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2019年07月22日01:34

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風呂からのアウトドア派

風呂からのアウトドア派と
語る青年は
入浴中に気分が昂まると
そのまま風呂場の窓から
外へ出ることで有名な画家である

ひとたび外界に解き放たれてしまったら
彼はやる
やることは一つから三つ
必ずそれをやらなければ
彼はもう収まらない

全裸でも知性と理性は纏えると
衣服こそがいやらしさを助長したと
そう呟きながら風の如く走り
まずは誰もいない公園を探す

公園を発見し次第
ブランコに駆け寄り
ブランコにチャージングを仕掛け
ブランコが大きな軋音を立てないか調査し
ブランコの丈夫さと
自分のスネの脆弱さを確認する

確認が済んだら
そこらに落ちている
ユリノキの葉を集め
風呂場を出る際に
右手に握り込んでおいた
3枚の内の1枚のビニール袋に
それを詰め込む

完成したシートを
座板の上に置き
残った2枚のビニール袋を
両手にはめ込んだら
鎖を持って
いよいよブランコ始動である

そこで青年は中途半端な
人に気付かれることを
恐れているようなビビリチックな
声量で叫ぶ

世界中はきっと
私に対してこう言うだろう
お前が全裸で
座板に座ったらブランコが汚れると
そう言うだろう
公共施設公共遊具に対して
マナーがなっていないと言うだろう

だから葉を敷いてやったんだ

とでも言うと思ったのか
馬鹿どもめ

自己防衛なんだ
マナーのほとんどが
自己防衛の共有化なんだ
私はもしそれがマナーだとしても
そうでないにしてもどちらにしても
座板にユリノキの葉のシートを置いたさ

それはブランコ自体が既に汚いからだ
公共施設公共遊具が
綺麗であるはずもない
みんなが使えるものなのだから
綺麗であるはずがない
綺麗であってほしいが
そうであるはずがない

みんなの為に汚さないことを
選んだのではなく
私は私が汚れないことを
選んだのだ

みんながそう扱えば
公共物は何一つ汚れない

私はちゃんと自己防衛をした
立ち漕ぎしている奴だとか
汗をかいた衣服で座る奴の方が
マナーがなっていないのだ
分かったか

と中途半端な声量で
やや儚げに叫ぶ

ちなみにこれ
彼は昂ぶっていてこれ

世間への苦言を述べた後
彼は深呼吸を挟み
自分の世界へ行く

全裸のままブランコを漕ぎながら
体を背らして反対の世界へ

頭に血がのぼる
頭に血は上れど
心は怒りではなく
世界への不思議で満ちていく

世界の宙返りを
目に焼き付けたまま瞼を閉じる

地球儀の上で足音が聞こえる

大人用スリッパと
子供用スリッパが分針と時針になって
ベッドの横で廻っている

耳の内から聴こえてくる声
その声の持ち主は
決して自らの感情や意思ではない
耳の内に喋る何かが住んでいる
そう思って見てごらんよ

そいつはよく似ているよ
そいつはそこから出られない
未だに人体から
出る方法が見つかっていない
人が見つけようとしていない

そしてそれはまさに
この世界の私達だ
私達もこの世界の外のことを知りたいと
思いながらも知ることができていない
何一つ正しく理解していない

耳の内から聴こえてくる声
その声の持ち主を
人体から出す方法を見つけよう
それを見つけたのなら
私達も世界の外を知ることができるだろう

地球儀の上で枯葉の舞う音が聞こえる

世界の宙返りを
気分の悪さで思い出して瞼を開ける

青年は突如自分が全裸である
不思議に気付き
慌てふためき
風のように走り
彼の友人が経営している
どんぐらがえりの
飲食店の裏口に駆け込む

どんぐらがえりの飲食店で
お冷を一杯いただき
氷を3つ口に詰め
冷ややかな眼差しを受け取り
漸く冷静さを取り戻す

服を着たらちゃんとお客として来るよと
珈琲とペペロンチーノの絵を描いて
裏口から出て行くその尻には
未だユリノキの葉のシートを
可愛めにくっつけている

ひとたび外界に解き放たれてしまったら
彼はやる
必ずそれをやらなければ
彼はもう収まらない
彼はやるときはやる青年だ

大事なのは遥かな目的を持つことだ
人に見つかったら不味いから
見つからないようにするだとか
どうとかそんなちゃちなものではなく
もっと遥かな目的を持つことだ
そう呟きながら風の如く走り
まずは誰もいない道を探す

そして彼は導き出す
そう私は親鶏
私は親鶏だった
そういえば私は親鶏だった
今帰路に着いた親鶏だったのだ

家では雛鳥と名付けた硝子コップが
口を開いて今か今かと
この氷を待っているというのに
大事なことを思い出したのだ
私は氷が溶けるよりも早く
そして人間に邪魔されることもなく
すかさず雛に餌を
与えなければいけない親鶏
帰らねばならない
今帰ります雛達よ

そうだ
今はこの目的がいい
きっとこれが
無事でいながらも素早く
私を家へと導く目的だ

やはり彼はやる青年だ

2分と経たず猛烈な勢いで
風呂場の窓から帰宅した彼は
そのまま食器棚に向かい雛に餌を与えた

風呂からのアウトドア派と
語る青年は
入浴中に気分が昂まると
そのまま風呂場の窓から
外へ出ることで有名な画家である

外へ出るとしながらも
未だ出る方法を見つけられず
それを描くことで
どうこうしようとしている
画家である
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