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2019年09月01日12:43
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うちには、天使がいます。 27.��C期・明細胞がん
＜前回までのお話＞
2018年（執筆している時点で去年）4月初め、
やまねこのパートナー・ゆかさんは卵巣に腫瘍が見つかり、悪性の疑いを指摘され、
4月24日火曜日には自宅でとつぜん動けなくなり、救急車で病院に搬送されました。
腫瘍の引き起こす脳梗塞、いわゆるトルソー症候群でした。
翌日から入院、2度めの脳梗塞の発作、5月2日に腫瘍の摘出手術。
それから10日間、脳のリハビリ、歩行のリハビリを続け、
5月18日、いよいよ退院に向けてのカンファレンスが始まりました。
（なお、病院関係者のかたがたほかの名前は、すべて仮名です）
けっして広くはないカンファレンスルームに、
婦人科の主治医の葛西先生、主任看護師さん、訪問看護師さん、
母、やまねこ、そしてゆかさん。
葛西先生が口を開きました。
「今日はこれから今後のこと、
具体的には退院についてご相談していこうと思います。
私たちとしましても、退院してほしいんです。
というか、、退院したほうがいいんです。できたら病院にいないほうがいいんです。
こんな病原菌でいっぱいの場所、ほかにありませんから」
微笑みながら。
少し場の空気がやわらかくなりました。
「まず、細胞診の結果をお伝えしますね」
ここからは紙の上に絵を描きながら、
「旦那様にはすでにお伝えしましたが、
予想されたことではありましたが、腫瘍は悪性でした。
がんの『顔つき』細胞形、これは、
『明細胞がん』
『抗がん剤が効きづらい』
『予後が良くない』
と言われています。
次にがんの進行具合、ステージといいます。
これはステージ�気�ら�犬泙任吠�かれるのですが、
『ステージ�機�
がんは卵巣にとどまっていて、ほかに転移は見られません。
ステージ�気呂気蕕忙阿弔涼奮�に分かれます。
その中の��C期、腹水中にがん細胞が見られる状態です」
ネガティブなことから先に言ってくれたのだな、と思いました。
明細胞がんについてはネットや本で知っていて、
できればそうでなければいいな、と思っていたのですが、
ステージ�機�
右の卵巣が、あんなソフトボールくらいに大きくなっていたのに。
それはたぶん、最悪の覚悟していたよりもいいことでした。
目の前が少し明るくなった気がしました。
「手術のとき、肝臓に少し気になるぶつぶつがあったんですが、
その後の経過を見る限り転移ではないと判断していいと思います。
ただ、手術で卵巣の腫瘍は除去しましたが、
がん細胞を完全に取ってしまうということは不可能なんですね。
細胞単位で体の中のいろいろな場所に散らばっているので。
ですから、そのがん細胞をやっつけるために、抗がん剤治療をおこないます。
現在卵巣がんで標準治療とされている『TC療法』では、
カルボプラチンとパクリタキセルという2種類の薬を使います。
この抗がん剤、金属が入ってるんですが、何の金属だかわかりますか？」
ゆかさんもやまねこも、母も、軽く首をひねりました。
「プラチナが入ってます。『プラチン』ですから。
このプラチナというのは、猛毒なんです」
先生は反応を確かめるように、ぐるっと顔を見渡しました。
「抗がん剤というのは、毒なんです。
がん細胞とはいえ、人間の細胞を攻撃するんですから。
ただ、分裂の早い細胞から優先的に攻撃するんです。
だから、まずがん細胞を叩く。
ちなみにがん細胞のほかに分裂の早い細胞といえば、どんなものがあるでしょう？
そうですね。まず髪の毛。毛根の細胞。
抗がん剤の副作用といえば、髪の毛が抜ける。これは有名ですね。
それから骨髄の細胞。
骨髄にダメージがあるとどのような影響があるかというと、
血液の成分が骨髄で作られているので、
血液の成分が骨髄で作られているので、
赤血球が下がることもありますし、血小板が下がることもあります。
白血球が下がると免疫に影響が出ます。
そうなるとほかの病気にかかりやすくなってしまうので、
危険なレベルまで下がると、抗がん剤を中止することになります。
胃腸の粘膜にも影響があります。吐き気ですね。
なので、吐き気を抑える薬をいっしょに点滴しますが、
それでも吐き気を訴えられるかたはとても多いです。
腎機能が低下する人もいます。
そして神経。
手足の先に痺れが出ることがあります」
ゆかさんが「それならわたし、もう脳梗塞でしびれちゃってるから大丈夫ね？」
と口をはさみましたが、
先生は「いや…そんなものではないと思います」と答えました。
「中には手足の先から始まって、ひじ、ひざまで痺れてしまう人もいます。
かなり個人差があります。
さっきも言いましたが、副作用の程度によっては、
薬の量を減らす、または中止することもありえます」
「もちろんよろしければですが、
通常3週間後に1回めの抗がん剤治療を始めます。
1回につき4日間の入院、
そのあと2週間ずつ間隔を置いて、6回繰り返します。
よろしいですか？」
ゆかさんはやまねこと顔を見合わせて「はい」と答えました。
そして抗がん剤治療の同意書にサインしました。
先生は続けます。
「現在、脳梗塞のリハビリを中心に行っていますが、
婦人科としては抗がん剤の開始まで、病院にいてもできる治療はないんですね。
なのでいったんうちに帰って、休んでリラックスしてきたほうが、
今後のためにもいいと思います。
おかあさんの実家のほうに帰られるんでしたよね？」
やまねこが答えました。
「はい、うちはマンションの3階でエレベーターもないですし、
母のところなら9階ですがエレベーターもあって、
部屋の中も手すりがついてますから」
「リハビリはどうされますか？自宅で続けられますか？」
「はい」
訪問看護師さんが言いました。
「介護保険のほうで訪問のリハビリに来てもらえると思いますから、
包括支援センターのほうにはこちらから連絡入れておきます。
お近くの介護施設の連絡先もあしたお渡ししましょう」
「よろしくお願いします」
「退院の日はどうしますか？あしたでよろしいですか？」
「はい。ちょうど土曜日ですし」
心の準備はしていました。
「大丈夫だよね」
ゆかさんも、母もうなずきました。
そのあと、退院中に飲む薬についてかなり詳細な説明があり、
第1回の抗がん剤治療も6月4日からと決まりました。
「そのほかになにか質問はありますか？」
いちおう訊いてみました。
「精神科でもらった精神安定剤、
きのう神経内科の先生に『転倒しやすくなるからできるだけ使わないほうが』
と言われたのですが、
やっぱり使わないほうがいいのでしょうか」
葛西先生は首をひねって「大丈夫なんじゃないの？」と言いました。
「ねぇ（と看護師さんたちの顔を見て）、いちばん弱い薬だし」
そうなのかな？だとしたら意識に留めておく価値はありそうです。
「あと、お風呂は？お酒も飲んで大丈夫ですか？」
「お風呂は、手術後ひと月は、湯船につかるのは控えてください。
あとはいつも通り、普通に生活していただいて大丈夫ですよ」
カンファレンスが終わって、病室に戻ると、
ゆかさんはさすがにたくさん話を聞いてぐったりした様子でしたが、
やはりどこか晴れやかな顔をしていました。
「いよいよあしたでこの病室ともお別れだね。長かったね」
「うん、でもこんな早く出られるて思てなかた」
「そうだね。20日間くらい？
最初のころ、どうなることかと思ってた」
ほんとうに。退院なんてはっきりイメージできてなかった。
できるようになったのは、いつだろう？つい最近のことです。
そしてその日は半ば唐突にやってきました。
「あした、お昼過ぎになっちゃうと思うけど、迎えに来るね」
「うん、午前中まだリハビリ入ってるから、ゆっくり来て大丈夫よ」
母といっしょに病院をあとにしました。
まだまだこの先、長い長い抗がん剤治療が続くのですが、
ひとまずひとつの、大きな区切りのついた日でした。
（続きます）
＜うたうやまねこ今後のLIVE予定＞
ひとまず、現在決まっているのは10月以降です。
10.06(Sun.)
日吉Naphttp://
Open17.00/Start17:30/Charge \1,500+1D（予定）
10.26(Sat.)
四谷天窓.comfort http://
Open12:30/Start13:00/Charge \2,000+1D（予定）
ほかにも決まり次第、追加いたします。
お会いできますように。
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