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2019年08月01日10:33

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7月の読書記録

先月も残業が多かったりして、今ひとつ読めなかったか。後、『白い牙』に想定外に手こずったかな。後、『吉本隆明未発表講演集』を読破できたのが、感慨深い。

2019年7月の読書メーター
読んだ本の数:13冊
読んだページ数:5151ページ
ナイス数:146ナイス

https://bookmeter.com/users/4147/summary/monthly
■ある作家の夕刻-フィッツジェラルド後期作品集 (単行本)
栄光と没落…ありきたりな表現だが、そんな言葉を始終想起させられた。アルコール、離婚、作家としての不調等々、ネガティブな要素が目白押し。最早作者が亡くなった年を大きく越えたものとして、これらの要素は時にリアルに胸を打つ。とりわけ自分のアルコール依存を描いた作品では、現在進行中である筈の自分の病状をここまで客観的に、突き放して自己諧謔的に語るというのは、なかなか凄いことだと思わされた。このあたりは小説家としての教示なのかもしれない。巻末のエッセイは個人的にはあまり響かなかったか。三部作のタイトルはいいけど。
読了日:07月31日 著者:スコット・フィッツジェラルド
https://bookmeter.com/books/13857548

■見てごらん道化師(ハーレクイン)を!
巻末には「見事な日本語」とあるものの、原文があまりに難解というためか、様々な隠喩、引用、パロディなどに満ち満ちているため、読みにくいこと夥しい。とりわけ、著者の自伝のパロディという要素もあるため、その執筆歴について精通していないと分かりにくいところもあるから、独立した作品として評価しづらいというのが正直なところ。基本的には愛妻家だったらしい著者が、本作ではそれなりに性的に奔放であったかのように描かれているのがある意味妙か?ただ、この年のなると、自分の人生を省みるという行為が重いものになることを再認識。
読了日:07月30日 著者:ウラジーミル・ナボコフ
https://bookmeter.com/books/11022505

■『カラマーゾフの兄弟』続編を空想する (光文社新書)
著者訳「エピローグ」の解説にてアリョーシャが後に革命運動に身を投じる可能性について示唆していたのには、少なからず驚かされたけれど、本書でその詳細を知るに及んで、実際にドストエフスキーによってカラマーゾフ第二部が書かれなかったことがとんでもなく惜しいものに思われた。本書の後書きで述べている通り、この続編の構想がどれだけの妥当性があるのかは全くの未知数。作者本人からすれば、トンデモ本でしかないのかもしれない。しかし、あり得る限りのテキストの精読と文献を駆使しての続編の構想はかなりスリリング。個人的にあり。
読了日:07月28日 著者:亀山 郁夫
https://bookmeter.com/books/538758

■白い牙 (光文社古典新訳文庫)
全体的に悪くはないんだけど、どこか釈然としない物が残る複雑な読後感。自然の厳しさ、苛酷さを克明に描いた場面や、ビーヴァーに飼われていた頃の孤高の存在感の描写は悪くないのだが、つい事実性を追求してしまうのは、野暮なことなのか?また、終盤のスコットとの邂逅と親交は心温まるものだとはいえ、どこか御都合主義が否めない…また当初は反目し合っていたコリーとの関係の顛末も、ちょっとベタすぎるかな…と。それと、解説にもあるように、人種差別的な要素と、第一部が全体から浮いているのも残念。もう少し、手を加えたら良かったかも。
読了日:07月26日 著者:ジャック ロンドン
https://bookmeter.com/books/538385

■熱帯
『四畳半体系』を思わせる迷宮でありながら、色々な意味で、それを凌駕する傑作。京都、東京、そして物語の世界へと話がスケールアップ。それに加えて、様々な謎かけと謎解きが織りなす展開に、殆ど頭がクラクラ、心はワクワク。何より気になる幻の小説『熱帯』の作者佐山尚一が様々な変貌を遂げるのにびっくり。そして何よりびっくりさせられたのは…様々な謎を残しながらも、最後に円環が見事に閉じられるのには喝采。とにかく何を語ってもネタバレになってしまうから、多くは語るまい。読者各々が本書を読んで新たな『熱帯』を紡ぎ出すのだ。
読了日:07月20日 著者:森見 登美彦
https://bookmeter.com/books/13191291

■ドルジェル伯の舞踏会 (光文社古典新訳文庫)
とにかく作者の早熟ぶりに驚嘆。どうしてこうも人の心理の機微をここまで見事に描き切ることができるのか?と。そして、解説にもあるように、ただのドロドロの三角関係ではなく、もっと複雑な要素を織り込んでいるため、幾十にも読み込めることができるというのだから、本当に只者ではない。あまりに唐突な終わり方をするのに面食らうが、作者が夭折しなければ、続編が書かれていたのでは?と想像するのだがどうか。個人的には道化的な役割を演じるポールがなぜか気になる。彼にもう少し性格的な深みを与えていたら、本作は一層魅力を増したのでは。
読了日:07月18日 著者:レーモン ラディゲ
https://bookmeter.com/books/13706283

■規則と意味のパラドックス (ちくま学芸文庫)
平易な文体につられて、さくさく読み進めたものの、正直理解の程はあやふや。冒頭の「グルー」概念を巡る話は比較的面白かったか。ただ、こんなことを言っては身も蓋もないが、全体としては結局屁理屈の応酬ではないか、という気がしないでもないけれど(笑)。ただ、驚きだったのは、クリプキのヴィトゲンシュタイン解釈に対して実は反対論者が多いという事実。かつて『探求』でクリプキのヴィトゲンシュタイン論に多く言及していた柄谷も取り上げて欲しかった黄がする。また、巻末のクリプキ小伝がかなり興味深い内容。再度、読み返したい。

読了日:07月17日 著者:飯田 隆
https://bookmeter.com/books/11117649

■遠い山なみの光 (ハヤカワepi文庫)
色々なことが示唆されながらも、殆ど何も明らかにされず、また解決もしないまま物語は閉じられる。でも、それがなんとも言えない余韻を残すのが不思議。元々夫以上に親しかったという、悦子と義父緒方との関係(実は男女の関係があったのでは?と睨んでいるのだけれど)も謎だし、夫と別れ、イギリスへと立った経緯も殆ど明らかにされていない。色々なことが宙吊りなまま終わりを迎えるというのは、村上春樹を思わせるが、勿論その感触は大きく異なる。個人的には悦子と佐知子との会話の噛み合わなさが、特に印象的だった。よく関係を保てたな…と。
読了日:07月16日 著者:カズオ イシグロ
https://bookmeter.com/books/568342

■吉本隆明〈未収録〉講演集第12巻 芸術言語論 (シリーズ・全集)
大衆文学より純文学の方が優れているわけではない。純文学でも悪い物はダメという著者のはっきりした物言いが今更ながらに新鮮。また、著者が存命であったら、今日の文学を巡る状況をどう見るだろうか?ということが気になる。特に私小説が殆ど廃れ、純文学の中でもエンタメ的要素をを大いに含んだ小説が世に出る昨今にあって、純文学と大衆文学との違いは、その文体であったり、文章に滲み出る知性、あるいは作品が発表される媒体の違いでは?という言い方もできる。現在、現代文学を深く掘り下げて、包括的に語れる評論家がいないことを深く憂う。
読了日:07月15日 著者:吉本 隆明
https://bookmeter.com/books/9925468

■チャタレー夫人の恋人 (光文社古典新訳文庫)
誤解を受けた名作。色々な意味で驚きに満ちた一冊だった。猥褻性ばかりが取りざたにされがちだが、本書の本質はそんなところにない。知的で、思想性に富んだ、今日にも通じる文明批判的要素を孕んだ作品である。とりわけ意外だったのが、一般的には粗野な男というイメージがあるメラーズが、実はかなりのインテリであり、肉体的でありながらも、喘息持ちというか弱い一面も持ち合わせているということ。また、かなり女性目線で書かれているというのも印象的。フェミニズムから批判されているとのことだが、寧ろ女性が積極的にとりあげるべき。
読了日:07月12日 著者:D.H. ロレンス
https://bookmeter.com/books/8289165

■アメリカ(河出新書)
対談形式ということで、さくさく読み進めることができるかと思ったが、かなりの難物。キリスト教、及び哲学の素養がある程度ないと理解が難しいかも。特にプラグマティズムを扱った2章は正直理解があやふや。それはともかくとして宗教及び思想面から掘り下げてアメリカを論じたというのは、かなり画期的。偏向したナショナリズムが席巻する昨今にあって、対米追従という現実を今一度向き合い、日本という国を相対化する作業が重要であることを改めて痛感。また、未だ敗戦という事実を適切に処理できていないという日本の深い病を改めて認識。
読了日:07月08日 著者:橋爪大三郎,大澤真幸
https://bookmeter.com/books/13215733

■わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫)
出生、血筋、アイデンティティー…ただでさえ血生臭い空気が漂う第二次世界大戦前の上海、そして中国を支配していたイギリス。そこで様々な種族が織りなす人間模様。種族同士の対立、それを無意味だと一蹴するのはたやすい。しかし、そのスタンスを一貫して生き通すのは極めて困難。人は自分を取り巻く利害関係を無視しては生きていかれない。しかし、そこに囚われすぎては、大事な物を失ってしまう。誰しも多かれ少なかれ、そういうジレンマの中で生きている。過去と向き合うことの困難さとその意義。著者の問題意識の一端を垣間見た気がした。
読了日:07月05日 著者:カズオ イシグロ
https://bookmeter.com/books/525854

■吉本隆明〈未収録〉講演集第11巻 芸術表現論 (シリーズ・全集)
サブタイトルにやや丼勘定の感が(笑)。その半分は文学について語ったもの。ただ、前巻までの文学についての講演とはやや切り口が違っているとは言えるか。終盤の色彩論と数学論は殆ど字面を追っていただけというのが正直なところ。色彩論の冒頭は日本人の色認識についての解説で、それなりに興味深かったのだけれど、すぐに塗料についての専門的な話になり、化学式が出てきてからは、全く歯が立たず。とにかく絵の具にも歴史があるということは理解できたが。数学論では、吉本が高等数学ができる人をあまり評価していないのが印象的だったか。
読了日:07月03日 著者:吉本 隆明
https://bookmeter.com/books/9857496


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