旅行三昧なのが羨ましかったけど。
読了日:09月13日 著者:柴崎 友香
https://bookmeter.com/books/527749

■ヒロシマ・ノート (岩波新書)
広島の記憶を風化させてはいけない…あまりに紋切り型の言い方だが、強くそう思わされた。本書に登場する原爆体験者の殆ど全ては鬼籍に入った筈で、原爆症で苦しむ人達もこの当時からするとかなり少数になっていると思われる。しかし、原爆の爪痕は今も何がしかの形で残っているのも確かであり、その記憶を風化させようとする人達が今国の中枢にいる。また、著者の政治的立場や発言を快く思わない人達もいるかもしれない。しかし、まずは虚心坦懐に本書を読んで欲しい。本書で綴られる原爆よって齎された悲惨な経験を二度と繰り返させないために。
読了日:09月12日 著者:大江 健三郎
https://bookmeter.com/books/476401

■新訳 不安の概念 (平凡社ライブラリー)
その十分の一も理解できていないというのが正直なところ(笑)。でもとにかく読み進めないとという思いで読んでいた。文体とも内容とも言えず、いわく言いがたい何かを感じていたのだと思う。ただ、恐らくキリスト教神学の素養がない多くの読者が、本書に頻出する教義学という語をどれだけ理解しているのか?というのが気になる。また僕自身、本書における教義学の位置をどれだけ正確に理解できたか?と言われると甚だ心許ないが。また、詳細な訳注及び、解説により、著者の学問的背景が克明になったのが、有益だったのと同時に驚きだった。
読了日:09月11日 著者:セーレン キルケゴール
https://bookmeter.com/books/13802837

■パノララ
これまで読んできた著者の作品とは違って、SFというか、非現実的な要素が盛り込んであるのが肝か。ただ、それが最も顕著にでた終盤は正直読むのが辛かったけれど。逆にいえばあえてそうしたところに著者の拘りがあるということか?後、非現実的とまで言わないけれど、相当にぶっ飛んでいるというか、そうとう特殊だと思われる、木村家の歴史が何より印象的。とっくに崩壊してもおかしくないような家庭なのに、なぜか緩く繋がっているのが印象的。それに対する田中家の事情は、自分のそれとは殆ど被る所がないのにも拘らず、妙に共感を覚えた。
読了日:09月10日 著者:柴崎 友香
https://bookmeter.com/books/9026030

■きょうのできごと、十年後
ああ、この感じ…学生時代から京都に住み続け、今も学生時代の知人と緩く繋がっていて、思わぬところで知人同士が繋がっている。まさに関西京都に住んでいる者にとってあるある感ありまくりの作品。京都を舞台にして、複数の男女を通して語られる一日の流れ。そこで交わされる男女間の交情やすれ違い。直接に体験したことがなくても、かなりリアルに想像できてしまう場面の連続。他の土地では恐らく実現不可能な人々の交わりに何とも言えない安堵感を覚えてしまう。その分、この空気感を他の地方の人々はどれだけ理解できたのか、が気になる…
読了日:09月04日 著者:柴崎 友香
https://bookmeter.com/books/8235258

■平成時代 (岩波新書)
失敗から学ぶ…その作業は確かに辛いことではある。でも、その失敗の堆積を明日への糧にしないと、本当の意味での未来はない。恐らく意図的に日本を奈落へと導こうとした人は殆どいないはず。それでも、目先の利益や自己保身のため、あるいはよかれと思ってやったことが裏目に出てしまった…そういったことの積み重ねで、進退窮まった状態に陥ってしまった日本。些かマイナス面ばかりを強調したキライがあるにせよ、この日本の失敗の歴史を知るということは絶対に必要。この黒歴史を今後の未来を担う子供達に伝える必要性を強く感じた次第。
読了日:09月04日 著者:吉見 俊哉
https://bookmeter.com/books/13752000

■生きるための図書館: 一人ひとりのために (岩波新書)
小学校入学から今日に至るまでほぼ一貫して図書館にお世話になったんだな…ということを改めて痛感。それと同時に国民主権を否定する政治家やヘイトスピーチをする人達は精神形成時にどのような読書生活を送っていたのだろう?ということがふと気になった。この世知辛い世相にあっても、図書館をより充実したものにしようとする動きがあること、また災害地においても大きな役割を果たしているという事実に仄かな希望が見える。本離れが進み、反知性主義的な動きが席巻する昨今にあって読書人が果たすべき役割は決して小さくない。地道な一歩から。
読了日:09月03日 著者:竹内 〓
https://bookmeter.com/books/13878482

■ビリー・バッド (光文社古典新訳文庫)
中編というべき、短めの作品ではあるが、理解の程はあやふやで、今ひとつのめり込めないままなかば強引に読了したという塩梅。とにかく、海の上の生活という閉ざされた環境が、些か想像を絶した世界。そこで繰り広げられる人間模様というのが、一筋縄ではいかないことは理解できるけれど。基本的に男だけの世界で当然のごとく示唆される同性愛的傾向。ただ、その扱われ方も解説にあるように極めて曖昧で、まさにそれがポストモダン的というべきか。また、主人公であるはずのビリーの人物造形がかなり曖昧で、セリフも皆無というのも示唆的といえる。
読了日:09月03日 著者:ハーマン メルヴィル
https://bookmeter.com/books/5693243

■須賀敦子を読む
改めて須賀の教養、魅力的な文体、深い思索、五十代から始めたという文筆業が非常に限られた期間に終わってしまったという事実などが、とてつもなく愛おしいものに思えてくる。編集を通じて須賀と関わった著者。須賀との個人的な経緯に頁を割いても良さそうなものだが、そこは見事に抑制しているのに好感が持てる。それと同時に、須賀は、その語り手に深い愛を喚起させる類稀な存在ではないか?という気にもさせられた。強い愛憎の対象であった父とのエピソード、海外生活への深い洞察など、鮮烈なイメージを伴って蘇ってくる。須賀ファン必読。
読了日:09月02日 著者:湯川 豊
https://bookmeter.com/books/541553


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