24時間テレビ

「人と人の絆（きずな）」をテーマに、今年も24時間テレビが始まりました。目の不自由な少年が、父親と二人三脚で1500メートル走に挑んだり、足の不自由な少女が姉妹でダンスに挑戦したり。私もテレビの前で、様々な障害にも負けずに生きるみなさんに声援を送りました。確かに、この番組にはいろいろな噂があり、良くない話も飛び交っていることも知っていますが、私は年に一回こういう番組を行うことは非常に意味のあることと思っています。

　人間、幸せに慣れすぎると、それを幸せと感じなくなり、逆に自分にないものばかりに目がいって、心の中に不平不満を作っていくものです。だから、私は毎年夏にこの番組を見て、私たちには想像もつかないような苦難に対して、決して負けることなくひたむきに生きている方々の姿に触れることで、五体満足で生きていること自体が、どれだけ幸せなことであるかを自分自身に言い聞かせています。

　特に、今年のテーマは「人と人の絆」。今という時代、もっとも、考えなければならない事柄ではないでしょうか。
　番組内で放映されたドラマは、親子や仲間の絆をテーマにした「ペダルの絆」という話でした。一人の少年が幼いころに自転車に興味を持ち、成長して自転車競技の最高峰である全日本選手権に優勝するまでを描いたものです。
その中には、まだ少年だった彼に、なけなしのお金をはたいて自転車を買ってやり、中学高校と選手生活を続ける彼を励まし、プロになってからも収入の少なかった主人公を金銭的に援助し、決しく夢をあきらめるなと叱咤激励してくれたお母さんの愛。彼が一流の選手になった後、今度は母親のほうが倒れ、身内の肝臓を移植しなければたすからないと言われるなか、選手としての栄光を投げうってでも母親のために自らの肝臓の一部を母親に差し出した主人公の思い。そして、肝臓を提供したアスリートは、現役に復帰した前例がないと言われるなかで、必死のリハビリに取り組む彼に対し、全面的な協力を惜しまない仲間たちの友情。
など、人と人が相調和して生きていくためのキーワードがふんだんに散りばめられています。

　以前、ドラえもんの映画を見たことがあります。のび太くんが仲間たちと無人島へ宝探しにでかける話なのですが、様々な苦難を乗り越えていく中で、仲間が悪者にさらわれてしまいました。そのとき、のび太くんたちは初めて、本当の宝は財宝ではないことを知るのです。仲間の存在、そして、そんな仲間たちと、お互いに信じあい、助け合い、喜びも苦しみも分かち合っていく心こそが、幾千幾万の財宝にも勝る宝なのだと、彼らは冒険の中から学んだのです。
　「ペダルの絆」を見ていて、その映画を思い出しました。子を思う母の心、母を思う子の心、お互いに信じあう仲間意識。
「愛とは分かち合い」であり、他の人の喜びも悲しみも、我がこととして生きること。それこそが、人間にとって、もっとも大切なことなんだと、このドラマは伝えているのです。

　

「分かち合いの心」を忘れたとき、人は自らの心に小さな殻を作っていきます。そして、自分の世界だけでしか物事が考えられなくなり、他の人との触れ合いを非常に怖がるようになっていきます。そのような病んだ人格というものが現在、大量に社会に出てきてしまっています。「引きこもり」「ニート」というのでしょうか、今の若者を代表する現象も、元を正せば「仲間への分かち合いの心」を忘れてしまったことが根本的な原因であり、「自分さえ良ければいい」の思いが究極まで行ってしまった状態であるのです。

決して、24時間テレビに出演されているような重度の障害を持った方ばかりではありません。
世の中を見渡して見たならば、孤独な老人の方々、心の病を抱えた方々、社会参加ができないでいる若者たち。退廃的な文化の中で、自分自身の存在価値を認めることができず、むやみに自ら命を絶ってしまう人々。みなさんの周りにも、そのような苦しくて苦しくて、手を差しのべてほしいと思っておられる方々が、いくらでもいるのではないでしょうか。
そういう方々を救うのは、行政機関であったり、一部の社会奉仕機関の役目だと思っているうちは、世の中は少しもよくなっていきません。

必ずしもお金を使うことだけではありません。優しい言葉で、励ましのメールで、多くの方々を勇気づけることができるはずなのです。このmixiにも、心の病に悩む人々の、命を絶ちたいところまで追い詰められている人たちのコミュニティがあることをご存知ですか？みんな、愛を求めているのです。みなさんの励ましの書き込み一つで、明日も頑張って生きていこうという希望を、多くの人が抱くはずなのです。

「どうか、無関心にならず、一人一人が愛の実践者になってください。」

24時間テレビは、いつもそのことを願っているように思います。