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2019年08月28日19:05

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『Strange dream world』

No.0475

特別編 『御伽叙事譚-Insane Vision-』

Review :
<第一幕>→07/24, 07/31, 08/07, 08/14 Diary
<第二幕>→08/21 Diary

(Vol.6 Do You Die Of Whether You Live Desperately? 〜童子切安綱〜)

     ◇

奏姫(妾はまだ死にとうない……。これでは歌う事も出来ん。)

奏姫の口には猿轡まで噛まされており、美しい歌声も響かせられないでいた。
数時間おきに使役者の一人が、奏姫の様子を見に来るが、
生贄の儀はまだまだ夜が更けてから、としか聞かされていない。

様子に見に来る度に、何か奏姫に酷い悪口が飛び交っているが、
奏姫はただひたすら耐え抜いた。

     ◇

私はこの日も昔話の文字をトレーシングペーパーでなぞっていた。
前に載っていた2話分をなぞり終え、最後の3話目の『羅生門の鬼』の話へ。
この話は何かと後味が悪いし、何と言っても成長した金太郎がかなりの腑抜けとなっている。
渡辺綱だけが話の中の恐ろしい鬼に向かって戦っている。

物語の最後には渡辺綱が鬼に無残に殺されてしまうが、
先に鬼の右目を狙った綱は、あの時鬼を逆撫でさせずに上手く逃げていれば……。

     ◇

渡辺綱「こんな夜更けに何をしているのじゃ?」
「ん? これから家に帰るところだけど」
渡辺綱「子供一人だけでは危なかろう、拙者が送ってやるから一緒に来い」
「(頬をぷくーっと膨らませて)子供じゃないんだけどな!!」
少し不機嫌気味になった子供っぽい男は、そういうと同時に突如綱の首を絞め始めた!!

渡辺綱「ええいおのれ、貴様が羅生門の鬼であったか!!」

子供っぽい男は真の姿である鬼には変わらず。
綱が持っていた刀の鞘を抜こうとしたが、思い止まった。

渡辺綱「ゴホゴホ!! これ、拙者の首をむやみやたらと絞めるでない!!」
「ねぇねぇ!! おっちゃんの持っている刀、カッコイイね。何て言うのそれ?」
渡辺綱「ほぅ、これに目を付けるとは流石だな。これはな、“童子切安綱”といって、
あの酒呑童子を討伐した名刀じゃ」
「僕にもちょっと見せてよ!! すぐに返すからさ!!」
渡辺綱「子供には簡単には渡さんよ」
「だから子供じゃないってばぁ!!」

そのまま綱が帰ろうとするので、私は背後から綱の首目掛けて襲い掛かろうとした。
すると、先程まで静かだった夜の空に湿っぽい雨が降って来た。

私(あの刀さえ無ければ!! あの刀を砕いて塵にしてくれよう!!)

私の視線にはもう既に綱本人では無く、綱の名刀である童子切安綱だけだった。
綱の屋敷の城門前に私は居た。
そこで私は綱を誘き寄せる為に、声色を母親のものに変えて綱に城門を開けさせた。
城門が開くと同時に私は鬼の姿に変え、綱を押しのけて綱の刀だけに狙いを定めた。
刀を引っ張り出し、綱の首を掻き切ったように刀を粉々に砕いていく。

見事に塵と化したその刀を火鉢の中へ吹き入れ、ついでに綱の首も掻き切っておいた。
あの時、刀に集中して綱を見ていなければ、私の方が綱に殺されていたに違いない。
大事な右目を奪ったものは全て排除しなければならない。
まだこんなところでくたばって堪るか。

     ◇

母親「まある、あんた視力回復してるんとちゃう?」
私「え? やった!! やっぱりあの方法が合っているんだ!!」

その日も無事に安眠が出来た。右目の視力は次第に回復傾向にある。
来る日も来る日も私はペーパーを使って文字をなぞり続けた。

to be continued……
(特別編 『御伽叙事譚-Insane Vision-』(Vol.7 The Meaning To Live〜天羽々斬〜)へ続く。)
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