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2019年07月02日22:46

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ポリティカル・モンスター、イ・バンウォンの物語。「六龍が飛ぶ」見終わった

ネタバレ入ります。
とはいえ思いつくままダラダラ感想を書いてるだけなので、あらすじなどはありません(汗)。


韓国の歴史ドラマ「六龍が飛ぶ」見終わりました。
ぼくは後半近くから見始めたから、作品の質をちゃんとは味わい切れてないかもしれないけどね(苦笑い)。
でもおもしろかった。


李氏朝鮮王朝第三代国王・太宗 イ・バンウォンを主人公に、彼が即位するまでを虚実織り交ぜて描いたドラマ。
このイ・バンウォンという人は、実質的に李氏朝鮮王朝を造り上げた人で、恐ろしく有能だけど恐ろしく非情な人として認識されているっぽいです。
彼の息子、四代国王・世宗が、韓国では李氏朝鮮史上最大の名君と認知されている(ハングル文字を創ったのもこの人)こともその印象を強めているのかもしれない。
「有能で偉大で家庭内では暴君に近いほど厳しく、息子にとっては恐ろしくも超克すべき存在」ということで。


だから太宗を主役にしたドラマというのも珍しかったんじゃないかな。
ドラマ内のイ・バンウォンも、最初の頃は理想に燃える若き青年として描かれていたけど、わずかな志操の違いが、師匠や仲間たちとの不和を招き、抜き差しならないものになって…という感じで。
ぼくが見始めたのはちょうど「最初のボタンの掛け違い」の時期でしたから、「理想に燃える青年期」と「仲間たちとの蜜月時代」を知らないため、その後の凄惨な権力闘争や決別に、最初から観てる人たちほど悲哀は感じられてなかったかもしれない。


ただ本当にていねいに作られていて、そこはすごく感嘆してるんですよねえ。
登場人物それぞれの心情の変化もていねいだったし、特にバンウォンが図らずも政治人間、ポリティカル・モンスターに変貌してゆく、変貌せざるをえない様子は、演者のイ・バンウォンさんの演技もあって見事だった。
最初の頃に比べると別人のようになっていたものな。


三峰師匠の王族排除の政治体制がうまくいったかどうかはわからんが、ものすごく俯瞰して見てしまえば、バンウォンが政治に関われないことを我慢すればよかっただけかもしれない。
でも400年続く李氏朝鮮の礎を築くほどの政治能力を持った男が、自分を最大限発揮できる場所から排除されるのに耐えられるはずもない。
これをバンウォンの「私欲」と取るか「野心」と取るかで見方は変わってくるかもしれないが、ぼくはどうしても野心寄りになってしまう。


三峰師匠にとっても、バンウォンは最大の政敵だったけど、自らの後継者としては最高の弟子だった。
バンウォンに殺されるとき「私は疲れた」と言っていたが、たぶん彼自身はそれまで疲れを感じることもないほどエネルギッシュに政治に取り組んでいたから、政治からも歴史からも退場すると受け入れたとき、はじめて自分が疲れていることを知ったのかもしれない。


あと「六龍」の中で明確に死んだことを描写されたのは三峰師匠だけだったか。
イ・ソンゲお父さんは譲位したあとは出てこなくなっちゃったけど、きっと亡くなっているし。


それにしても乱世ではあっても派手な戦争や戦闘があるわけではなく(剣術アクションはあるけど)、基本謀略戦が続く後半だったのに、飽きさせることなく最終回まで持って行った制作陣はすごいな。
この監督や脚本家の作品はちょっと観てみたいかも。


無名も首脳陣のほとんどが全滅し、バンウォンの末端への圧迫策も実施されるだろうから、実質壊滅状態になったんだろうな。
もっとも無極やチョンニョンが生き残ってまだまだ暗躍するぞって伏線は張られてるし(チョンニョンは朝鮮行商の祖になったことも匂わせてるっぽい)、この辺はしっかり周到だ。


イ・バンジはお母さんと南京まで行って、そのあとどうしたか。
短い時間だったにせよ、あるいはずっと一緒だったとしても、お母さんと過ごせたのはよかった。


チョク・サグァンvsイ・バンジ&ムヒュルの二度目の戦いも熱かった。
三人とも前回より明らかに強くなっての再戦。
バンジにしろムヒュルにしろ、一対一だったらチョク・サグァンには絶対勝てなかったというのもね。
前回はムヒュルの場外リングアウトでの無効試合だったが…
前回のチョク・サグァンの置き手紙になんと書かれてたかここに来て明かされて、その内容が彼女の最後の言葉とまったく逆だったというのもね…
「救けてくれてありがとう」「殺してくれてありがとう」
どちらも心からの言葉だったろうことが、ムヒュルにはつらい。
二人の間には性差を越えて通じ合うものがあったのが、観ててよくわかったからなあ…


バンジの「もっと強くなっていずれおれを殺しに来てくれ」というムヒュルへの別れの言葉。
聞き方を変えれば「おまえに殺されるまでは生きている」ということでもある。
バンジが明で永楽帝に会うようなことがあり、ムヒュルと友人だったと聞かされたらどうなるか、というのもちょっと想像してしまった。


ちょっと前の日記にも書きましたが、登場人物ではムヒュルが一番お気に入りでした。
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1971810135&owner_id=627088
無学であり純粋に忠誠を誓うからこそ、無自覚にイ・バンウォンへの最大の諫止者の一人になっていた無双の剣士。
二度目にバンウォンに仕えたときは、少し器が大きくなっていたのを感じた。
バンウォンと明へ使節に行って帰ってきて、周りから「(いい意味で)変わった」と言われるようになったムヒュルだったけど、その変化によって感じ取れるようになった様々な矛盾や葛藤を受け止められるだけの器はなかったのが、数年の閑居でつちかわれていたようなね。
もっとも子供たちへ自らの武勇談を語っていたが、さすがにあれは信じてもらえないだろうな(笑)。


二度目の仕官は世宗の護衛になったようだったけど、おもしろい主従になったかもしれないな。
無名とキム・ソンミに襲われるバンウォンとプニの危地に駆けつけ、「自分たちを救けよ!」と命令されたときの「剣士ムヒュル!」の名乗りからの流れは、何の迷いもなくバンウォンに仕えられていた頃に戻れた力強い誇りが感じられた。
あの関係を、バンウォンよりは人当たりがよさそうな世宗となら、より穏やかに作っていけるだろう。


関係ないが、くるくる激しく動く中国や朝鮮の剣術と、ほとんど動かず一瞬の斬り合いを旨とする日本の剣術が戦ったらどうなるか、ちょっと見てみたくなったな。
どっちが優れているというのではないだろうけど、どういう戦いになるかは見てみたい。


あとちょっとおもしろかったのは、このドラマ、吹き替えなのに字幕も表示されてたんですよ。
で、それぞれ翻訳が微妙に違っていて、どちらか一方だとわかりにくいところも補完されてありがたかったし、翻訳家の解釈の違いが見られるのも楽しかった。
上にも書いたバンウォンの「欲」と「野心」。
実はこれも字幕と吹き替えで違った部分で、訳者のバンウォンへの思い入れや理解度の差があるようにも感じられました。


最初に書いたようにダラダラ書いてしまった(照)。
韓国ドラマは日本でもたくさん放送されてるし、「六龍が飛ぶ」に出てた俳優さんたちが出演してる作品もちょっと観てみたくなったな。
現代劇だとたぶんドロドロラブロマンスになるんだろうけど(苦笑い)。
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